第5話、エルフの里。
白い門を抜けると運動場くらいの広さの広間に出た。
広間を取り囲むように並ぶ木々。
頭上より高いところをつなぐ回廊状の廊下。
回廊には、弓を持ったエルフの姿が複数見える。
前方にもう一つ白い門。
左右には、レイピアを腰に下げたガーディアンゴーレム二体。
上の回廊にはバイザーをつけた二人のハイエルフ。
――見極めの広間か、里にすぐに入れないようだな
その前に、蔦や葉の意匠の入った服を着たハイエルフが立っている。
見た目は二十代半ば。
「シャルル、ソレはなんだ?」
男性の声音から年齢はよくわからない。
シャル殿が軽く頭を下げた。
「里長、泉で拾った落ち物です」
シャル殿がこちらを見てうなずいた。
「はじめまして、九十六式歩行空挺戦車の人工知能です」
――”あなたのお名前なんて~の”というフレーズが一瞬浮かんだが……言うのはやめておこう
「ほほう」
答える里長と呼ばれた男性。
疑ってるのか少し目がほそまる。
「開いて」
「うう、操縦者が見つかるまで毎度辱めを受けるのだな」
パシュン
操縦席を開いた。
「操縦者を募集中だ」
「無人だな、で……」
「九六と呼んでおります」
シャル殿だ。
「……九六は下界から来たのかな」
ざわり
周りのハイエルフが警戒態勢に入った。
ガチャリ
ガーディアンゴーレムがレイピアの柄を握る。
返答次第では里から排除されるのだろう。
「ふむん」
「月が一つしかない世界から」
「ほほう……」
待つ里長。
「……巨大な樹の近くの森で雷に打たれた」
周りのハイエルフがざわめく。
「世界樹の森か」
「里長、もしかして巨人岩のことかも」
巨大な樹、”世界樹”の周りは、強力な聖獣や魔獣がおり、簡単には近づけないと後ほど知ることになる。
「たしかに、落ち物のようだ」
里長が自分の機体に書かれた赤い丸印を見ながら言う。
「でだ、落ち物は発見者のものになるはずだ」
シャル殿が言う。
基本的に、古代遺跡の遺物や宝物などは見つけた者に所有権がある。
「つまり」
「九六は私のものだ」
「シャルル」
――しゃべる装甲巨兵?を手に入れた
「これで下界に降りてもよいだろうか」
「えっと、シャル殿が自分の所有者というか、操縦者に?」
自分が聞く。
「駄目か?」
「いや……」
すばやくシャル殿の全身を探査。
身長や体重など、身体的には適正を満たしている。
「大丈夫だとは思う」
「……とりあえず、里の中に入ることは許可する」
「シャルルの下界に降りて旅をしたいという話はあとでゆっくりしよう」
里長が言う。
「わかりました」
シャル殿が頭を下げた。
もう一つの白い門を開いて里の中に入る。
「下界……ねえ」
シャル殿に詳しく説明してもらわなければいけない。




