第17話、海砂。
「まだまだ流砂が続くなあ」
広い範囲で砂が流れている。
ところどころ渦を巻いて、まるで砂の海の上にいるみたいだ。
「ロボは大丈夫か?」
シャル殿が心配した。
今は、外気温が50度を超える昼間。
自分は、ドラえ〇ん方式で進むフェンリルの背中にしがみついている。
ドラえ〇んは、足が地面から少し浮いていて靴を履く必要がないのだ。
「地球破壊爆弾を装備した未来からの刺客。 耳に欠かんを持ち一小学生の未来と日常を破壊したと過去の記録があるなあ」
流れが見えるくらいの流砂である。
落ちたら確実に沈んでしまうだろう。
「ホバーユニットが欲しいなあ」
小さくつぶやく。
「ああ、本には、”海砂”と書かれてるな」
シャル殿が、”下界見聞録”を開いた。
寒さはともかく暑さには弱いフェンリルだ。
はっはっ
と苦しそうに息を吐いている。
「どこかに休憩するところがあればいいのだが」
しばらく進むと巨大な渦があった。
渦の向こう側が見えない。
その真ん中に四角い建物のようなものが見える。
「何だろう、行ってみようか」
「そうだな」
「ガウ」
大きく波打つような渦の上をロボが早歩きで進む。
ペペぺ
時たま、足に跳ねてきた波の砂を払った。
「これは……」
「金属製の建物か?」
「ガウウ」
近づいた。
高さは二階建てくらい。
半ば砂に埋まっている。
長さは、200メートルくらいか。
「むうう」
壁に書かれている赤い丸。
色あせた群青色の壁に白い文字で、”ぶんぶくちゃがま”
と書かれていた。
「落ち物のマークだな、知っておるのか?」
レースクイーン姿のシャル殿が聞いた。
白いハイレグ水着に黒字で、”黒須重工”と書かれていた。
大きめのアンブレラは閉じている。
「……でこの格好はなんだ? パイロットスーツではないのだろう」
ドカッ
ちょうどよい大きさの胸の下に両腕を組み、細くて長い両足を組んで操縦席の情報モニターの上に放り出した。
絹糸のような金髪を、緩く三つ編みにして左肩から前に垂らしている。
大変美しいものだ。
「ふむん、レースドライバーや観客の士気を向上させる役割を持つ、コンパニオンガールの衣装だな」
「……ふん、どうせこの格好をする意味などないのだろう」
ぴゅ~ぴゅ~~
自分は、下手な口笛でごまかした。
「で、日本宙軍の宇宙戦艦に、”文福茶釜”のデータはあるんだが、形が違うなあ」
――もう少し小さかった。 ちなみに文福茶釜は、はるか昔の偉大な精霊獣の名らしいがどのような姿だったかは失伝している
「さぞや偉大な姿だったのだろうなあ」
「とりあえず、この上で休憩しようか」
「ガウ」
ロボは自分を背中に乗せたまま、トントンと壁をけり戦艦の甲板に上った。
外の気温は五十度近い。
すぐに人型になりクーラーのきいた自分の中に入った。
「ええい、せまいわっ」
ドガッ
人型のロボの六つに分かれた腹筋にシャル殿がひじを入れた。
……いつから人型のロボが服を着ていると錯覚していた……!?




