第十一話 旅立ちの日
いつも読んでいただき、ありがとうございます。
第十一話「旅立ちの日」です。
ここまで積み重ねてきた日常が、ひとつの区切りを迎えます。
どうか最後まで、見届けていただけると嬉しいです。
ミナミはユウとの出会い全てを話し終えた。
アリスは途中こそ泣いたが、最後は終始微笑んでいた。
「ユウとミナミにこんなドラマがあったなんて、、、話してくれてありがとう」
「ちょっと恥ずかしかったんだけど、上手く話せたかなあ、、、ビジョンは見えてたと思うから、ちゃんと伝わったのかな?」
アリスは静かに頷いた。
「ユウは、"こんな自分でも誰かの役にー"なんて、言ってたけど、すでに誰かの大切な人になってた。」
「そうだよ、謙虚過ぎて、なかなか気づかないんだー」
その後も、ユウとの思い出話をアリスに伝える。
「タイガさんは、これからはわたしが支えていかなくっちゃ、今度はわたしが任せられる番」
「そういえば、タイガ、ナオにそっくりだったね、正直ここまで似てる人いるなんて、びっくりした。、、、」
ミナミは少し顔を赤くする。
「そうなんだよぉ、初めて見た時はびっくりしちゃったぁ。だからかなあ。もちろんユウさんの親友ってのもあるんだけど、こう、、今度は成長したわたしを見せるぞーって、、思っちゃって、、違う人なのに、つい重ねちゃって」
ミナミは舌を出す。
「あ、、、」(ユウにそっくりだ)
「ん?なあに?」
「やっぱり、愛弟子だなあって、思っただけ」
「えー、どういうこと〜?」
「内緒♡」
その後もミナミは、ユウとの思い出をアリスにたくさん聞かせた。
ミナミとアリスは残りの期間で良く遊びに出掛けていた。もうすっかり仲良くなっていた。
街に出ればたいていの人が振り向く。なんせ、モデル級が並んで歩いているからだ。
たまにユウが同行するが、そのときは少し違う反応がある。
(なんか、やけに周囲の人から舌打ちされてる気がするんだよなあ。まあ、理由はわかるけど。)
「あのぉ、お二人さん、俺を挟むように歩くの辞めてもらっていいですかねえ、、、背も低いし、捕まった宇宙人みたいになるよ。、、とくに、ミナミ?腕組むの辞めた方が、、」
ミナミは頬を膨らませる。怒りのサインだ。
「なんでダメなんですか??弟子が師匠を慕うのはいけないことなんですか??」
アリスも横目に見る(カップルというより、飼い主に甘えてる猫のように見えるのが。また可愛い。)
「ま、まいったなあ、、、」
後でそれを話すとタイガは大激怒
「ずりぃ!お前だけずりぃぞ!ふんがーー!」
日常は穏やかに過ぎて行った。
◆
ユウは全ての身支度を終えた。
約束の場所は展望台
3人は展望台へ向かう。
「さあ!タイガさん!しっかり見て登ってくださいね!」
「お、おうよ!」(そんなあからさまに言われるとなあ、、こっちが恥ずかしくなるぜ、、)
倉庫上にはすでにアリスがいる。
「お待たせアリス、、、」
今日は風が少し吹いている。
タイガは胡座で様子を見ている。
「じゃあ、行こっか。。少しびっくりすると思うけど、安心して。みんなに害はなし、みんな以外には見えないから」
そういって、アリスは腕からモニターを展開して操作する。
一同「!!!!!!!」
上空を見ると、巨大な円盤が。何やらところどころ光っており、一見星の光と錯覚する。
「うおお、すんげえなあ!」
「これが宇宙船、、すごい、、映画と同じだあ」
タイガとミナミは口を開けてただただ驚いている。
「、、、、、これに、乗っていくのか、、想像よりもすごいや」
倉庫へむけて光がさす。4人を取り囲むように。
「みんなありがとう、友達になれて良かった。ユウは、わたしが責任を持って守るからね。」
アリスはミナミとハグする。
「ミナミ、、元気でね。タイガと仲良くね」
小さく囁く。
「ぬおおおお!」タイガは立ち上がろうとする。
(ま、まさか、、、アリスとハグしたいのか、タイガ)
一同「タイガが立った!(エロなしで)」
「ぐぬぬぬ、クララが立ったみたいに、、言うんじゃねえ〜〜!」
ミナミはハッと気づく。
「た、タイガさん!頑張って!ほらこっちです!アリスさんと最後かもしれないんですよ!」
「く、、、くっそお、、」タイガは足をプルプルさせながら歩いていく。
「こ、こうなったら裸にでもなんでもなるしか!」
ガシ
ユウは呆れた表情でミナミを静止する。
「さすがに裸はまずくない?」
ミナミは赤面する。
「で、でも、エロ無しじゃ、、」
心配そうにタイガを見る。
「タイガーーーー!こっちこいー!根性見せろ!」
ユウから今まで聞いたことないような声、たくましい声だった。
ドスドスドスドス
タイガは根性を見せて3人の元へ倒れ込むように到着する。
「うわ!いけねえ!」タイガは足がもつれてダイブする。
3人がタイガを抱き抱える。
ユウ、ミナミは揃って声が出る
「転かすかよ!」
ガシっと両側から二人が支え、声を揃える。
二人は顔を見合わせる。
「任せとけ、、相棒!」
ミナミはユウに対してニカっと笑う。
「泣かせるなよ、、任せた」
と、同時に
「ん?んんんん?」(この柔らかい感触はなんだ?)
タイガは正面にいたアリスの胸元にいた。
(あ、タイガ。やっちまったなあ)
恐る恐るユウはアリスを見る。
アリスはタイガを引き寄せ胸の中で抱きしめる。
「よく頑張りました。ミナミをよろしくね。」
(ぬおおおあお、なんという至福!)
その途端に、スッ。
タイガは無言で直立する。
足の震えは無く、余裕のようだ。
「アリスちゃん、ユウをよろしくな。ユウ、アリスちゃんに迷惑かけんじゃねえぞ?、、あと、ぜってぇどんなことがあっても諦めんなよ!お前なら出来る!」
「、、、タイガ、、、よくキマってるが、、その、なあ、アリスの胸のおかげで立ててるのわかってるから、せっかくの感動が、、」
「バカ!!言うんじゃねえー!!」
そっとアリスを見る。
「うん、全部知ってるよ。でも、本当に感謝してるから、つい抱きしめちゃった。」
アリスは舌を出して、笑顔になる。
3人(きゃ、きゃわいいいいいいい‼︎‼︎‼︎)
「じゃあ、、行こっか、ユウ。」
アリスとユウはふわっと宙に浮いた。
「わっ!浮いた?!」
ゆっくりと宇宙船へ向かっていく。上空に向かいながらユウは叫んだ。
「みんな、、みんなー!ありがとうー‼︎
ミナミー!タイガをよろしくなー!ナオの分も幸せになれよー‼︎
タイガー!、、、、いままで、ありがとな、、」
「あん〜?聞こえねえぞー?!」
「ありがとなー‼︎‼︎」
「ユウーーー!」
(お!?呼び捨て??)
「ありがとうー!わたし頑張るからー!だーーいすきー‼︎」ミナミは両手で投げキッスして手を広げる。
「俺もだぞユウーーーー‼︎」
(う、お前はいいよ(笑))
「じゃあなーー、みんなー!!また会おうなー‼︎」
そう言って、ユウとアリスは宇宙船へ姿を消した。
上空でキラキラと円盤から光を放つ。
その瞬間。とてつもない速さで空へと消えて行くのだった。
タイガとミナミはしばらく空を見上げて唖然としていた。わかってはいたが、想像を超えるものを見たからだ。
「うお?!」タイガの足が限界に来た。
「危ない!」ミナミは少し反応が遅れ、もつれるように倒れた。
二人は大の字になり、空を眺めている。
「すげえ、本当にいっちまった、、」
横を見ると、手で顔を覆い、ミナミが泣いている。
タイガはムクっと起き上がり、ミナミの頭をガシガシ撫でた。
「聞いたぜ?ユウとのこと。色々あって、こっちきたんだって?」
「、、、うん、、」
「こらから、よろしくな!」タイガはニカっと笑う。
ミナミも起き上がり、笑顔で答える
「うん!、、任せろ、相棒!」
「は!まるでユウみてえだな!」
「ふふーん、だってわたしは、だーいすきな、ユウの愛弟子ですからね!」
そう言ってミナミもニカっと笑う。
(ん?、、あれ?、なんだこれ?なんだよこのモヤモヤは?、、もしかして俺、、?!)
タイガは空を見上げた。気がつくと、ミナミに対する気持ちが芽生えていたことに気がつく。
(ぜってぇ、負けねえからな、ユウ!)
「ん?何か言った??」
「な、なんでもねえ、、、!」
二人はしばらく空を眺めてから、立ち上がる。
明日からは、また地球の普通の生活だ。
だが、どこか違う。世界は静かに動き始めている。
「さあー!今日もいきますよ!タイガさん!」
「う、きたー!っしゃ!やるぜ!」
こらからも地球は変わらず時を刻む。
ユウの本当の物語は、これから始まりを迎えるのだった。
第十一話
〜 旅立ち編 未知との遭遇 〜 完
ここまで読んでいただきありがとうございました。
旅立ち編が終わり、ユウの旅が始まりました。
また次話も、よろしくお願いいたします。




