第一話 はじまりと出会い 〜旅立ち編 未知との遭遇〜
はじめまして。hanaXIIIです。
本作は、人としてなにも持たない者が、未来を切り開いていく物語です。
SFや都市伝説が好きで、そのスケール感を取り入れています。
わたしたちは日々の学校、仕事、家族、そして恋愛の中で、"自分ってなんて惨めでちっぽけなんだろう"と感じること、多いと思うんです。
そんな方々に、少しでも楽しんでもらえる作品になればと思い、
この作品を綴りました。
よろしければ、最後までお付き合いください。
人は皆、何のために生まれて、何をして生きていくのだろう。
使命がある者。
役割を持つ者。
ただ流される者。
そして、それすら与えられない者もいる。
私はもう、五百年以上――この星を見つめ続けている。
だが未だに、“覚醒個体”は確認できていない。
私は、夜の展望台に立っていた。
街の灯りが、星の代わりに地上を埋め尽くしている。騒がしく、無秩序で、それでいてどこか美しい世界。
耳元で、微かなノイズと共に通信が入る。
『……No.S。状況を報告しろ』
私は視線を夜空から外さないまま応じた。
「いえ、まだ確認できていません」
『……五百年だぞ』
「承知しています」
一拍の沈黙。
その向こう側にいる“彼ら”は告げる
『もう成果は期待できないという意見が大半だ』
「……」
『だが、働きは認める。猶予を与えよう』
「……どれほどですか」
『一年だ。その間に結果がでなければ――帰還せよ』
帰還。
その言葉が持つ意味を、私は正確に理解している。
「……了解しました」
通信は切れた。
私は、ため息をつく。
「…………」
ふと、自分の胸元を見る。
そこに刻まれているはずの識別記号――
【A.R.I.S】
それが、薄暗闇の中に、ぼんやりと浮かぶ。
Agent typeR1 No.S の略
本来、それが私の名だ。
だが────
「……最後の一年か」
私は小さく呟き、展望台から夜景を眺める。
この星に期待していた。
どこかで、まだ――
◆
「おはようございます」
自動ドアを過ぎ、ロビーでスタッフたちに謙虚に頭を下げる。
この癖は、もう何年も前から抜けない。
天乃総合病院。
俺――ユウの、一日の始まりはここからだ。
「おはよう、神城先生!今日も早いね」
「おはようございます。あ、先生は勘弁してください、ただのセラピストですから」
少しいじられるような感じで、受付の女性といつものように挨拶を交わす。
俺は神城右(通称 ユウ)
身長は150センチ。
体は細く、鏡を見るたびに「よくこれで生きてるな」と思うくらい華奢だ。
目は少し斜視があり、まっすぐ人を見るのが苦手だ。
そのせいで、昔から「変な顔」と言われることも多かった。
でも――そんなことはもうどうでもいい。
俺は今、人の役に立つことが出来る。
「よし、今日も一日全力でやるか」
小さく呟きながら、エレベーターのボタンを押した。
静かに閉まるドアの向こうで、
俺はまだ知らない。
自分がこの星を離れることになるなどとは。
そして、そのきっかけが――
あの日、あの場所で、
ある一人の女の子と出会うことからはじまっていく。
♦︎
とある週末
ここは人が少ない。
だから俺は、この場所が好きだ。
展望デッキの、さらに奥。
誰も入らないコンクリートの巨大な倉庫。
裏手に、古びた脚立が置かれている。
一番高い場所へ。
そこが、俺のとっておきの場所。
ギ…と軋む音を立てながら、ゆっくりとよじ登る。
手のひらに、冷たい金属の感触が残る。
倉庫の上に出ると、視界が一気に開けた。
夜の街。
遠くの海。
そして、その上に広がる、数えきれないほどの星。
(この国の西のエリア、島国のとある県 波は穏やか、海にはいくつも離島が並ぶ、神の名を持つ俺の故郷の地、、は、かっこ良く言い過ぎか)
──いつもと同じ、はずだった。
だが、その端の方に。
人影が、あった。
ひとりの女性が立っている。
夜空を見上げ、まるで時間が止まっているかのように、微動だにせず。
「……誰……?」
思わず、小さく声が漏れた。
風が吹く。
彼女の髪が、わずかに揺れる。
それでも、振り返らない。
まるで、俺がそこにいることなど、
最初から知っていたかのように。
すこしの沈黙
「……星は、好きですか?」
不意に、声が落ちてきた。
とても静かで、
なのに、はっきりと耳に残る声だった。
「……え?」
ようやく、彼女がこちらを見る。
その瞳は、夜空よりもさらに深く、冷たく、澄んでいた。
「いつもここから星を見ているの?」
「……え?あ、はい、週末はだいたい……」
「ここからの景色はとても良い、故郷を思い出す。」
「故郷、、ですか?」
「ごめんなさい、あなたの場所を邪魔してしまった。」そう言って、彼女はこちらに近づいてくる。すれ違った後、意を決して
「あ、俺、ユウって言います。あなたもここから良く夜景、みるんですか?ぜ、全然邪魔じゃないです!」(だーー、これ、完全に引き留めちゃってるよ、ナンパだと思われたらどうしよう!)
ユウが焦っていると、ピッという音がなったような気がした。その瞬間、彼女の腕から小さく「ARIS」と書かれたスクリーンが浮かび、すぐ消えた。
と、同時に彼女は何か小さく呟く。
それだけ言って、
彼女は立ち止まり、また、夜空へと視線を戻した。
「あ、アリスっていうの?君の名前」
「・・・・・そう、アリス。」
そう言って彼女はこちらをじっと見つめる。
しばらく沈黙の後
「もしあなたの力がこの星の外で必要とされるなら、どうする?」
と、こちらを真剣な表情で見つめて言う。
「え?この星の外??」
突然言われ、ユウは何が何だか分からずしどろもどろしている。
「もしあなたが構わないなら、、、わたしと一緒に来て欲しいの、この星の外(宇宙)へ」
第一話完
読んでくださり、誠にありがとうございます。
物語は、ここから少しずつ動きはじめます。
良かったら続きも、ご愛読ください。




