第87章「行方不明と脱獄」
「えぇっ?ケイが昨日の夜から行方不明?!ルナ!どういうことよ!?」
「フィオナ!落ちつくんだ!私もさっきタイガから聞いたところで詳細は知らないんだ!」
3月8日午前9時半。トラモント訓練場では朝からケイ部隊はパニックだった。それもそのはずで無断欠勤などしたことのないケイが何処にもいなかったからだ。そしてケイとルナが話している中、エミリアが会話に割り込む。
「あなた達、そんなの決まってるじゃない。」
「エミリア!あなた何か知ってるの?」
フィオナが尋ねると、ニヤニヤしながらエミリアは答える。
「女の家よっ!!」
『なっ?!?!』
まさかの回答にフィオナとルナは顔を赤面させる。そんなはずはない、そう思いながら2人は必死に否定する。
「ハ、ハレンチなっ!ケイがそんないかがわしいことするものかっ!」
「そ、そ、そうよ!!ルナの言う通りよ!わ、私中学から一緒だけどケイは彼女いないわよ!!」
「ぷっ!あっはっは!!真面目に答えてる!冗談よ!!私も知らないわ!」
『エミリアっ!!』
相変わらずお調子者のエミリアだなと二人は思う中、アランがやってくる。アランはいつも通りの訓練を黙々と始めながら3人に伝える。
「ケイなら心配するな!……今チームシークレットとチームジーニアスがケイの居場所を捜索している。奴らを信じろ!」
「アラン……そうだな。ケイならきっと大丈夫だ。彼は強い!」
「そ、そうね!私達はいつ敵が襲ってきてもいいように今は訓練に集中すべきね!ありがとう!」
一方トラモント場の玉座の間では、緊張感のある空気が張り巡らされていた。今集まっているのは国王とシルファに加え、ケイを除いたサンセットホープスのメンバーだった。国王が不思議そうな表情で尋ねる。
「……ケイはどうした?!居らんのか?」
その質問に真っ先に答えたのはアクアだった。その表情は不安に満ちていた。
「陛下!大変申し上げにくいのですがケイは現在行方不明のようです!」
この発言にロイ、ジョーカー、アイリス、シルファは驚きのあまり目を見開くのだった。どうやら4人も知らなかったようだ。取り乱す4人を国王がみた後アクアにその詳細を聞く。
「……アクア!どういうことか説明してもらえるか?」
「はっ!私はケイ部隊に所属の妹がいるので自然と情報を耳にしたのですが、昨晩の夜よりずっと寮に戻っていないようです。」
アクアが国王に答えた後、シルファが会話に加わる。シルファもアクアと同様、ケイを心配した様子だった。
「お父様!!私は昨日ケイとアクアと21時頃まで一緒でした!私を最後にトラモント城に送った後、ケイの身に何かあったのかと思います!」
「シルファがこう言っているがそれは真か?アクアよ!」
「はい!昨日3人でケイの別荘に行ったのです。姫様の言う通り、トラモント城から寮へ帰るとき何かあったのだと思います!」
シルファとアクアがケイの情報を説明した後、国王は深刻そうな表情でこの場にいた5人に伝える。
「よりによってこんな時に……!!あるいはケイも奴らに巻き込まれたのか?!」
「どうかなさったのですか?陛下!」
これまで静かに聞いていたロイが国王に尋ねる。国王は少しの沈黙のあと、何か決心したかのように話始める。
「皆は北海岸より見える小さな島を知っているか?」
「……アカツキ島ですよね。あのトラモント王国の歴史の中でも伝説級の犯罪者のみが収監される監獄があるという……」
そう答えたのはジョーカーだった。ジョーカーは何か因縁があるのか普段とは違う様子だった。
「左様。その監獄の地下最下層に収監された5人が2週間前に脱獄したのだ!!」
『!!』
サンセットホープズの4人とシルファは信じたくない事実に自分の耳を疑う。しかし国王の表情が真剣だったことから現実であることを悟るのだった。ロイは国王に詳細を求める。
「あの脱獄不可能な監獄をですか?!いったい誰が手引きしたのですか?!」
「それはわからない……だが脱獄した5名の名は把握している。シモン・カラカセビッチ、ガロード=ヒメミヤ、メイメイ=グリムド、アトラス=シャウナ……」
「なっ!?どれも10年以上前にこのトラモント王国を転覆を企てた伝説級の強さの首謀者ばかり!!」
その名を聞いた後、ロイが怒りに満ちた表情で反応する。そんな冷静さを失ったロイを見てアクアは最後の1人を国王に尋ねる。
「……陛下!あと1人は誰なのですか??」
「……驚くでないぞ。……あのゼファーだ。」
その最後の名を聞いて、5人は絶望のあまり言葉を失うのだった……




