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第一話 世界に見捨てられた少女は

ここがどこかすらわからない。私はいつのまにか、帝国騎士たちによって彼らが言う廃棄場に放り出されていた。周囲を見渡すと、木々が生えているようにも見えてそれでも何か不気味な顔が浮かんでくるような不思議な場所だった。草木が光を遮って、自分の周りは暗闇でおおわれているかのように、何も見えなかった。

 なんでここに送られたのかもわからない。けれど、私を連れてきたやつが言っていたのは。


 ”廃棄される奴に金と兵士が大量に溶けたのかよ。戴冠した皇帝サマの考えはわかったもんじゃないね。”


 帝国は私を奪うために兵士を犠牲にした。それも犠牲がありえないほど出るくらいの戦闘があったと推察できる。だから、都市から誘拐したとかではなくて、戦争をしたと思われる。でも、それほど苦労してなんで何も覚えていない私を攫いに来たのか全くもってわからなかった。ただ、数千人の犠牲が出るということはそれなりに大きい都市か国で、攻めるのにも苦労していると考えられる。それに、そこそこの重要人物だったと思われる。


 考えることはいっぱいあるけれど、それよりも今は何とかして人がいるところへ行かないと死んでしまう。何よりも、奴らはここを”廃棄場”って呼んでいた。おそらく、奴らの言う”感染者”を排除するための廃棄場って感じなのかな。


 それでもおかしな点がある。だってそれをするくらいなら、私を殺してしまえばいい。だから何か殺すに至らないことがあったのか、それとも誰かに助けられたのか、それは私にはわからないことだろう。それか、廃棄しなければならない理由があるのかもしれない。


 重い体を上げて、姿勢を低くして周りを見渡す。ふと、耳を立ててあたりの音を探ってみる。草木が風に揺られる音と何かを踏みつけるような大型の野生動物の音が聞こえる。私は縮こまることしかできなかった。すぐさま近くの草むらに隠れて、大型の奴が過ぎ去ることを祈るばかりで何もできない。幸いにも、お腹が空いていなかったのか、足音は遠ざかり気にしなくてもいいかもしれない。


 「大丈夫、私ならなんとかなる。」


 そう、つぶやいて自分を鼓舞するように胸に手を当てて深呼吸をする。ひとまず、ここから離れなくては始まらないと考えて歩き始める。案外、人が通ったであろう道がすぐに見つかった。廃棄場と言われるから騎士たちが通った場所なのかなと思ったのだが1つ不自然な点があった。なにやら、人が通ったというより、何かを引きずってここを通ったかのように思えて仕方がなかったのだ。動物でもありえなく、人でもない何かが通ったとしか思えず、何かに見られている感覚に陥って思わず振り返ってしまった。


 「よかった....何もいなくて」


 ただ、そうつぶやいただけだった。視線を前に戻して、前を向いて歩こうと思った矢先に私の目の前に現れたのは人でも、野生動物でもない化け物だった。化け物は私よりも2回りも大きく大人よりも大きいくらいで、身体から赤くねばねばして、ちょっと透明で中に星空があるような液体を垂らし、ゆっくりとこちらを見るような獲物を見定める視線が刺さった。クマのように見えるけど液体が身体を覆っていた。けれど、こんな奴が自然界にいるとは到底信じたくないほどに悍ましい見た目をしていた。何をもって悍ましいとするかは人それぞれだと思うがこいつの中身はクマのように大きく、鳥のような特徴をもって、蛇のような牙を持つ。ちぐはぐな構造をしていて恐ろしかった。なにより、既存の生物がまるで乗っ取られたかのようなふるまいをしている。クマのように歩き、羽を羽ばたかせるように触手を動かして、どこか前の生物の動きがあった。


 奴は灰生物という化け物で、さらに上位の個体のキメラだった。私の記憶にはないけれど、知識として覚えていることだった。ただ、幼体のようでまだ頑張れば逃げることができるかもしれない。けれども絶対に勝てない生物が今にも襲ってきそうで身体が震えているのに逃げ出せない。震える足を奮い立たせるようにして、奴が動くと同時に私も逃げ出した。


 奴は見た目以上に素早く、私よりも早いのではないかと錯覚してしまうような速さだった。けれど、でかい図体があだとなったのか木々をかき分けて進めば意外と突き放せそうだった。

 でも、ある程度引き離した後にすさまじい轟音とともに木が倒れる音が連鎖した。私は音の原因に目を向けようとするが、その光景によって身体から力が抜けてしまう。


 赤く透き通るようなキラキラした液体をばらまきながら、身体から無数に生える触手によって木々を粉砕して、圧倒的に私より速い速度で私を殺さんとする動きだった。幼体と思い込んでしまってそれほど強くないだろうからこの森林では動きが取れないだろうと侮ったのが間違いだった。


 反応が遅れたけれど、逃げようとしたときにはすでに時遅し。奴の触手が足に命中して、みじめに地面に転がされることになった。どこにあったのか、ゆがむ視界を擦るようにしてみるとふくらはぎあたりから血が流れていて、痛みで動けなかった。そして、私はここまでの運命だったんだなと悟った。

 

 「なんで、私は」


 記憶を失ってからあまりにもあっけなさすぎる死にざまで何を求めて生きていたのかすらわからずに死ぬしかない。


 目を瞑って身体をあいつに預けるようにすべてを投げ出すように。こちらに近づく音とともに死ぬと思った。そう思っていたのに、身体を触手によって吹き飛ばされたと思ったけれど、何かによって浮かされたような感覚に陥った。


 「危なかったですね。君、大丈夫ですか~?」


 恐る恐る目を開ける。そうすると私を抱えたきれいな茶髪を垂らした美少女がいた。抱えられていて、身体同士が密着して私の体に彼女の温度が伝わる。暖かくとても安心できて、力が抜ける。


 「酷い怪我ですね。早くラニウリに見てもらいませんと。それに天使の羽...」


 「お姉さん逃げてあいつが、あの化け物が」


 せっかく助けてもらったのにパニックになって暴れてしまう。あの化け物が逃がしてくれるとは思わないから。


 「大丈夫です。ほらあっちみてくださいよ。」


 化け物がいた場所はすでに黒焦げになっており、代わりにそこには白銀の鎧を被った騎士がいた。大きな大剣からは火が出ており一目でノームレゾナンスが扱える人であることがわかるそしてその足元には私を食べようとした化け物が死んでいた。その姿は美しく、まるで英雄のように威風堂々とした佇まいだった。


 「ルスベリー、こちらは片づけた。救助した人はどう...!」


 ヘルムを上げてこちらを見る。どこかでみたような顔つきをしているけどこんなに強い人は見たことない。それに私がいた都市にもこんなにきれいな銀髪を長く垂らしている人はいなかったから。驚いた表情でこちらを見るがすぐに切り替えるように真顔になりこちらを見つめる。


 「ラニウリ。彼女を診てくれ。ドークス、周辺の警戒を頼んだ。」


 「了解」


 「はーい、お姉さんに任せなさーい。」


 ピンクの髪を切りそろえたかわいい女の子がこちらに近づいてくる。ドークスと呼ばれていたしゃっきとした眼鏡をかけて手袋をしている男の人はノームレゾナンス中継器を使って何かをしている。ルスベリーと呼ばれていた茶髪の美少女から地面に下してもらうとすぐに地面にへたり込んでしまった。

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