第20話、學天則ver2025。
デザートワームを倒し五階に上がったシャル殿たち。
五階は艦橋のエリアになっていた。
四角い窓が並ぶ手前に、操舵席や通信士席などが並ぶ。
真ん中の席には、艦長帽をかぶり宇宙服を着た白骨死体が座っていた。
「この艦の艦長だ。 異世界でこの艦と共にしたんだろう」
「うむ」
「ガウ」
シャル殿とロボが敬礼をしてしばらく黙とうした。
「でどうするのだ?」
シャル殿が周りを見渡す。
静まりかえった艦橋だ。
窓の外の夕日があたりを赤く染める。
「ふむ、ネットワークサーチ……」
「……おお、百目鬼ネットワークを発見」
「それは?」
「日本軍の公式のネットワークシステムだよ」
「個々が高性能化しすぎたPCをお互いに見張りあうとか何とか」
――百目鬼の目で
「つないでみるよ」
ブレスレットコマンダーが一瞬点滅する。
次の瞬間、艦橋中の計器が光りすぐに消えた。
天井の斜め上につけられたメインモニターに文字が出る。
ジブンハ、ガクテンソク、ver2025
サイゴノデンリョクデ
データヲウツス
「あ」
ブレスレットコマンダーにデータ受付の<YES、NO>の選択が出た。
「YESでいいかな」
シャル殿に確認をした。
「ああ」
YESを選ぶとメインモニターにバーが出て減り始める。
約二分でデータの受け渡しが完了した。
アトハ
マカセタ
戦艦のメインAIである、”學天即ver2025”は完全に沈黙した。
「もう日が暮れる、一気に氷点下まで下がるぞ、急いで帰ってきてくれ」
「了解だ」
「ガウ」
シャル殿とロボが急いで帰ってきた。
夜になった。
シャル殿は、暖房のきいた操縦席内で、席をフルフラットにして横になっている。
毛布を首まであげた。
ロボは、本来のフェンリルの姿になって自分の足元で丸くなっていた。
「ふむん」
受け取ったデータを解析した。
「で、なにが分かったんだ」
横になっていたシャル殿が上半身を起こす。
全周囲モニターには外の景色。
満天の星空だ。
シャー〇ック〇ームズの寓話のようにテントを盗まれたわけではない。
「ガウ」
ロボが耳を立てた。
「……そうだな」
自分はコンコンと甲板を指でたたく。
「まず、この戦艦が自分のいた世界から約百年後のものだということだ」
「ほほう、未来の船ということか」
「そうだ」
「そして、ワープ航法を装備していた」
「ワープ航法?」
「星々を渡る術だ」
「ふうむ、世界樹を切り倒さなくても宇宙に行けたのか」
「ああ、まあ前の世界には世界樹はなかったしな」
「そうか」
「で、反物質を使った空間歪曲型のワープだ」
「?」
「時空……世界をゆがめて渡ることだよ」
「で、全然完成してなくて、ワープ三回に一回爆発していたみたいだ」
シャル殿が艦尾の爆発跡を見る。
「どうやら、遺書を書いて、二人以上子供を作らないと艦に乗せてくれなかったらしいな」
確実に《《戦艦の乗組員の数だけ人口が減るからだ》》。
「そうか、まるで巨大な棺桶のようだな……」
シャル殿がしみじみと言った。
――空間歪曲と爆発の結果この世界に落ちて来たんだろう
「この世界と元の世界の境は、紙一枚くらいの厚さしかないんだろうなあ」
「……なあ、學天則とはなんだ?」
シャル殿が少し眠そうだ。
「ん、昭和三年にロールアウトとした東洋初のロボットだよ」
「ふふふ、自分もこの艦のAIもその子孫さ」
――最後には意志を持ち、帝都を救ったといわれている
「……そうか……」
シャル殿が半分意識を失いながら言った。
「……おやすみ」
シャル殿に、TENGAのロゴの入ったアームで毛布を掛けた。




