第11話
俺は腑に落ちなかった。ニートボールはロリコン戦士だったはずだ。二次元の世界に置いても美熟女をBBAと言い放ち、ひたすらロリを女神として崇め奉っていたはず。よし、ここは男と男で本音を語り合おうではないか。
「この女性の娘さんは歳幾つだ?」
「僕は本気でこの女性に恋しているよ。未亡人設定は抜きにしてもね。それにロリヒロインは二次元でこそ見栄えが良いものさ。三次元にロリを求めるなんて愚の骨頂の極みだよ」
「正真正銘本気だったのか。それとお前が改めて平常運転していることが分かって安心した」
考えてみればニートボールが三次元のロリに恋するはずがない。美幼女なんてものはそれこそ二次元でしか有り得ない偶像の産物だ。さらに言えば三次元の5歳児相手に息子が元気になるような神話級の変態なんかいるはずがない。いたら紹介してくれ。是非友達になりたい。
「だが、どうする?攻略難易度はS級だと見た。俺達がニートであることを差し引いたとしても戦闘力に差がありすぎるぞ」
「だから、どうすればいいのかを相談したいんだよ。ニートソースだったら何か良い案があるかと思って…」
親友を頼ってくれるのは嬉しいが、俺の手には余りすぎる。特に恋の相談なんてどう考えても場違いだろ。俺が三次元童貞で三次元恋愛初心者だということはニートボールも百も承知のはずだ。
「そういうことは三次元の恋愛経験者に聞くものだ」
俺がそう言うとニートボールはお多福面をくわっと俺の方に接近させて睨み付けてくる。野郎の熱い吐息が俺の鼻を擽ってくる。やめろ、いくら親友同士と言っても心の準備が…。
「嘘だ。ニートソースは朱美ちゃんと付き合ってるじゃないか。僕はちゃんと分かってるんだからね」
やれやれ、それが俺に相談を持ちかけた理由か。俺はニートボールの顔を押しのけてため息をつく。
「なるほど」
確かに俺と朱美は世間一般の視点から見れば付き合っていると言える。だが、飽くまでそれだけだ。少なくとも俺はそう思っている。問題は朱美はどう思っているかのなのだが、今ここで何を言ったところで憶測にしかならない。
「朱美はどう思ってるかはともかく、俺は彼女に恋愛意識なんか持ち合わせてない。良い女友達だとは思ってる」
「鈍感系主人公を気取ってるつもりなの?このまま付き合ってヒモ生活を送ればいいじゃん」
ニートボールの恋愛相談から俺の恋愛事情の話へと脱線してきたな。だが、そうはいかん。俺には俺の、ニートソースとしての信念がある。
「そんな夢みたいな生活。それこそこの忌まわしい三次元ではありえない話だ。お前が奉ずる二次元ロリヒロインと同様にな」
「それを言われるとグーの音も言えなくなるね」
さすがはロリコン戦士。自分の好きな者を例えで言われると即座に納得してくれた。さて、これで矛先は何とか反らすことは出来たな。後は何とか申し訳程度の案を提示すればいいわけだが、どうやら我が親友は本気らしい。
「案ならある」
「何、何々!どんな案なの!」
だから俺の考えつく限りの案を授けねばならない。例え同好の士を失うことに繋がるとしても。
「この女性が経営してる旅館で働け」
ニートにとっては死刑宣告とも言える案を俺はニートボールに提示した。




