第一話
なろう系の新ジャンルです!ぜひお読みください。
広大な草原の真ん中で、巨大狼の死体が地面に半分埋まったまま静止していた。
まるでバグったゲームのキャラだ。複数の切断面に対して不自然にも血の一滴さえ流しておらず、その代わり処理落ちした際のモザイクの様なものが瘡蓋の様に覆っている。おまけに俺の右手には短刀が握られていた。
【エラー:因果関係の不整合。20秒以内にワーウルフの死亡原因を生成してください。失敗した場合、存在消滅】
青空を塗りつぶすかの様に、真っ赤な文字列が浮かび上がった。そして、機械的なカウントダウンの音が響き始める。
ここがどこかも、なぜこんな状況なのかもわからない。確かなのは、目の前で巨大狼が死んでいて、その原因を俺が作らなきゃいけないらしい。
「っくそ、やってやるよ!」
ヤケクソになって、死んだウルフをめがけて逆手に持ち直した短刀で「全力で体を捻るポーズ」を虚空に決めた。渾身の、空振り。
【タスク完了:過程を検出しました。世界が動き出します】
「っ!」
直後、俺の短剣は凄まじい衝撃波を放ち、命中したウルフはそれまでモザイク状だった場所は血の海へと変化していた。
「はぁ、はぁ……。」
理解が追いつかない。少なくとも、あの化け物は殺された…いや、それすら定かではない。世界が俺の動きに帳尻を合わせただけだ。
「……ははっ、おもしれぇ」
目の前で化け物が死ぬなんてシリアスな事態が起きてしまった。でも、それなのに俺はかつてないほどまでに高揚してしまっている。
「す、凄い……、あんな一瞬で……っ」
「―ん?」
振り返ると、いかにも冒険者と言わんばかりの革鎧姿の少女が立っていた。その眼差しは眩しいほどの尊敬で俺を射抜いている。
「えっと、今の見てたの?」
「あの……っはい……!閃光が光ったかと思ったら、もう、ワーウルフが……。私っ、何も見えなくて……。」
どうやら、この世界は俺の空振りが『目視不可能の神速の一撃』を放ったことに書き換えたらしい。戦闘経験ゼロの俺が、神速?笑える冗談だが、不思議なことに胸の奥はドクドクと心臓の高鳴りが止まなかった。
「っああ。それはどうも。……ところで聞きたいんだけど、ここは一体―」
問いかけようとした瞬間、空間がバリッっと音を立てて爆ぜた。
「うっ、……ぐふっ!」
「ひっ……体が、」
視線を落とすと、俺の腹部がグラフィックの歪みのように景色ごと抉り取られていた。欠損した臓器はノイズに置き換えられ、じわじわと赤黒い血溜まりと変貌していた。
誰かの攻撃じゃない。世界そのものが、俺にバグを押し付けてきたんだ。
【エラー:因果関係の不整合。10秒以内に腹が裂けた原因を生成してください。失敗した場合、存在消滅】
視界が徐々にブラックアウトしていく。ふざけんな、訳もなく死んでたまるか。激痛に涙を滲ませながらも、俺の口元は狂気で不敵に吊り上がっていた。
―攻略してやるよ……、このクソゲー。
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