表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/12

第九話 ユウとミナミの出会い パート3

いつも読んでいただき誠にありがとうございます。

前回の続きです。

ミナミの話は、もう少し続きます。

わたしは無事に臨床実習を終えて、後は国家試験に向かうだけになった。


ゆうさんはその後もナオのリハビリを続けてくれて、歩いて退院した。


わたしは、嬉しくて嬉しくて、会える時はいつも近所を散歩した。


「また歩けるようになるなんてな!先生のおかげだぜ!」

「んんん?一人足りないなあ〜」

「わーかってるって!ありがとなミナミ!」

無理はまだ出来ないけど、一つ夢が叶った。

わたしは、ユウさんのいる病院へ行くって決めてたから、面接の期間までもう勉強してた。でも、その頃の時点で模試は8割超えてたから割と余裕があった。多分、ユウさんが指導してくれる内容が、国家試験に出るポイントを優先的に言ってくれてたのが大きかったんだと思う。そのおかげでナオとの時間も作れたし、ユウさん様々だと感じてた。


いつもの公園のベンチで休憩していると、ある親子が駆け寄ってきた。


「もしかして、あの時助けてくれた方ですか??」母親が声をかけてきた。

「あ!あの時のお兄ちゃん!」

サッカーボールを持った少年、服を見ると、ナオがいたクラブチームのJr.チームのロゴがある。

「あの、、あの時はありがとうございました、、ナオさんのおかげで息子は助かりました、命の恩人です。」母親は涙を流しながらお礼を言う。

「いやいや。ほんと良かったっすよー!俺じゃなかったらお子さんやばかったですから!気にしないでください!」

「けど、、ナオさん、、その、、サッカーが出来なくなったとお伺いしました。、、本当に申し訳ありませんでした!」

母親は深々と頭を下げる。

「や、やめてくださいおかあさん!俺はあの時点でもうある程度やり切ってたというか、もういいんすよ!それよりも、もっと大事な経験できたんで!」

母親は泣きながらうんうんと頭を下げる。

「ところで、、、もしかして、俺のことって、、クラブチームで聞いたんすか?ほら、息子さんの練習着」

「事故の後、息子とお見舞いに伺ったんです。そしたらリハビリのお時間と重なっていて、そしたらちょうどクラブの方たちもお見舞いにきていて、触発されたみたいなんです。」

「あ!来てくれてたんですね!すみません!ちょうど鬼にしごかれてたところで!」ナオはガハハと笑う。

ナオはいくつかあるミサンガを指して、ミナミに言う。

「なあミナミ、これ、一個あの子にあげてもいいか??」

「わたしも同じこと考えてた!さあ!名シーンだよ?」

息子にどの色が好きか聞き、オレンジのミサンガを選んだ。

「僕ねえ!大きくなったらワールドカップに出るんだ!お兄ちゃんよりももっと凄い選手になるよ!」

ナオとミナミは二人で顔を合わせて目を丸くした、まさに、シーンの前振りと言わんばかりに。

「ほう、俺を超えるのか、じゃあ、、このミサンガをお前にあずける。俺の大切なミサンガだ。いつかきっと返しに来い。立派なサッカー選手になってな!」

ユウさんに借りた大好きな漫画のセリフ。

それをパクるのが癖になってたの。

「うん!ありがとうお兄ちゃん!」

「ありがとうございます本当に。来年、わたしの再婚で、この子と田舎に引っ越すことになってるんです、、、でも、そこにも元日本代表監督がいるクラブチームもありますし、この子もサッカーを続けていくと言ってます。ナオさんもお身体大事になさってください。」

そう言って親子は帰って行った。


ミナミはまた泣いている。

「なかなかの名シーンだったぞナオ!惚れ直した!」

ナオはニカっとわらって静かに親子の背中を見ていた。


それからしばらくして、ナオは倒れた。

再発だった。。

その日はサッカー観戦デートで、ナオのいたクラブチームはリーグ制覇した。

ナオは約束の時間まで時間があったから、昼寝してたみたい。わたしが家に迎えに行くと。寝室でスヤスヤ、、、と思ったら、呼吸が止まってて。

慌てて救急車を呼んだし、蘇生もした。もう無我夢中だった。

画像診断の結果、再発してたみたい。


♦︎


お通夜の日

「わたしはもうずっと放心状態だった。

だれに話しかけられても、ああ、とか、はい、としか話さず。ぼーっと遺影を見てた。

わたしの家族も自分の子供同然に可愛がってたから、みんな凄く悲しんだ。

お通夜には病院の先生たちも来てくれた。もちろんユウさんも、、、

けど、式場ではユウさんは毅然としてた。

参列が終わった頃、ナオの両親が「あなたが、神城先生ね?息子が毎日のように先生先生って、、みるみる良くなって、何度も再発したのにその度に助けてくださって、、本当にありがとうございました。」

「ナオさんは、、とても強く、優しい人です。わたしのリハビリにも耐え、ミナミさんやご家族のために、必死で頑張っていました。

わたしも、そんなナオさんに感化されて、たくさん勉強しました。

お礼を言うのはこちらです。、、、こんなことになってしまって、、、わたしの力不足です。。本当に申し訳ありませんでした。」

そう言って深々と頭を下げてた。

ナオの両親は泣きながらユウさんの頭を必死で上げようとしてた。

本来ならこんなセリフは主治医がするもの。。ユウさんの責任感から自然とその言葉が出てきた。頭を下げ続けるユウさんをみて、病院スタッフらが駆け寄ってきて、みんな頭を下げて挨拶してた。主治医も少し泣いてて、、本当に良いチームだと思った。

参列者が一通り履けた後、ナオの家族だけが残った。わたしも一緒に過ごして良いと言われたので、式場に泊まることになった。1秒でも長くナオの顔を見ていたかった。


わたしは一人、フラッと外に出た。

見上げると星が綺麗だった。

少し歩くと、近くの公園。ここは思い出の場所だなあって歩いてると、人影が見えた。

ベンチに腰掛けてるのはユウさんだった。。

わたしは少し距離をとり、ぼーっとユウさんを見てた。すると


ユウさんは両手で顔を覆い隠し、何度もベンチを殴ってた。

「くそ、くそ!、、くそ!!、、ちくしょう、、、なんで、、、」ユウさんは一人で泣いていた。あんなに毅然としてたのに。



『「んだよ先生!そんなに泣かないでくれよ〜!先生はさあ、2回も俺に奇跡与えてくれたじゃん!ほら!顔あげてよ先生!」

ユウはハッとして周囲を見渡す、確かにナオの声が聞こえた気がした。

無我夢中で辺りを見回すと、そこにはミナミがたってユウをみている。』



放心状態だったわたしは、その光景を見て、自然と涙が溢れてた。


「せん、せい、、神城、せんせい」

ユウさんはわたしに気がついた。


わたしはもう涙が止まらなかった、ユウさんの顔を見た瞬間、糸が切れるように泣いちゃった。


「ナオが、、ナオが、、先生、、ナオが、、」

もう泣きじゃくって止まらなかった。

ユウさんも泣いてた。

「ミナミさん、、ごめん、、俺、、」

「ナオが、、、ナオが、、死んじゃったよぉーー、、、!!先生ー、、、!うわぁぁ、、、!」

わたしは泣きじゃくって、ユウさんの足元に駆け寄り、抱きつくように崩れ落ちた。

ユウさんはわたしを受け止めてくれた。


『「俺は死なねぇぜ、先生!なんてな!、、、ミナミのこと、頼んだぜ、先生」

ミナミを受け止めながらまた周囲を見渡す。他には誰もいなかった。』


「ごめんねアリス、こんなところ見せて!でも気にしないで、もう立ち直っ、、、アリス?」


アリスの頬に涙が溢れていた。

「ん?あ、あれ?、、どうしたんだろう、、これ、涙?、、あれ?、なんか、止まらない」


それを見てミナミも泣いてしまう。

「ありがとうアリス」

「お礼を言うのはこっち、、、わたしには、大切な人がいなかった。けど、ユウ、タイガ、そしてミナミ、、、多分、わたしにとって、もう大切な人になってたんだと思う。だから、大切な人が悲しんだり、喜んだりすると。こんな風になるってわかった。。」

そう言ってアリスは笑顔になって、ミナミの手を握った。

「ナオがきとっと、ユウとミナミを繋いでくれたんだね。」



ミナミは頷いて、アリスの手を握り返した。


第九話 完


ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

次回、物語は静かに進みます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ