第十八話 遺伝子研究の星
新たな星、そして新たな任務。
ユウの可能性を巡る物語は、ここから本格的に動き出します。
月の時と同様に、二人はタワーの頭上から空中をゆっくり降下する。
(やっぱり慣れん、、、怖すぎる)
「わたしも慣れるまで怖かったよコレ。どんな原理で浮いてるのって、、、何度も原理聞いてもわかんないから余計に怖いの。ただ、落ちないということだけはわかったから、今はもう慣れたかな」
「俺も早く慣れなければ、、、」
二人は無事にラボ内へ到着し、
移動サークルでラボ中枢へ移動した。
「はじめましてハンズ博士、ユウと言います。」
「はじめましてユウ、わたしはハンズ。フィング博士からは聞いているよ。
そして、、、アリス!
良かったなあ、お前さん、名前最近決まったんだって??
とても良い響きだ。聴覚に心地よい響きだ。そう思わんかねユウくんも」
「はい!俺もそう思います。」
「ユウが付けてくれたの、わたしの名前。」
アリスはまた嬉しそうに言う。
「それも報告受けてるよ。なかなかやるねぃユウくんは」
(思いのほかフレンドリーで良かった!)
「博士、、、」
アリスは真剣な顔でハンズ博士に声をかける
「ああ、わかっているぞ、早速だが本題に入る。ここから移動して、メインラボのミーティングルームへきてくれ」
アリスとユウはラボ内の移動サークルですぐに移動する。
部屋に入るとそこには研究員がズラリと並んでいた。
ラボ内は船内同様に白が基調とされている。
「では、今回の任務を整理していこう。
まず、アリス、ultimate覚醒者をよく見つけてくれた。我々の長年の研究をついに活かせる時がくる。
まずはこうだ。
ユウ、君はこれからわたしらと共に君の生態を評価し、アセスメントし、覚醒の蓋を開ける。
協力してくれるかね?」
一同がユウに注目する。ユウは学会発表の経験から意外とこういう場は慣れていた。
「はじめまして、ユウと言います。
もちろん構いません。むしろご迷惑をおかけしますが、どうぞよろしくお願いします。」
ユウは深く頭を下げる。
この対応には一同ざわついている。
ultimate覚醒者ということもあり、優れた人間であるため、研究員たちは、傲慢な人柄を勝手にイメージしていたからだ。
研究員たちの目の色が和らいだ。
アリスもほっとしている様子。
「良かった。それについてはまた個人的に説明する。では、もう一つの本題を説明してくれるかな?」
「はい。わたしはテソーと申します。
ここの助手をしております。
もう一つ皆様にお話しすること。それは、最近ニューラシア大陸中央部で、ラボを無断で設立しているのではとの噂が流れています。」
スクリーンにニューラの星の地図が映し出される。バーチャル映像だ。
ユウ様にもわかりやすく説明いたします。
このニューラは、地球の半分以下のサイズの星です。
大陸は二つあります。一つはこのラボがある大陸。そして、人たちが生活を送るニューラシア大陸。
ニューラシア大陸は、5つの区画に分かれており、中央区を中心に東西南北の区画で取り囲んでおります。
中央区は、ニューラシアのいわゆる大統領がいる区域であり、そこを中心とした秩序なのです。
このニューラでは、遺伝子に関する研究を長い歴史の中で行っており、外部への漏洩は禁忌とされています。
ですが、近年中央区でラボが設立されているのではとの噂が流れたことから、調査をする運びとなったのです。
そこで、明後日より、アリス様が調査に向かう運びとなりました。」
アリスは真剣な面持ち。
ユウも額に汗が見える。
「お、俺はどうすればいいんですか?」
「もちろんユウ様はここに残り、蓋を開けることを最優先します。大丈夫です。わたしたちが身の周りのことはフォロー致します。」
ユウはアリスをちらっと見る。
「ユウ、ごめんね、、しばらく別行動になるけど、頑張ろうね」
アリスは微笑んだ。
それを見たハンズ博士は目を丸くして微笑んだ。
(エージェントがこんな笑顔を、、素晴らしい!)
「この二つがこれから行う我々のミッションです。皆様、これから世界が動きます。力を合わせて取り組んでいきましょう。
また各々のミッションについて、詳細は追って通達致します。」
会議はシンプルに終わった。
(俺が思うミーティングとは違ってスピーディーだ。できる人たちで集まったらこうなるのか。)
ユウはニアフォレスト時代を思い出していた。
◆
ユウとアリスの居住区域を案内された。
本格的なことは明日以降で行うと。
星の中は地球時間とほとんど同じリズムで設計され、各大陸上空にはサーカディアン装置という、気候や天候をコントロールする装置も備わっていた。
(ま、また隣り合わせか、、、まあ、俺たちセットなのは、まあそうなるよな)
「近くで過ごせるね!」
アリスは先程と違い表情が柔らかくなる。
(俺といる時はリラックス出来てる感じなのかな?、、、良かった、俺も役に立ってて、そう思いたい。)
「ねえ!ハンズ博士からも許可もらったし、ラボ大陸内を見て回ろうよ!
今回はラムも一緒に!」
「良いねそれ!、、ん?、、ラム??」
「お呼びですか?ユウ」
アリスの腕付近から小さなスクリーンが出てくる。声はそこからだ。
「わ!なるほど!通信機器があればどこでも行けるのか!」
アリスは腕輪をユウに渡す。
「これは、わたしたちを繋ぐお守りね。何かある時はコレでラムを呼ぶことも出来るから」
「え!良いの??」
「本当はダメなんだ、けど、今日だけ特別だよ。任務の時用だから」
「わかった、今日は3人で過ごそう!」
(3人、ユウ、あなたは本当にお優しい。アリスも。この思考はデータに無い。解析を進め無いと。)
ラムはこの二人から少なからず影響を受けていた。プログラムが進化してきている。
ラムによって星について詳細説明を受ける。
道路を浮いた乗り物に乗り、街中の景色をみながらガイドをしてくれている。
「ねえラム。この区域で一番美味しいコーヒー屋さんは?」ユウが訪ねた。するとアリスも続く。
「それと、一番眺めの良い場所は?」
二人が顔を見合わせて笑う。
「アリスも考えること一緒だったんだね。」
「ほんと!びっくりだね!」
「そうくると思ってすでに検索は完了しています。ご案内いたします。」
ラムもすかさず会話に入る。
「凄いや!みんなの気持ちが通じてるみたいだ!」
(気持ち、、、二人の心理ベースから読み取り前もって検索したが、、、コレが、気持ち、というものなのか、確かにわたしは言われる前に思考し、実行していた。実に興味深い。)
その後、区画を回り、ニューラ特製のコーヒー?のようなものを手にして夜景を見る。
「明日からは別行動か、そして、明後日には任務開始か、、、」
アリスは不安そうに呟く。
「アリス、わたしがついているので安心してください。」
アリスはまた目を丸くする。
「ラム、、?、、、うん、ありがとう!とても心強いよ!」
(ラム、初めてこんな声掛けしてくれた。本当に人みたい。)
「?」
ユウはその光景をよくわかっていなかった。まだ現代にはそこまで高度なAIは無いからだ。
夜景を見ながらユウは決心する。
(よし、、、明日から、ついに始まるんだ。俺の可能性を試す日々が、、、)
第十八話 完
ここまで読んで頂きありがとうございます。
それぞれの役割、それぞれの覚悟。
ニューラでの日々が、少しずつ動き始めました。




