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第二話 よしよし

 ルスベリーと呼ばれていた茶髪の美少女から地面に下してもらうとすぐに地面にへたり込んでしまった。そんな私にすかさず近づいて来たのはピンク色の髪をした美人さんだった。


 「あれ?」


 そういわれて目の前にいた女の人に抱き寄せられる。暖かく柔らかい感覚にさらされて安心する。さっきまで、化け物との逃避行を強制されていて死が迫る感覚に溺れていたから。その場で泣いてしまう。


 「大丈夫だよ、ちょっと君のこと治療してあげたいだけだからね」


 「は...はい」


 「うん!そんなに緊張しなくても大丈夫だから、もう私たち救国騎士団に任せなさい。」


 「ラニウリさーん、何か手伝うことありますか?」


 「そうだね、見た感じ、手に軽傷、足にひどい切り傷、顔にあざがあって...ノードに感染している。消毒剤、持ってきてくれる?あと、ノードが進行しているから手袋も」


 「了解しましたよ。では取ってきますね。」


 「オッケー」


 ルスベリーと呼ばれていた子は近くの団員のところに行ってなにか話しているように見えた。多分、さっき言っていた治療に必要なものを取りに行っているのかな。考えが固まらずに周りを見渡すと、まだ敵がいるのかもしれなくて索敵している人が多い。私はその場に座るしかなくケガによって動けなかった。


 「ねえ君名前はなんていうの」


 こちらを見つめる琥珀のようなきれいな目を輝かせてこちらを見つめる。審美眼を持つような美しさに目が眩しい。


 「私はシアハ。見ての通り、天使族だよ。」


 「そっか....。大変だったでしょ。こんな森の中で一人だったんだから」


 「いえ、その...」


 「落ち着いて。ゆっくり話せればいいからさ。」


 「ラニウリさん。持ってきましたよ」


 「ありがとうね~。は~い、ちょっと染みると思うけど我慢してね。」


 「痛い。」


 痛いけれど、やさしい痛みだった。苦しさも、不快感も、拒否反応も何もかも違った。心配されているのは記憶を失ってから初めてかもしれない。帝国にいたときの記憶は監禁されていて周りは誰も気にも留めない存在として認識していた。たまに来る研究者みたいな人が鬼に追いかけられているようなそんな気迫で詰め寄ってくるくらい。

 

 「はい、よくできました。あとこの手袋付けておいてね。救国騎士団と言ってもノードが進行している者に厳しい人もいるから。」


 そう言って、黒く染まった両手に手袋をしてくれる。ノードが進行するとこの黒いナニカがだんだん全身に浸透していって最後に死ぬのだろう。確かに、触っただけでも感染するかもしれないという恐怖があると仮定すると、ノードに感染している人に恐怖を抱くかもしれない。ただ、ラニウリさんは普通に触っても平気そうだった、からなにかノードに対する知見を持っていると推察できそう。それにしても不思議なくらい痛みが引いてくる。


 「ラニウリ。周辺2km圏内には灰生物、灰人ともにいなかった。ベースキャンプに戻るぞ。」


 「はーい、いつもありがとうね。ドークス」


 そう、ピンク髪のお姉さんは長身の眼鏡をかけた細身の男の人に感謝をしている。男の人のほうはちょっと照れくさそうにしていて仲がよさそうに見えた。そして、ドークスさんは私と同じように手袋をしていた。もしかしたら彼もノードに感染しているのかもしれない。


 「そういえば自己紹介していなかったね。私はラニウリ。救国騎士団のみんな健康とか怪我を治すためのリーダーみたいな感じだよ」


 「その子が今回襲われていた子か。俺はドークス。救国騎士団では戦術エリートオペレーターとして働いている。」


 「ちょっと、いきなりそんなこといってもわからないでしょ。この人はね...敵を倒すための作戦?を考える人って覚えとけば大丈夫。」


 「はあ、」


 ドークスさんは首を傾けていた。そんな雑な紹介でいいのかみたいなことを言い始めてラニウリと言い合っている。蚊帳の外過ぎてどうすればいいか戸惑っていた時に後ろから声を掛けられた。振り返ると化け物を倒した騎士とさっきの茶髪の美少女がいた。


 「君が今回助けられた子かな。私は救国騎士団団長のグラジースだ。」


 「私は救国騎士団の偵察隊のエリートオペレーターのルスベリーですよ。」


 「私はシアハ、背中を見れば一目瞭然だろうけど、天使だからそのお手柔らかに」


 もじもじしている私を見て、グラジース団長とルスベリーさんの表情が曇ってしまう。なにか変なことでも言ってしまったのだろうかと思ってしまうが、そんなに変なことはないはず。なにより天使であることが罪になる国すらある。そんな扱いされていて疑わないことはありえないと言える。


 「君がいままでどのような扱いを受けてきたかは我々には計り知れない。」


 「しかし、我々救国騎士団はあなたを歓迎しよう。決して卑下することなく」


 「よければ、私の手を取ってほしい」


 そう、私の目線まで視点を落として、こちらへ手を差し伸べる。正直にいっていままでの経験からこの手をとっても取らなくてもいいことは起こらないと思っている。それほどに残酷な扱いが私の判断を鈍らせる。それでも、私は。


 ”手を取る”


 「ありがとう。いつかきっと」


 後ろからドークスさんとラニウリお姉さん、ルスベリーさんが近づいてくる。団長の言葉の続きはきっといつか聞けるだろうか。私は団長の手を放して少し後ろに行く。


 「団長、話は終わりましたか。ベースキャンプに戻りましょう」


 「そうだね、ルスベリー、彼女を背負ってくれないか。」


 「わかりました団長。ほら、乗っかってください。」


 私はルスベリーさんの背中に乗ってベースキャンプ?という場所に向かうらしい。ゆっくりと向かっているのか。少し眠くなってきた。寝そうになって揺られて起きるを繰り返して頭がほんわりとしてきた。





 「シアハ?眠いのかな」


 そうルスベリーさんに起こされて周りを見渡す。布でできた簡易的なテントがちらほらとあり、1つ突出した大きいテントがあってちょっとした拠点感があった。いろんな人がいてにぎわっているように見えた。


 「周りが気になる?」


 「うん、帝国騎士団とは全然違って、変だなって。」


 「あーね、あそこはかなりひどいところだからね。帝国は...」


 申し訳なさそうにこちらを見つめるルスベリーさんはなんだか憐れむような感じがする。最後のほうに小声で帝国ってところまで聞こえた。帝国にいたころはほとんど自由が無くて監禁されているみたいな感じで帝国騎士団と救国騎士団の見分けなんて私にはわからない。でも、遠目で見た雰囲気は全然違うように思える。

 

 「シアハちゃーん。こっちおいで~。」


 振り向くとラニウリさんが大きく手を振ってあちらに呼び込もうとしている。そこは白色の布で覆われたテントで大きな赤十字があった。


 「シアハさん。行きなさいな、ラニウリさんに頼めばなんでも直してくれますから。私も団長の言葉通り、あなたを歓迎しますよー。」


 「わかった、お姉ちゃん」


 「うんうん、それもいいですけど、先輩と呼んでください。」


 「あ、ごめんなさい。じゃあ、ルスベリー先輩。これでいいですか?」


 「うーん、これはいいわね。」


 納得したような自慢気のような顔をしていてそう呼ばれてうれしいならよかったな。ちょっと遅れたけど私はすぐにラニウリさんのところに行くことにした。


 「ようこそ、私の領域に。なーんて緊張しなくていいよ。」


 「よ..よろしくお願いします」


 「じゃあまずはここに寝転んで」


 患者を寝かす用のベッドに寝転ぶ。久しぶりにベッドみたいなふかふかの寝具に寝転んだからすぐに寝そうになる。


 「大丈夫だよ寝ていいからね。」


 そう優しく言われて、意識が沈むように寝てしまう。


 「少し、ここで休んでおいて。明日には都市に帰れると思うからその時はもっとちゃんとした治療してあげるから。」


 頭を撫でてすぐに離席した。ほんのり温かみが残っており、安心する。

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