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星願未遂  -ふたりの長いものがたりー  作者: つくね
1. あの日、夏の川

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― 妹 ―

【高校1年 春】


 放課後、帰り道を凜がひとりで歩いていると、小さな自転車のブレーキ音が響いた。


「りんちゃん!」


 振り向くと、元気な声とともに、自転車を止めた勇真の妹小学4年生のさくらが笑顔で手を振っていた。


「あれ?久しぶりだね、さくらちゃん」

「ねえ、りんちゃん、最近ぜんぜんうち来ないじゃん」

「えっ」


 凜は一瞬言葉に詰まった。自分でも気づいていた。でも、気づかないふりをしていた。


「前はさ、毎週のように来てたのに。お兄ちゃんとケンカしたの?」


「ううん、そうじゃないよ」

 凜は目を伏せて答える。さくらはその表情をじっと見た。


「じゃあ、なんで?わたしのこと、もう好きじゃないの?」

 凜は慌てて首を振った。


「そんなことないよ。さくらちゃんのこと、大好き。でも」

「でも?」

 凜は少し間を置いて、ふっと笑った。


「さくらちゃんは変わらないね。昔と同じで、まっすぐ」

「当たり前じゃん。わたしはずっと、りんちゃんのこと好きだもん。お兄ちゃんとちがって!」


「え?」


「お兄ちゃんね、なんか最近へんなの。りんちゃんの話、全然しないし。前はもっと楽しそうに話てたのにさ」

「……」

「ねえりんちゃん、ほんとはさ、お兄ちゃんのことキライになったの?」


 凜は言葉を返せず、ただ苦笑いした。まっすぐすぎる妹に、心がチクリとした。


「さくらちゃん、ちょっとだけ大人になったね」

 凜は小さく笑った。すこし寂しそうな顔で。


「ありがとう、さくらちゃん」

「じゃあ、またうち来てよ。お母さんも待ってるし、わたしも待ってる!」

「うん。また行くね」

「やくそくだよ!」


 さくらはもう一度大きく手を振って、自転車にまたがり去っていった。凜はその後ろ姿を見送りながら、小さな声でつぶやいた。


(わたしのほうが、ずっと子どもだね。

本当は行きたいんだよ、でも勇真がわたしから離れてしまって、もう手の届かないところに行っちゃったんだよ)


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