第13話、フェンリル。
万物の根源であるマナ。
古の東方の言葉で間那と書いた。
間を埋める那由他(無限)なものという意味だ。
上位マ法生物は、万物の根源であるマナを直接体に取り込むことができる。
普通の生物は、
植物など光と水を使いマナを物質に変える、”生産者”。
植物を食べる草食動物や肉食動物などの”消費者”。
カビや菌類の死体を分解する、”分解者”。
に分けられる。
フェンリルである、”ロボ”は上位マ法生物である。
周りから直接マナを取り込むため食事は必要ない。
ハイエルフも体内のマ力が多いため小食である。
◆
自分は、ロボをハイエルフの里につれて帰っていた。
「よ~し、取ってこ~い」
ブウン
約2メートルくらいの長さのH型の鉄骨を投げた。
「ガウッ」
ロボが一目散に鉄骨を追いかける。
「ちょっ、待っ」
うぎゃあああ
ガツッ
鈍い音を出しながら空中で鉄骨を取った。
くわえて帰ってくる。
「よくとった、よ~しよしよし」
ワシワシと全身をなでる。
キュウウン
気持ちよさそうになくロボ。
尻尾を全開で左右に振った
「巨大な尻尾があああ」
ぎゃああああ
「よし、もう一度だっ」
鉄骨を投げようと振りかぶる。
「ちょっと待てっ!!」
「ん?」
足元を見ると仁王立ちのハートウーマン軍曹。
「貴様、ここで何をしているっ」
「?」
「ガウ?」
小首をかしげる歩行戦車とフェンリル。
「愛犬?と遊んでます」
「っ、周りを見てみろ」
ハートウーマン軍曹の額に青筋が浮かび上がった。
「あ」
旧見極め広場、現訓練場に横たわるハイエルフたち。
死屍累々《ししるいるい》である。
走ってきたロボにはねられたのだ。
さらに、足元にはジョギング中に尻尾に薙ぎ払われた集団が倒れている。
「どこかよそでやれっ」
ハートウーマン軍曹が大きな声で言う。
「いや、里の外は木で狭いし、他に広い場所はない……」
「ど・こ・か・よ・そ・で・や・れっ」
「イ、イエスマアムッ」
一台と一匹は尻尾を巻いて逃げ出した。
「しかし、場所がないなあ」
残念ながら、ハイエルフの里は7メートル近い狼を飼うようには作られていないのである。
「小さくなったり出来ないかなあ」
――元の世界の”軽い小説”に出てくるフェンリルの定番だよね
「ガウッ」
キリッとロボが表情を引き締めた。
ロボの体が淡く光はじめる。
「こ、これは、物質がマナに変換されるときの、”マナ変換発光現象”じゃああああ」
《《通りすがり》》のハイエルフのマナ研究者が大声で叫んだ。
「うわっ」
――びっくりしたあ
通りすがりのマナ研究者に気を取られていると、ロボが大型犬サイズまで縮んでいた。
「……もしかして、人型にもなれる?」
恐る恐る聞くと、
「ガウッ」
また、”マナ変換発光現象”を出しながら人型になった。
「……お約束やないか~い」
チンッ
通りすがりのマナ研究者と(わざわざ、精密作業用アームを両脇から出して)赤い ワインの入ったワイングラスを合わせた。
さすがに、通りすがりのマナ研究者は、”ひ〇ちカッター”はしてくれなかった。
閑話休題。
銀色の犬耳に犬尻尾。
身長190センチ近い筋骨隆々の美丈夫が立っている。
「ガ、ガウ、ガ、ヒ、ヒトノ、スガたをとるのははじめてで」
「うまく、はなせない、です」
美丈夫もといロボがしゃべる。
その時だ。
光の収束とともに、ハートウーマン軍曹があらわれた。
身長160センチ、豊かな胸部装甲がゆれる。
彼女はもと訓練用のホログラフ。
いまは光の精霊に進化していた。
ちなみに、元の世界の一神教のソレと同等の存在だ。
「ほほう……」
人型のロボを頭の上から下まで無遠慮に見るハートウーマン軍曹。
圧倒的強者の前で、耳を伏せ尻尾を丸めるロボ。
下腹部に目が留まる。
「なかなか立派なものをぶら下げてるじゃないか」
彼女の男性の好みは筋骨隆々の男性。
いくら鍛えても細マッチョどまりのハイエルフの男性には、興味(食指?)がわかないのだ。
ニヤリ
「キャ、キャイン」
「ハ、ハートウーマン軍曹」
自分が精密作業用アームを前に出した。
「どれ、一つ、味見をしてやろう……」
手を前ににじり寄る光の精霊。
「「ひっ」」
「あっ、ハートウーマン軍曹っ」
後ろからシャル殿の声が聞こえた。
「むっ、何だ」
「聞きたいことがあるんです」
「ふん、わかった、また今度な」
「実は、この前、里に設置された《《大和型46サンチ主砲》》について……」
シャル殿と二人で話ながら去っていった。
「た、助かった」
「キュウウン」
「里では人型はなるべくやめよう」
こくこくとうなずく全裸のロボである。




