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第18話

 この俺ニートソース、親友ニートボール、そして、ニートスパゲッティ。学生時代、俺達はチーム・ニートリニティと名乗った。名付け親は勿論俺だ。特にニートスパゲッティ以下ニースパは三人の中で一番ニートリニティの有り様を重んじていたと思う。


「そう言えばニートボールがジョギングしている姿を見掛けたな。食っちゃ寝するしか能が無い奴に一体どういう心境の変化があったのかお前には分かるか?」


「さあな。三次元の女に食指を伸ばしたんじゃないのか?お前みたいにな」


「だったらニートボールは少しは現実に目を向けるようになったわけだ。お前と違ってな」


「馬鹿言え。俺は何時だって現実に目を向けている。ただ詰まらなくなっただけだ。だから二次元に目を向けたんだ」


「人はそれを現実逃避と言うんだ。いい加減リアルに帰れ、クズニート」


 俺とニースパは向かい合ってミートスパゲッティを食べていた。勿論ニースパの奢りだ。それにしてもいくら奢りとは言え、何故俺までスパゲッティを頼まないといけないのか。スパゲッティはソースが飛び散って服が汚れやすいから外食したくない一品だ。


「ふん、自前のナプキンぐらい持参しておけ。だから服が汚れるんだ」


「外でスパゲッティを食べるためだけにナプキンを常時持参しているのはお前ぐらいだ」


 全くニースパのスパゲッティ好きは筋金入りだな。ニースパのスパゲッティ至上主義となったのは物心が付いたときに初めて知ったお袋の味がスパゲッティだったことに起因する。上流家庭育ちの俺とニートボールと違い、ニースパは貧乏な家庭で育ったのだ。


「ニースパ、いい加減に用件を言え。まさか俺を罵倒するためだけに飯を奢ってくれたのか?野郎を罵倒することに喜びを覚えるなんて寒すぎるぞ」


「お前が脱ニート宣言をしてくれるんだったら北極海の寒さだって耐えてやらんでもない。だが、それは別の機会にする」


 ニースパはソースが飛び散って斑点だらけになったナプキンを折り畳み、鋭い目線を向ける。冗談の言い合いはこれで終わりでここからが本題というわけか。


「俺がお前に言いたいことは別にある。単刀直入に言う。お前から朱美さんを解放しろ」


 やはりそれが本題か。朱美との関係性こそが俺とニースパの確執の根元なのだからな。ニースパは朱美に恋慕を抱いている。だが、朱美は俺のことを慕っている。それが恋愛なのか友愛なのかははっきりしないが。


「俺が朱美を束縛していると言いたいのか?それは違うな。朱美が望んで俺の世界へと足を踏み入れてくれてるんだ」


「朱美さんは社会人、お前はニート。立場が違いすぎる。このままだとお前に引きずられる形で朱美さんの輝かしい未来が閉ざされてしまう。お前も朱美さんを少しでも思うのなら嫌われてでも突き放せ」


「勝手な言い草だな。朱美の未来は飽くまで朱美のものだ。お前が決めることなんかじゃない」


「だったらこのままで良いとお前は思っているのか?お前は自分が朱美さんの足枷になっても良いといいというのか!」


「朱美は自分のやるべきことをこなした上で俺と付き合っている。仕事とプライベートをきちんと両立させる立派な社会人だ。何が駄目なんだ?なあ、ニースパよ。そろそろ本音を言え。俺が邪魔だから朱美と付き合うことが出来ないのだと…」


「ニートソース!」


 激高したニースパは立ちあがって、俺の襟首を掴んでくる。首を締め上げられながら、ふと学生時代を思い出す。あの頃も俺達はこうやって喧嘩したんだったな。

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