表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
82/128

第79章「アクアのヒーロー」

「ケイぃー?……今日は楽しかったですぅ……」

「お、おーい……シルファ?だ、大丈夫か?」

「か、かなり酔っ払っているみたいね……」


打ち上げの解散後、ケイとアクアはシルファをトラモント城へ送り届けるために夜道を歩いていた。シルファはケイにおんぶされ、居心地のよさなのか甘えん坊な一面をみせていた。


「えへへ……ケイぃー!」

「な、なんだ?シルファ?」

「……好き♡」

「……へっ?!」

「な、な、何言っちゃってるのよ?!シルファ?!わ、私も見てるのよ?!」


シルファは後ろからケイの耳元で愛の言葉をそっと呟く。ケイは急なシルファの愛情表現に顔が真っ赤となる。そしてケイは恥ずかしさを誤魔化すかのようにアクアに尋ねる。


「ア、ア、アクア!そ、そういえばさぁ……」

「は、恥ずかしさで話を無理やり変えようとしてる……顔真っ赤よ……」

「い、言うなっ!」

「そ、それで何よっ!?」

「その……帰りはレイラと一緒にじゃなかったのか?」


ケイのその質問にアクアはなぜか自分でもわからないがほんの少し苛立ちを覚える。


「っ!!……はいはーい!どうせ私は邪魔者ですよーだ。」

「ち、違うぞ!?逆に助かってるくらいだ。」

「……レイラならフィオナとアスカと一緒に気絶したアイリスを家まで送りに行ったわよ。他のメンバーは女子だけでだけど二次会をエミリアの部屋でやるみたいよ。私もシルファを見送ったらそっちにいくわ。」

「そ、そうか……ありがとな。見送りにきてくれて。」

「まったくもう……感謝しなさいよね!そ、それにしても相変わらずシルファは酔うとすごいのね……」


その言葉にシルファは反応する。それから酔っ払っているためかニコニコしながら意味のわからないことを言い始める。


「アクアぁ……私ー、アクアにー、幸せになって欲しいですぅ……」

「き、急にどうしたのよ?!」

「だってぇ……はたちで彼氏いたことないのが信じられなくてぇ……」

「えっ?!ち、ちょっとーー!!ケ、ケイがいるのに言わないでよー!!」


シルファはそう言い残し、ケイの背中で寝てしまうのだった。一方アクアはまさかの飛び火に顔をこの上なく赤面させる。そんなアクアにケイは意外と言った顔をするのだった。


「へぇ……意外だな。アクアが彼氏いたことないなんて。」

「しょ、しょうがないじゃない!出会いがなかったのだもの!ど、どうせケイも私のことバカにするんでしょ?」


その質問にケイはアクアの目を真っ直ぐ見つめ、正直に思ったことを口にする。


「いや。むしろアクアのよさに気づかない男共をバカにしたいくらいだ。」

「えっ?」

「こんなに優しくて、自分より他人を大切にする人が魅力的じゃないわけないだろ?」

「な、な、なぁっ!何言ってるのよ?!」


夜空の満月と無数の星が輝く中、アクアにだけ見せる優しく儚げな笑顔をするケイがお世話を言っているようには思えなかった。そしてアクアはそんなケイを見て心臓の鼓動が高鳴り、ドキドキが止まらなかった。


(や、やだ……どうしよう……な、なんでなんでなんで?絶対ケイのこと好きになっちゃダメよ……シルファがいるのよ!?)


そんなアクアの気持ちに鈍感なケイは一切気づかず、そういえばといい尋ねる。


「そういえばアクアは今好きな人とか憧れてる人、いないのか?」

「す、好きな人ーー?!?!い、いないわよ!!」


このタイミングはまずい、そう思ったのかとっさに本能的に否定する。それから憧れている人について話始める。


「まぁ……ずっとずっと憧れている人ならいるけどね……顔も名前も性別も知らない私のヒーローよ。」

「へぇ……どんな人なんだ?」

「3年前くらいかな……私の両親が大喧嘩して離婚しそうになったことがあったのよ。そんなタイミングで奇跡が起こったの……」

「どんな奇跡なんだ?」

「ある日4人家族の最後の思い出作りに、ライブのコンサートを観に行ったの。」

「ライブのコンサート?」

「『傾国のバイオリニスト』と言われたZEROのライブよ。たまたまチケットが手に入ってね。」

「…………正体を隠すためか常に仮面をつけている変なバイオリニストだっけ?」

「そう。私の憧れの人はその正体不明のバイオリニストZEROよ……その時のライブは本当に感動したわ……!今でも覚えてる。そして感動したのは私だけじゃなかったみたい……ライブが終わった後両親が感動したのか抱きあって泣いていたのよ……その後仲直りして…………やばっ……あの時のこと思い出して泣きそう……」


アクアにとってよほど大切な思い出なのだろう。涙を堪えていた。そんなアクアを見てケイは心に響いたのか不思議なことを呟く。


「もう一回……ZEROのライブみたいか?」

「そ、そんなの当たり前じゃない!!お金をいくら払ってでも観たいわよ!!でも人気絶頂の時、理由はわからないけど急に消えたのよ!?……もう無理よ……」

「……そうか。」


そんな会話をしている内にトラモント城に到着し、シルファを自室のベッドに寝かせる。シルファはもう意識がないくらい熟睡していた。ケイとアクアはクスッと笑い部屋を後にするのだった。


「それじゃ……ここで!女子会楽しんでこいよ!アクア、今日はありがとう!」

「こっちこそ楽しかったわよ!気を付けて帰ってね!」


ケイとアクアも解散する。そしてアクアが遠く離れたことを確認してからケイは急にラキに電話する。


「……もしもし、ラキ?」

「どうかしましたか?ケイ様!」

「……ちょっと話があってな。今度急だがライブをしようと思う。」

「……ライブ?…………ま、ま、まさか……?!?!」

「ああ!ちょっと色々あってな……『ZERO』を復活させようと思う。」

「な、な、なんですとぉぉー?!?!……ほ、本当ですか?」

「本当だ。それで頼みがあるんだが俺と一緒に演奏してくれないか?」


その瞬間ラキは目を見開き、時がまるで止まったかのように感じるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ