第二十九話 超感覚
身体の変化は、能力だけでなく「選択」を迫る。
覚醒は祝福か、それとも責任か。
ユウたちは一歩、未来へ踏み込みます。
リスタはユウたちへ説明をする。
「わたしの研究では、骨格系以外にも、感覚系についても研究を進めています。
その中で見つけたコードとして、超感覚というものがあります。
それは、五感以外の感覚、気配を察知したり、または発したりすること。
また、言語的な理解と変換。
自然エネルギーを感じ取れて、操作する感覚。
ここまではわかっているところです。
その覚醒のさせ方や開花の誘導についてはまだ予測段階であり、わたしの手法もまだエビデンスが整っていない段階です。
ですが、この一ヶ月でユウさんの身体に変化が出てきました。」
「身長と顔、それに身体の硬度や筋力かな?」
「その通りです。
まず、この星に来る前の身体状況をラムを通じて再評価すると、骨格自体が変化しています。
また、この一ヶ月のわたしの実験でも、細胞の回復速度が上がっていること。また、超感覚の"蓋"が少し開いてあることが数値で証明されました。」
「なら、このデータを持って、ラボへ協議すると良い。ということね?」
「はい。それができれば幸いです。」
「一つみんなに質問いいですか?」
「どうぞ。」
「言語理解のところだけど、今って、ラムが俺の脳に直接言語は変換してくれてるんだっけ?」
「いいえ、もうとっくに解除してあります。月では日本語が共通言語のため、一部だけ補助していましたが、その際に、言語理解の脳スキャンを行ったところ、驚くほど理解と変換が早いことがわかったのです。
ですので、このニューラでは、一通りの日常言語を拾いながら脳と変換誘導を繰り返した結果。すでにユウの頭の中ではラボメンバーが日本語や英語で話しても、ニューラの人たちがニューラ独自の言語を話していても、脳が自動で変換して、口に出す際は相手に通じる言語で話している。
というとわかりやすいでしょう。
ユウにとってはずっと日本語に聞こえているし、日本語で話している感覚でしょう。」
「だからか。必死すぎて気にも留めなかったし、ある程度話す人が限られてたから見落としていたけど、今スッキリした。
じゃあ、これも超感覚の一つってことで、これからよその星へ行っても、自動でこうなるってことか……」
「そうですね。ユウさんはすでに蓋が開いている状態なのね、順応も益々早くなるでしょう。」
「そうか。ひとまず安心したよ。
あ。ごめん、もう一つ。
俺の身体のことって、これからは誰が管理してくれるんだろう?
こんな風にデータを取っていく必要があると思うんだけど、ラムがやってくれるの?」
「いえ、わたしはコンピュータ内の指示されたものや教わったものの範囲でしか今は行えません。
なので、今後旅をする際には、それなりの科学者は必要でしょう」
「……………そうなのか。なあアリス。ちょっと耳かしてくれ。」
ユウはアリスに耳打ちする。
「うん!それ良い考え!けど、それは聞いてみないとだね!」
◆
ラボの見学後、また大統領邸で食事をすることになった。
先ほどアリスへ耳打ちした内容を相談した。
「なんと?!それは本当か??本当に良いのですか?」
「ええ。俺たちとしても、その方が安心です。後は本人次第なので、そこは大統領たちにお任せします。なんにせよ、明日ラボへ報告して、そこから厳密な会議を繰り返すと思うので、この話は平和的に落ち着いた後になりそうですが……」
「こちらとしてはありがたいお話しです。
どうか、上手く話が進むことを願っております。」
「責任重大だね、ユウ!」
「だね。………大統領。明日から少し、リスタ博士と時間を作っていただけないでしょうか?
プレゼンに向けて、リスタ博士にも協力していただきたいんです。」
「是非そうしてくれ。リスタも喜ぶと思う。
ultimate遺伝子に触れられるからということもあると思うが、何より自分の存在を必要とされていることが、リスタにとっては大きいとわたしは思う。
早速話は通しておく。明日からは直接打ち合わせしてかまわない。
そして、いつまでもここにいてくれていい。あなた方のペースでお過ごしください。」
「スイートルームも、その期間は自由にお使い、く、だ、さ、い、ね」
メツがユウへウインクする。
ユウは赤面する。
「あ、ありがとうございます。感謝します。」
アリスは少しニヤついていた。
(本当はいじりたいけど、明日からは少し集中させてあげなきゃね。この星の未来がかかってるんだ。)
◆
電波塔。
(勢いのまま提案しちゃったけど、本当にこれで良かったんだろうか。
みんなが決めたルール。変えるのってすごくエネルギーがいると思う。ラボはどんな答えを出すだろうか……)
「いないと思ったら、やっぱりここだった!
んもう!なんで声かけてくれないの??
一緒に寝ようと思ったのにー、いじわる」
「ご、ごめんアリス!嫌がってたわけじゃなくて、その……考え事してて」
「あははは、うん!全然大丈夫!
ごめん、ついいじっちゃった!
でも寂しかったのは本当だよ?
一応ラムは把握してくれてるけど、わたしも力になりたいから、なんでも相談してね?」
「うん、ありがとうアリス。
ほんとごめんね。一人で出てきちゃって。昔っから集中すると周りが見えなくなるんだ。
直そうと思うんだけど、またやっちゃった。
ミナミには良く怒られてたからなあ。
俺、自分自身も成長しなきゃって思うんだ。
だから、何でも思うことがあったら遠慮なく言ってねアリス。」
アリスは微笑んだ。
「了解です。でも、さっきのは冗談だから気にしないでね!
今集中したいのはわたしも理解してる。だって、ラボに意見するなんて、わたしも想像つかなかったから………。
ユウと一緒にいることで、わたしももっと自分で考えなきゃって思ってる。
だから、お互いに頑張ろうね!相棒!」
ユウは目を見開いてアリスを見る。
アリスは笑顔で拳をユウへ向けていた。
ユウはアリスを見ながらミナミやタイガが重なって見えていた。
『任せとけ、相棒!』
そう言われていたことを思い出していた。
ユウは、アリスの拳に自分も拳を合わせる。
「ああ、任せてよ………相棒」
アリスはまた微笑んだ。
電波塔からの景色は、ニューラ大陸のネオンを見下ろせる絶景だった。
二人は座ってしばらく並んで観ていた。
沈黙の後、アリスが口を開く。
「明日から、作戦開始、だね」
アリスは夜景を観ながらユウの肩に寄りかかり呟くのだった。
第二十九話 完
最後まで読んでいただきありがとうございました。
ユウの中に眠る「超感覚」の正体、そしてアリスとの「相棒」としての誓い。かつての仲間たちの姿をアリスに重ねるシーンは、ユウにとって彼女がどれほど大きな存在になったかの証でもあります。物語はいよいよ、ラボとの直接交渉という最大の山場を迎えます。
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今後とも hanaXIII をよろしくお願いいたします。




