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星願未遂  -ふたりの長いものがたりー  作者: つくね
1. あの日、夏の川

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6/70

― 妹 ―


 春の陽気の中、高校一年生の凜が下校していると、小さな自転車のブレーキ音が響いた。


「りんちゃん!」


 振り向くと、元気な声とともに、自転車を止めた勇真の妹・小学四年生になったさくらが笑顔で手を振っていた。


「あれ?久しぶりだね、さくらちゃん」

「ねえ、りんちゃん、最近ぜんぜんうち来ないじゃん」

「えっ」


 凜は一瞬言葉に詰まった。自分でも気づいていた。でも、気づかないふりをしていた。


「前はさ、毎週のように来てたのに。お兄ちゃんとケンカしたの?」

「ううん、そうじゃないよ」

 凜は目を伏せて答える。さくらはその表情をじっと見た。


「じゃあ、なんで?わたしのこと、もう好きじゃないの?」

 凜は慌てて首を振った。

「そんなことないよ。さくらちゃんのこと、大好き。でも」

「でも?」

 凜は少し間を置いて、ふっと笑った。


「さくらちゃんは変わらないね。昔と同じで、まっすぐ」

「当たり前じゃん。わたしはずっと、りんちゃんのこと好きだもん。お兄ちゃんとちがって!」


「え?」

「お兄ちゃんね、なんか最近へんなの。りんちゃんの話、全然しないし。前はもっと楽しそうに話てたのにさ」

「……」

「ねえりんちゃん、ほんとはさ、お兄ちゃんのことキライになったの?」


 凜は言葉を返せず、ただ苦笑いした。まっすぐすぎる妹に、心がチクリとした。


「さくらちゃん、ちょっとだけ大人になったね」

 凜は小さく笑った。すこし寂しそうな顔で。


「ありがとう、さくらちゃん」

「じゃあ、またうち来てよ。お母さんも待ってるし、わたしも待ってる!」

「うん。また行くね」

「やくそくだよ!」


 さくらはもう一度大きく手を振って、自転車にまたがり去っていった。凜はその後ろ姿を見送りながら、小さな声でつぶやいた。


(わたしのほうが、ずっと子どもだね。本当は行きたいんだよ。でも勇真がわたしから離れてしまって、もう手の届かないところに行っちゃったんだよ)


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