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異界見聞録。九十六式歩行空挺戦車、ハイエルフ、フェンリルと異世界を旅する。  作者: トウフキヌゴシ


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第21話、オアシス。

 月明かりに照らされて夜空がきれいだ。

「砂の流れがなくなってきたなあ」

「そろそろ、海砂もぬけたか?」

 落ちてきた宇宙戦艦、文福茶釜ぶんぶくちゃがまから二日移動した。

 二日間、ずっと、”ロボ(フェンリル)”の背中の上だったのだ。

「少しお休み」

「ガウ」

 ロボを人型にして操縦席に乗せた。

 しばらく移動は自分がしよう。

「さてと……」

「目的地はオアシス都市、”ロウラン”だ、本によればあちらだな」

 シャル殿が大体の方位を示す。

「GPSの地図があればなあ」

「まあ仕方がない」


 ウイイイン


 背中の多目的ラッチを開く。


 シュパアアア


 八の字にプロぺラのついた探査用ドローンを前面に打ち出した。

 

  ザッ、ザッ


 と砂を踏みながら進みだす。



「下界見聞録」の内容とドローンで調べながら砂漠を進んで、二週間が過ぎた。 

「むっ」

 飛ばしていたドローンが砂以外の何かを見つける。 

「何か柱のようなものが見えるな」

 操縦席のシャル殿が、ドローンの映す映像を見ながら言った。

 膝に上くらいにある情報モニターだ。

「行ってみよう」

「ガウ」

 テシテシと砂の上を歩いていたロボが答えた。

 近づくにつれて、柱が増える。

「ここが、オアシス都市、”ロウラン”……なのか?」

 崩れた石作りの壁。

 馬車二台が余裕で通れるくらいの石畳の道が奥まで続く。

 所々道は砂で埋まっている。

 周りには砂に埋もれた家の壁。


「この荒れぐあいじゃあ、百年くらい経ってるかもなあ」


 廃墟の街を抜けるとくぼんだ場所に出た。

 小さめな湖くらいの広さだ。

 こわれた洗濯場の後や枯れた木が倒れているところを見ると、

「ここにオアシスがあったんだろうな」

「枯れてるな」

「ガウ」

「あっ」

 シャル殿が驚きの声をあげた。

 そこで、雑嚢の無造作につっこまれていた世界樹の枝が金色に光る。   

「……かすかだけれど水の精霊の気配がする」

「こっち」

 オアシスから少し離れたところまで移動した。

「調べてみるよ」

 両手を地面に、


 ズ・ズ・ズ・ズン


 重振動が複数回、地面に打たれる。

 広域探査モードだ。

「おや、元オアシスをおおう様に岩盤のような反応が」

「岩盤……? 元オアシスの砂地に?」

 地中を岩が動くわけはないのだ。

「ちょっと岩盤を揺さぶってみようか」

「ふむん」

「水が出てくるかもしれない」

「わかった、やってみよう、大地の精霊に助けを求めるぞ」

「ああ」

 大体岩盤の真上くらいに移動した。


 カシャ、カシャ


 と両腕が変形していく。


「超振動破砕砲モード、スタンバイ」

『スーヒモーヴェ』(SUHIMOBE) 

  

 ヴゥゥゥゥゥゥゥ


 砲の前に蜃気楼のような空気の揺らぎ。

 その前に、大地の精霊をあらわす精霊文字が銀色に輝く。

「シャル殿」

「ん」

 操縦席のシャル殿が操縦桿のトリガーを引く。


 ズ、ズドゥゥゥゥゥゥン


 超振動が砂をさらに細かく砕きながら岩盤に向かって進む。

「超振動、岩盤まで到達っ」


 バンッ


 という何故か湿った音がした後、地面が動き出した。


 ズズズズズズ


「地震?」

「いや何かが下から上がってくるような」

 砂が盛り上がり始めた。

「下がれっ」

「ガウ」

 横にいたフェンリル状態のガウと後ろに下がる。

 

 ガキンッ


 砂の中から巨大なはさみ。

「こ、これはっ」


 バサアアア


「か、かにっ?」

 片方の腕が異様に大きい。

 砂の中から巨大なシオマネキが現れた。


 ジャキンッ


「くっ」

 自分が片手を下につけ、後ろにバク転をしてはさみをよける。

 シャル殿の脳内の動きをトレース。


 パイイイン


 着地と同時に左手からメーサーを放った。


 ピシッ


 盾のように受けたかにの腕の表面が少し欠けた。

「効いてないっ」


 バシイ


 ロボの前足の爪の攻撃。

 やはり腕に止められた。

「超振動破砕砲は変形させて貯めないと発射できない」

「シャル殿っ、文福茶釜の上で作ったアレを使ってくれ」

「わかった」

 自分の腰に横向きにパラシュートの布でくるまれたアレ。

 黒曜石の刀だ。

 刃の部分は黒曜石のように波打ち、柄はロープを編み目状に巻いてある。

 忍者刀のように逆手に持った。

「ロボッ、援護をっ」

「ガウッ」

 腕を回り込んで本体を攻撃しようと左右に分かれる。


 ガキン、ガキン


「はやいっ」

 カニが後ろに下がりながらはさみをふるう。

「ガウウッ」

 ロボがはさみに攻撃、腕の動きが止まる。

「シャル殿っ 関節をっ」

「はあっ」


 ザンッ


 むき出しになった関節を一閃。

 黒い刃が下から上へ駆け抜ける。


 ブンブンブンブン

 ザッ


 腕がくるくる宙を舞い、少し離れた砂に刺さった。


 ザザザザザ


 腕をなくしたかには、横はしりで逃げて行った。

「な、なんとか追い払ったあ」

「ふうう」

「ガウッ」


 その夜、シオマネキのハサミのカニ鍋をした。 

 翌日の朝、元オアシスの真ん中付近に水が湧き出ているのを見つけたのである。


「うーん、多分あのシオマネキは、世界樹に創られたんだろうなあ」

 世界樹を守っていたフェンリルのロボのように。

「あー、オアシスの水を止めて人を負い払っていたのか」

「ガウッ」


 旅立ちの前、オアシスはこんこんと綺麗な湧き水をたたえていた。




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