第2話
アニメの動画はいつもニクニク動画で二回通り見ることにしている。一回目は普通に、二回目は画像にユーザーが書き込んだコメントを流しながらだ。
今回のアニメは作画が酷いもんだ。これはブルーレイに期待するしかないのか。俺は考える葦となって無言で動画を見る。一つの動画を見終わったら、別のウインドゥでスタンバイしている動画を見る。くそっ、この動画サイトは読み込みが遅いからすぐに止まってしまうな。だが、もう他の動画サイトだと削除されているからこの読み込みが遅い動画しかない。
「坊ちゃん、昼ご飯ができしたよ」
御大から昼食タイムのお呼びがかかった。早速行かねばなるまい。
「はい、すぐに降ります」
俺は動画を静止させて、御大が昼食を用意しているキッチンに向かう。この匂いは、今日の昼食は焼き豚チャーハンか。俺の大好物だ。キッチンのテーブルに腰掛けて、用意された焼き豚チャーハンの匂いを楽しむ。
「相変わらずのお手前です。澄さん」
「どう致しまして。冷めないうちに召し上がれ」
「いただきます」
俺はスプーンで掬う。ご飯粒の一つ一つが光沢を放ち、実に素晴らしい。口に運べば、しゃりしゃりとした感触に仄かな焼き豚の味が大変美味である。ああ、俺はこれを味わうために生まれてきたかも知れない。
「それにしてもぼっちゃん、よく部屋に篭もってばかりで飽きないですね」
「インターネットの世界は果てしなく広いんですよ。俺は今の時代に生まれてきたことを感謝しています」
「それよりもこの家庭で生まれたことに感謝すべきだと思いますけどね。他の一般家庭だと間違いなく終わってますよ」
御大の言うとおり、この家庭で生まれてなければ俺は今頃どうなっていたやらか。大半の同志達は夢半ばでニートゾーンからログアウトしてしまっている。俺は言わばそんなニート達の夢を背負った最後の希望、ラストニートと言っても過言ではない。俺は力の限り最後まで戦ってみせる。これがニートソースたる俺の崇高なる使命であるからだ。
「ほっぺにご飯粒がついてますよ」
「これは失礼」
俺は口元に付いてるご飯粒を拭ってご馳走様をする。
「ぼっちゃん。ブルーベリーと酢のミックスジュースを忘れていますよ」
「おっと、ありがとうございます」
ブルーベリーは健康番組を見て、目に良いものだと聞いているので食後は必ず服用することにしている。俺のニートライフは体調管理は怠らない。清く正しくニートであれ。
「ぼっちゃん、言っときますけど、身体に良いものを食べたって、深夜遅くまでパソコンと睨めっこしている生活を改めない限り意味無いと思いますよ」
「ごもっともです」
さすがは御大。耳に痛いことを仰る。だが、それでも俺は改めない。改めるぐらいだったら俺はニートをとっくの昔に止めているからだ。さてと、食事を終えたところで動画の続きを見るとしよう。
「パソコンに向かう前に歯磨きをしてくださいよ」
「はい、わかりました」
やはり御大無しでは俺のニートライフは語れない。御大、あんたこそがニートの女神だ。