第24話、合流。
傾いた平形艦橋。
「砂嵐がさったな、キャリー」
転舵輪の前で、三十代前半くらいの男性が言った。
「ええ、チャールズ」
隣にいる同い年くらいの女性が答えた。
チャールズは、ワイルダーキャラバンの商会長である。
キャリーはその嫁だ。
「カール、すぐに船の上の砂をのけるぞ」
「分かったよ、父さん」
「商船長だっ」
カールが艦橋の後ろに移動する。
カールは、装甲巨兵の格納庫に移動した。
ハンドルを回して金属の扉を開くと、頭をこちらに向け横たわった金属の巨人。
ちなみに、半思考同期型の装甲巨兵だから、通称で、”ジャケット”と呼ばれるものである。
船は約三十度くらい右に傾いている。
その間に、チャールズは艦橋の横の扉から、左に飛び出たウイングデッキに出た。
船の三分の二くらいは砂に埋もれていた。
「あっ」
後部甲板の上に走る折りたたまれたマスト。
マストに人型の巨人がしがみついていた。
「……見かけねえ、装甲巨兵だな」
砂をよけながら甲板の後ろに。
群青色の機体。
「赤い丸のマーク……落ち物か?」
シュシュン
「むっ」
かすかな駆動音とともに、本体に収納されていた首が伸びこちらを見た。
「なにものだっ」
「◆▽※×……」
どことなく無機質な男性の声。
「あれは、西方の大陸語だ」
「ガウ」
きれいな女性の声だ。
外部スピーカーから聞こえてきたのである。
「とりあえず、降りてくれるか」
チャールズが声をかけた。
「わかった」
女性の声が答える。
パシュン
群青色の巨兵の操縦席が前に出た後、下に下がる。
「エルフだ」
身長170センチくらい。
金髪の恐ろしいくらい美人な女性だ。
「獣人もいるぞ」
身長180センチくらいのがっしりした体形。
銀色の犬耳に尻尾。
後部のハッチを開けて、実の弟であるネルソンが出てきた。
「……はじめまして、ワイルダーキャラバンの商会長のチャールズだ」
「ふむん、ガンドーラ台地から来た、”シャルルシャ⤴ラファンシャル⤵シャラ⤴シャルラ”だ」
「ロボ」
「〇◆……▽九十六式空挺歩兵戦車のAI、”學天則Ver・525”だ」
西方大陸語の翻訳に成功。
「???」
「ガンドーラ台地って、”死と絶望の砂漠”の向こうにあるという理想郷か」
「”冥府の砂海”のむこうにあるという?」
「世界樹があるのだろう?」
「そうだ、……”生きては帰さない砂漠”……ではないのか?」
エルフの女性が聞いた。
「ふむ、また古い呼び名だなあ」
「おやじっ」
振り向くと五十代前半の男性が立っていた。
チャールズとネルソンの父のアイクだ。
「曾祖父の時代にそう呼ばれていたよ」
「いや……」
エルフ女性が本を持ってきた。
「下界見聞録か、見せてもらっても?」
チャールズが本を無言で出してくるのを受け取る。
「また古いな。約百年前のだ」
「ビブリオマニアに高価で売れるな」
ネルソンが横から覗いてくる。
「しかも、ルーン文字か……お嬢さん、ほんとに台地の上から来たんだな」
アイクが言う。
「ちなみに、”下界見聞録”は五十年くらい毎に一冊改訂版が出ているぞ」
「な、なんと、この本にあこがれて旅に出たのだ」
驚くエルフ女性。
「ふむ、砂漠の上では助け合いが大事だ」
「一緒に行くかい?」
「わかった」
「ガウ」
「いいんじゃないか」
ガンドーラ台地から来たという不思議な三人組と合流したのである。




