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九十六式歩行空挺戦車、ハイエルフと旅をする。  作者: トウフキヌゴシ


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1/18

第1話、落雷。

 赤と青の二つの月。

 緑豊かな森林。

 木々の間に岩のようなものが立っていた。

 高さは4メートルくらいか。

 表面にびっしりと茂った苔が、()()が長い間ここにいたことを物語っている。


 元の世界で()()は、”九十六式歩行空挺戦車”、と呼ばれていた。


 森林の天気は変わりやすい。

 快晴だった空が一転、黒い雲に覆われる。


 ゴロゴロ、ピシャアアア


 それは偶然の産物だ。


 ()()に落ちる雷。


 苔の一部が吹き飛ばされる。

 群青色の機体に赤い丸印がついていた。


 パリパリパリイ


 表面を走る小さな稲妻。

 背部バックバックの左右に小さなスリットが開いた。

 シュウウウ

 かすかな排気音。

 周りの白い綿毛が軽く舞う。


 

 パチリ

 コックピット内に小さなスパーク。

 ピピピ 

 小さな警告音とともに、操縦席前の、情報集中型メインモニターに明かりがともる。


 メインモニターに、”學天則がくてんそくVer・525”と縦に字が出る。

 その後、小さな表示窓ウインドウがたくさん出てはすぐに消えた。

 赤い背景の表示窓ウインドウが複数残る。


 ――セカンダリPCのアプリに複数の矛盾点が発生。

 ――プライマリPCおよび、人工知能《AI》アプリ、”學天則がくてんそく”起動。

 ――起動完了


 この間、約2秒弱。

 ここに、九十六式歩行空挺戦車が目覚めた。



『搭乗者である、”田中太一三佐”の死亡を確認』

『死因は大量の放射能を浴びたことによる即死』

『死後、五十ジジッ〇×※年と思われる』

 操縦席にはミイラ化した操縦者。

 ヘルメットとパイロットスーツ。


 ・・・・・・


「…………」

 空挺降下用に固定されていた首を解除。

 上に伸ばし周りを見た。 

 クルンと360度回る。

 少し離れたところに見事な大樹がある。

「充電率、10パーセント」

「落雷によるダメージは軽微」

「各部、各関節、時間凍結解除」

 ガクン

 全身に小さな痙攣が起こる。

 シュ・シュウウウ

 かすかなモーター音とともに立ち上がった。

 高さは7メートルくらい。

 森の木々を避けながら大樹の根元に移動する。

「立派な木だ」

 木の根元に人一人、入るくらいの穴を掘った。

 穴の前に膝まづく。

 プシュウ

 操縦席が前に出た後、下にスライドする。

 席内の医療用サブアームで、田中三佐の遺体をゆっくりと穴の中によこたえた。

 本来なら担架やストレッチャーに負傷者を移す機能である。

 また、医療マシンとしての機能もあるのだ。

 土をかけ手ごろな石を墓石として置いた。

 ”銀河”と書かれたタバコに火をつけた。

 線香かわりの紫煙が周りに漂う。






「……さてと、残り5パーセントか」

「水場を探さねば……な」

 膝まづいていた体勢から立ち上がった。

 ――高性能集音機作動

「流水音を探知、あちらか」

 水音のほうへ歩き始めた。

 

 

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