第22話、砂上船。
朝焼けの中、帆がさわさわと音を立てた。
沙漠を行く中型の砂上船。
”ワイルダーキャラバン”所有の商船だ。
前と中央に二本あるマスト。
中央のマストの半ばに小さな見張り小屋があった。
円筒形で丸い窓がついている。
「あ、あれは」
見張り台から双眼鏡で周りを見ていた、十代前半の若い男性がつぶやく。
ガリガリガリガリ
船内電話のダイナモを回し、
「ブリッジ、10時の方向、黒いもやがあり」
艦橋に伝えた。
双眼鏡の中では黒いもやの中、稲妻の鋭い光が宙を走る。
「おやじっ」
「ザザッ、商船長だっ」
「砂嵐だ、大きい」
下を見ると砂を蹴立てて走る砂上船。
流動術式が船体の横にかすかにひかる。
これは砂を水面に変える。
丸みを帯びた平形艦橋の横にある、ウイングデッキに人が出てくるのが見えた。
双眼鏡で黒いもやを見る。
「航路上だな、あと一時間というところか、”アル”、降りてこいっ、こもるぞっ」
「了解」
小屋の扉を開け、マストの備え付けのはしご(コの字のやつだ)を降りた。
「こもるぞっ、マストをたためっ」
「おおっ」
まず帆をたたむ。
次に横のマストを縦に。
その後、二本あるマストが根元から後ろに倒れる。
後部の甲板の上に倒れた二本のマストの固定具に固定された。
甲板の下には交易品が収められている。
「窓をふさげっ」
丸や四角い形の窓の上や横にある金属のカバーを閉じて窓をふさぐ。
「扉を閉じろ」
金属製の扉を丸いハンドルでロックしていく。
真っ暗になった船内にオレンジ色の明かりがともる。
ゴオ”オ”オ”オ”オ”
金属の船体越しにくぐもった風音が聞こえる。
近くに砂嵐が近づいてきていた。
「にいちゃあん」
敷物のひかれた広間で座っていると、膝に五歳になる妹、”ローラ”がしがみついてきた。
ギギギギギイ
ゆっくりと船全体が傾く。
船は半ばまで砂に埋まっていることだろう。
「ローラ、大丈夫、大丈夫」
幼い妹を抱きしめて安心させるように頭をなでた。
その時だ。
ガゴオオン
ミシイイ
何か大きなものがぶつかった後に、しがみつくような音がした。
今いる部屋の上は甲板で倒されたマストが横たわってるはずだ。
「な、なんだ」
そのあと、ぎしぎしとマストが軋るような音が、砂嵐が過ぎるまで続いた。




