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第七話 案内役たち

ルスベリー先輩が仕事に戻り、私は団長についていくことになった。団長の執務室からある程度経ったところの大きく、細長いように感じる建物に連れていかれた。おそらく宿舎のような感じになっているのではと思う。


 「シアハ、この宿舎の中に君を案内してくれる二人を待機させている。ひとまず向かおうか。」


 「二人もですか。」


 「なるべく、同年代に近い人選をした結果だ。若くして救国騎士団に入ることは難しいからな。」


 二人と聞いて思い浮かぶのがラニウリさんとドークスさんだったが二人は団長に匹敵するほどに高位の役職についていると思う。一度聞いてみてもいいかもしれない。でも、彼らが同年代かと言われるとそうでもないように思える。一体誰なんだろう。


 「よし、着いた。中に入ろうか。」


 そう言われて木製のちょっと大きめの扉を開けて中に入る。ギギギと古く、重厚な音とともに内装が出迎えてくれる。中は至ってシンプルで受け付けのようなカウンターに人がいることと壁に大きな掲示板がありそこには様々なことが書かれている。遠目では何が書いてあるか全くわからないけど。右手にはソファーのようなものがあって、そこで本を読んでいる少女と寝ている少年がいた。

 

 私がそちらを見ると少女のほうが気づいて、慌てて隣の少年をたたき起こしてこちらに来る。


 「お疲れ様ですわ団長。案内してほしい人はそちらでしょうか。」


 「ああ、そうだ。施設の案内と救国騎士団全体の雰囲気を頼む。それと、ガベーラント。後で君の隊長に訓練の増強を依頼しておく覚悟しておけ。」


 そう少年のほうに怒りを向けながら淡々と話している。切れるとまあまあ怖いけれど、寝ているほうが悪いとは思う。


 「そんな団長。許してくださいよー。」


 「ダメだ。一度痛い目を見て改善することだな。」


 「そんな~」


 落ち込んでいる少年は団長にガベーラントと言われていた。こんな時間に昼寝してるからあんまり真面目じゃないのかな。わからないけど、団長にちゃんと謝ろうとしているその素振りは素っぽい。


 「はあ、まあこの話はまた今度な。今は仕事に集中しろ。」


 「わかりましたよ」


 「あの、あなたたち二人が今回案内役に抜擢された人たちですか。」


 「そうだな。一度自己紹介してくれないか。」


 そう団長に言われて、互いに見合わせてから少年のほうが先に話し始めた。佇まいから戦士の立ち振る舞いを感じて、赤い髪に私よりも大柄で、それでも年下のように思える見た目だった。


 「俺はガベーラント。さっきまでは寝ていたけど案内はちゃんとするつもりだぜ。」


 一度引くように下がって、今度は少女のほうが出てくる。優雅な立ち振る舞いに、長い紺色の髪を垂らしており美麗な方だった。もしかしたら年上かなと思えるほどに。団長の同年代に近い人という先入観がなかったら完全にお姉さんだなと思ってしまう。


 「わたくしはアネモネ。前は貴族だったから口調が不快だと思ったら言ってくださいまし。」


 そう言って彼女は一歩引いた。今度は私の番かな。一度深呼吸をしてから少し長い金色の髪を後ろにして胸に手を当てて話し始める。


 「私はシアハ。団長にお願いして一度救国騎士団がどんな場所かを教えてもらうことになった。よろしくお願いします。アネモネさん。ガベーラントさん。」


 「そんな畏まらなくていいぜ。ガベーラントでいいさ。」


 「わたくしもアネモネでいいですよ」


 二人とも笑顔でこちらを見てそういってくれる。なんだか、涙もろくなっちゃう。記憶が曖昧になってから初めて同年代のように話せる人ができてうれしい。


 「うん、よろしくアネモネ、ガベーラント。私のこともシアハでいいよ。」


 そう言っていると後ろから団長の声が聞こえる。


 

 「それじゃあ私は一度執務室に戻ろう。」


 そう言って団長はすぐにこの場から去っていた。そうすると二人とも扉のほうに行ってこちらを見る。そうすると何かを準備するように小声で話しているように見えた。


 「「せーの、ようこそ救国騎士団へ我々はあなたを歓迎します」」


 彼らは手を差し伸べるように、笑顔でこちらを見ていた。その言葉はすでに聞いたことがあるけれど、なんかうれしい気持ちであふれてくる。私は差し伸べられた手を取って返事をする。


 「うん!ありがとう。」


 「いいですわね。一度やってみたかったですから」


 「そうだな。」


 二人とも嬉しそうで何よりと思う。ここに来てからはあまり嫌な思いもしていないし、歓迎されていると思っている。どこに向かうかわからないけれどいつの日か言える側になれたらなと思う。


 「では行きましょうか。まずは、宿舎から案内いたしますわ。」


 そう言われて、エントランスのソファーから離れて受付に向かう。その隣に扉があって大きくナイフとフォークの絵が施された看板があった。多分、食堂なのかなと思う。


 「こんにちは、何か御用ですか。」


 「こんにちは、エルシアさん。ちょっと案内任せられてな。」


 エルシアさんはそう言われてこちらに微笑みながら話しかけようとする。周囲には清掃の管理や点呼の管理などの張り紙が貼ってあり割としっかりとした宿舎で管理が行き届いていると思われる。


 「こんにちはお嬢さん。私はエルシア。ここの管理人ですよ。もしかして、今日から入ることになった新入りちゃんかな。」


 「えと、私はシアハ。救国騎士団にはまだ入ることは決まっていません。一度見て回ることを許可されているので見学させてもらっているって感じです。」


 そうすると彼女は一度考えるようなふりをする。やはり、見学のように案内をしてもらうことは珍しいか初めてか。どちらにせよ警戒しているのかもしれない。


 「シアハちゃんね。そうね、次に、行くなら医療棟に行ってみるといいわ。そこでならここの人たちがどう扱われているかがよくわかると思うから。」


 見透かされたように、何が恐ろしいかを言い当てているように感じる。それとも、今までたくさんの人が助けられてきて同じような道たどったのかを知っているのかもしれない。そんな母のような優しさを感じさせられる。


 「そうだな。次は医療棟に行こうぜ。」


 「わかりましたわ。行きましょうかシアハ」


 アネモネは自然に手を差し伸べてエスコートするように私を外に連れ出してくれる。ガベーラントはその先に行ってしまう。自由なところはいいけれども規律を持つ騎士としてはどうかと思うところもある。

 私たちはそのまま、救国騎士団の領域を歩いて、医療棟に向かった。

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