第十六話 惑星ニューラ
今回は大きな事件は起こりません。
ただ、旅の途中で、心の距離が少しだけ縮まる回です。
静かな時間も楽しんでいただけたら嬉しいです。
ユウは目が覚めた。
(ん? あ、朝日? ここは宇宙じゃ、、?)
ユウが疑問に感じていると
「船内は地球時間なの。」
横からアリスがむくっと起き上がる。
「わ!!ああ、そうか、アリス、昨日寝落ちしてたんだよ?」
ユウは笑いながらあくびをする。しかし、ユウは気がついた。中年手前の自分が、見た目が若いアリスと早朝並んでいることに。
「あ、ご、ごめん顔洗って歯磨きしてくる!ついでにシャワーも!」
ユウは慌てて駆け出した!
(いかんいかん!俺はアラサーとはいえもうすぐ中年なんだ、寝起きなんて一番ヤバいよ!エチケットエチケット!アリスに嫌われたく無い!)
「、、、?、、、どうしてあんなに慌ててるんだろう?、、、逃げられちゃった。」
アリスは惜しそうにユウの背中を見ていた。
ユウが帰ってくると、アリスの姿は無かった。
(さすがにもう戻ったか、、、俺、嫌われてないかなあ、不潔ーーって、、)
「おはよう、よく眠れた?」
真後ろにアリスがいた。
「わ!アリス?!」
「そうそう。こういう反応楽しい」
(からかってるなあ)
二人はまた中央エリアで朝食を取る。
「昨日は、あの、ごめんね、そのまま寝ちゃってたみたい、、、なんか安心したと言うか、そばにいたかったというか、、この500年、流石に少し長くて疲れてたのかなぁ。タイガやミナミと別れたとき、いつもと違う気持ちになったというか、こんなの、初めてで。」
ユウは微笑んで答えた。
「全然大丈夫だよ、俺はこの船の中で唯一の人間なんだし、いつでも頼ってよ」
アリスは頬を赤くしてニッコリ笑う。
「ありがとうユウ。また甘えてしまうかも。」
ユウは食べながらOKのサインをした。
(でもまあ、そうとはいえ、、昨日はたまたま大丈夫だったけど、、、この美女を相手にそんな余裕あるわけねえよ、、頑張るんだ、俺)
(ただ、、アリスも色々頑張ってたんだなあ。任務だもんな。500年も一人で、、、そりゃ神経もすり減るよ、、)
またユウは目頭が熱くなった。
自分を必要としてくれ、親切にされ、親しんでくれる。ユウにとってもアリスはもう大切な人になっていた。ましてやこれから危険があるかもしれないのに、守ると言ってくれた。
(俺のために、万が一には命をかけるってことだよな……エージェントだもんな……)
ユウは真剣な表情になる。
「ねえアリス。俺がアリスにできること、何かあるかな?何でもいいんだ、、、俺ばっかり良くしてもらってるから、アリスの力になりたいんだ。」
アリスは目を丸くして頬を赤くしている。
「そ、そ、そんな風に言われるの初めてだから、、、うーん、そうだなあ、、、一つだけいいかな?」
ユウは頷く。
「ま、また時々、忍びこんでも、、良いかな?、、なんか、昨日凄く安心して眠れた。こんなに安心して眠れたの、初めてだった。」
(まじかーーー!、、、けど、やっぱりそうだよね。人肌を実感しちゃったらそうなるよね。)
恥ずかしながらも、やはりユウはアリスの心情を思う方が優っていた。恋愛としての恥ずかしさもあるが、大切な存在としての愛おしさもあった。
「うん、俺のことは気にしないで、アリスの自由にしてよ!」
ユウは微笑んだ。アリスは赤くなったまま笑顔になる。目には涙を浮かべてうるませていた。
それから、何日か経過。ユウは移動期間中にトレーニングルームで身体評価とトレーニングをしていた。
(ベンチプレスは180キロまでいけるようになった……日常生活上は支障なし……本気出す時だけリミット外れる感じか……)
自動売店にて、ユウはアリスにもらったお菓子を持っていく
「あのー、これの成分よくわかんないんですけど、これに準じたプロテインのようなものって作れますか??」
『近しいものは可能です。承知しました。』
(一応いけるのか、、)
そこで船内のスピーカーにてラムから通信が入る
「ユウ、今のオーダーの発想、理解しました。ユウが求めているもの、おそらく明日到着するニューラで手に入るでしょう。ハンズ博士にも相談してみると良いかと思います。」
「なるほど、相談してみよう。ハンズ博士、、、怖い人じゃ無かったらいいなあ」
「1stやラボメンバーには基本的に無駄な感情を持つものは少ないので安心してください。特に責任者は選別された人たちですのでご安心を」
「ありがとうラム。ほんと助かるよ」
「いえ、お力になれて何より。では失礼致します。」
通信は切れた。
(こういった移動中にも強くなるために、どうすれば良いか聞いてみよう)
第十六話 完
ここまで読んで頂き、ありがとうございます。
移動中の何気ない日々も、物語にとっては大切な時間だと思っています。
次回から、物語はまた一歩前へ進みます。




