第十四話 ラム
ワープ航行が始まり、ユウたちはついに地球を離れます。
新たな仲間、新たな居場所。
これは戦いの前の、ほんのひとときの“日常”の物語です。
第十四話「ラム」、どうぞお楽しみください。
フィング博士やラボのメンバーと別れの挨拶を終えて、宇宙船内へ戻る。
「これからワープに入るから、もう地球も見納めね。」
「うん、いよいよって感じだ。」
(タイガ、ミナミ、行ってきます。)
ユウはその辺の壁にしがみつく。
「ん?ユウ、何やってんの?」
「だってほら、ワープっていっても、超高速で動くんでしょう??掴まらないと!」
アリスはクスッと笑う。
「ごめんなさい、説明すれば良かったね!大丈夫、ここにくる時も大丈夫だったように、Gキャンセラー・システムがあるから、普通に過ごしてて大丈夫よ。」
「あ、そうなの?、、、」ユウは顔を赤くする。
「ワープ中は察しの通り、超高速で動いてる。けど、まる一週間ほどはかかるかな。次に行く星は、、、」
「それについてはわたしから説明致します。」
「ん?ああ、AIの、、、なんだっけ?」
「RA-M type Uです。」空中のスクリーンで文字を出す。
「な、長いなあ、、なんて呼んだらいいのか、」
「ユウが好きなように呼んでいいよ?」
アリスは笑顔で微笑む。
「ほんとに?、、じゃあ、ラム。って呼ぶね」
「承知しました。ユウ様。ではわたしはこれからラムと名乗ることにしましょう。」
「ラム、良いねそれ!わたしはアリス!ふふふ。また家族が増えたね。」
そう言って、アリスは笑う。
ユウもそんなアリスの笑顔を見て微笑ましく感じている。
ワープ体制に入り、あっという間に地球は見えなくなった。周囲は光の線しか見えない。
(こ、これがワープか、、全然実感がないや)
「話をつづけます。ワープは、既知の座標同士を結び、その距離そのものを圧縮する技術です。
例えば、A地点とB地点がこうなっているとします。時間は1時間かかります。そこの距離を一気に近づけると、Bにはどれくらいの時間で行けますか?」
ラムはユウへ質問してくる。
「えっと、1秒もかからず到着します。」
「素晴らしい、さすがユウ様。ワープはその座標間をひたすらに繋げようと短縮させ続ける動きをしています。そこにできた空間に向かって全力で進む。これがワープです。」
「なるほど、これなら移動はすぐだ。これがないと到底辿り着けない。」
「その通りです。人類は寿命の壁を突破したことがきっかけとなり、地道に何万年もかけて宇宙を探索しました。そこで各所に座標を作り、ある程度どこへでも行けるようになったのです。」
「果てしない道のりだなあ、、、そんな苦労の上に。俺たちはいると言うことか。」
アリスはユウの手を引く
「さあ、まだまだ時間はあるし、船内を案内するね!」
「あ、アリス様、それならモニターを?」
「ううん、いいの、直接行って見て回るから!それと、様、はつけなくて良いよ。」
「あ、俺も!」
「かしこまりました、いってらっしゃいませ。アリス、ユウ」
「いってきまーす」
アリスは終始ニコニコしている。
「ラムは、人工知能生命体だけど、なんか、やっと仲間になったと言うか、やっぱり、名前って大切だね。親近感っていうのかな?
それに、今まで誰かと任務中に過ごすことなんてなかったから、なんか嬉しいな。」
「名前は確かに大切かも。名は体を表すじゃないけど、その人個人、自分だけのものを持つって大事だと思う。」
「だから、特別な感じがするのね。」
二人は移動サークルで船内を移動する。
◆
船内は、中央にイスやテーブルなど、まるで高級ホテルのロビーのような光景が広がる。しかし、置いているものは家具というより、丸みを帯びたテイストでほとんどが白をベースとした近未来的なものであった。
「ここがメインフロア!本来は船内に入るとここへくるけど、わたしたちは出発が先だったから操縦ルームへ直接行ったの。」
「ここではあそこに飲食スペースがあって、好きなものを注文して食べられるようになってるの。メニューも豊富だし、自分がどんなものを食べたいかを伝えると、栄養計算なども含めて作ってくれる。全部自動で。」
その後、食材を人工栽培する栽培ルームや居住区もある。
居住区は、中央に公園のようなスペースがあり、それを囲むように部屋が分かれている。
居住区の外れには、メイン居住スペースがあり、船内関係者やこの船のマスター権限者が住んでいる。アリスの部屋はこのマスタールームだ。
「ここがわたしが生活するところー。なかなか広くて快適なの!」
「凄いなあ。船の中はマンションやショッピングモールみたいな感じだね。」
「あ、俺はさっきの居住区のどこか借りられるのかな?」
「うん、もちろん!ユウのお部屋はここだよ?」
アリスはニコニコしている。
ユウは赤面する
「こ、こ、こ、ここーーー?!」
「嫌なの、、、?」
アリスはしょんぼり体を曲げて上目遣いにユウを見る。
「え?!い、嫌じゃないというか、そのぉ、、、」
アリスはクスッと笑う
「アハハ、冗談冗談ー。」
ユウはほっとする。アリスほどの美人と過ごしたことなどないからだ。
「けど、マスタールーム内だよ?ユウが暮らすのは」
そう言ってアリスはマスタールーム内を案内した。
先ほどの部屋とは別に、トレーニングルーム、趣味の部屋、あと、空き部屋も、全て白のテイストの空間がある。一緒に暮らすとは言っても、マスタールーム自体、何人かで暮らせるような構造になっていた。
「す、凄い、ごめん俺、なんか勘違いしてたよ!」
「ん〜?何を勘違いしてたのかな?」
アリスは意地悪そうな顔でユウを見る
「か、からかわないでよ、アリスー!」
ユウは赤面しながらあたふたしている。
アリスはお腹を抱えて笑う。
ラム以外とは会話もせず、地球でも他人とは深く関わらないよう努めていた。
ユウたちと、わずかではあるが共に過ごしたことが、アリスにとって人らしさを得るものとなっていた。
(アリス、ミナミらと出掛けるようになってから本当に笑顔が増えてきてる、、、可愛い)
その後、アリスとユウは食事をしながら目的地について話すのだった。
第十四話 完
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
今回は戦闘や大きな事件はありませんが、
「名前を持つこと」「誰かと過ごすこと」が
アリスやラムにとって、どれほど大切かを描いた回でした。
次回から、いよいよ新たな星での物語が始まります。
引き続き、お付き合いいただけると嬉しいです。




