第1話
俺の名はニートソース。えっ?本名じゃないだろ?これは俺のソウルネームだから問題無い。それにしてもニートソースか。我ながらベターなネーミングだと思う。調味料の名をもじってニートでネット用語のソースだからな。いわば俺はニートの根元とも言って過言ではない。当然勉強もしてないし、働いてもいない。まさにニート道を追求するニートの中のニートである。
俺の家庭生活は家政婦さんと二人暮らしをしている。俺の両親はヒット商品を連発して成功を収めた大手の電気会社を経営している。つまりテレビでセレブ特集をすれば間違いなくランキングに乗るであろうセレブだ。そして、両親は放任主義で海外出勤で不在。さらには毎月平のサラリーマンの給料の数倍はあろうかという生活費が仕送られているし、お抱えの家政婦もいる。このような奇跡的な優良環境の中で俺のニートライフが成り立っているのだ。
「坊ちゃん、いつものやつが届きましたよ」
部屋の外から心地の良い濁声が聞こえてきた。
「ありがとう。澄さん。ドアの前に置いてください」
戸田澄さん。年齢不詳のおばちゃん。お抱えの家政婦である。化粧の厚い不貞不貞しい面構と恰幅の良い体格、それでさばさばした物言いで幼少の頃から俺の世話をしてくれている。俺は俺のニートライフを支えてくれてる彼女のことを敬意を込めて“御大”と心の中で呼ばさせて貰っている。澄さんはまさに両親不在である我が家の御大と言っても過言ではない。彼女の存在無くして俺のニート道は語れない。
「はいはい。ぼっちゃんは相変わらずですね」
俺はすぐに机から立ちあがり、ドアを開くと澄さんが置いてくれた物を取って、部屋の中に戻る。
澄さんが届けた物はガムテープで留めれた箱。その箱を鋏で切り抜いて開けると美少女のイラストが描かれた箱が入っていた。いわゆるギャルゲーというやつだ。しかもDVD二枚組という超大作であり、掲示板でも評判の良いという話題作である。そして、通販限定の抱き枕シーツも付いている。抱き枕の絵になっているのは勿論発売日前のヒロイン人気投票で一位になった○○ちゃんだ。よし、今日から君が俺の抱き枕だ。
おっと、抱き枕も良いが、まずは本体ディスクの方を取り出さねば。俺は箱からディスクを取りだして、パソコンにセットする。ここで焦らしタイム、インストールの時間の始まりだ。今回は二枚組だから時間は掛かるだろう。まずはインターネットを遮断してセキュリティシステムを解除しないといけない。インターネットは繋いでいるだけでウイルスの侵入の危険性はあるし、セキュリティシステムはウイルス以外の余計な物までフィルターにかけてしまうことからギャルゲーのインストールが失敗する恐れがあるのだ。
さてとインストールをしている最中に別のパソコンを起動させて今日更新されたアニメ動画を見るとしようかな。