第6話、徴兵令状。
木の上に家が作られている。
シャル殿の家だ。
ちょうど身長7メートルある自分の胸のあたりに床があった。
顔の前にシャル殿が立っている。
「シャル殿が自分の操縦者になるのか?」
「ん? ああ、落ち物は発見者に所有権があるからな」
「それとも、ほかに所有者がいるのか?」
――田中三佐はもういない、日本軍がこの世界にあるだろうか
「いやいない、……わかった、が、一応これだけはさせてくれ」
手のひらを上に向け五指を立てる。
「超高性能3Dプリンター起動」
五本の指の先から光の線が真ん中に集まる。
ジジ・ジジジジ
上から下に光がせわしなく動き、一枚の赤い紙を作り出した。
「日本軍の臨時徴兵令状だ」
「サインしてくれ」
「ほほう、サインするとどうなる」
「日本軍の兵になる」
「ふうん」
シャル殿が少し面白そうだ。
「この世界に日本軍があるとは思えないが念のためだ」
「マキナか、よかろう」
サラサラと名前をサインした。
「歩行戦車に乗れるのは尉官以上だが……」
「せめて操縦訓練は受けてほしい」
「私に九六の操り方はわからん、当然だな」
「では、明日から最初の広場でブートキャンプだ」
◆
大体運動場くらいの広さのある、見極めの広場。
その真ん中に片膝をついて座る。
「本来なら操縦方法は、睡眠学習で脳に直接《《焼き付ける》》のだが……」
「こちらの人間、しかもハイエルフにそれをやると何が起こるかわからないな」
――魔力を持ったハイエルフだ、廃人になるかもしれない
「直接訓練を受けてくれ」
「よかろう」
シャル殿が答えた。
その目の前に、
胸部の前にある回転式のモニターユニットから光が出た。
身長160センチくらいの女性のホログラフである。
豊かな胸部装甲。
スラックス姿の上官の制服。
短い木の短鞭を小脇に挟む。
「気をつけえっ」
「ハートウーマン軍曹であるっ」
「これからお前が言えるのは、イエスマムだけだっ」
「返事はっ」
「イエスマム」
「声が小さいっ」
「イエスッマアムッ」
「私は人もエルフもゴブリンもオーガーも差別しないっ」
「なぜなら等しく価値がないからだっ」
「今お前は一匹のマゲッツ(ウジ虫)にすぎん」
「だがっ、このブートキャンプで少しは使えるマゲッツ(ウジ虫)にしてやろう」
「わかったなっ」
「イエスッマアムッ」
新兵訓練用のブートキャンプが始まった。
「なんだ、何が始まった」
「何をしているんだ」
ホログラフを見て
「光の精霊か?」
ほかのハイエルフたちが集まってきたのである。




