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第8章「再会」

「…ここは?どこだ?」


ケイはようやく周りの景色から保健室で、横たわっていたことに気がつく。どうやらあの試合で気絶したようだ。そんな中フィオナがやってくる。


「あ、ケイが起きたわよ!タイガ!」

「無事でよかった!ケイ!大丈夫か?」

「ウルは??俺は負けたのか?」

「引き分けよ!ウルなら少し前に出ていったわ。」

「それよりケイ!おまえすげーな!あのウルと引き分けなんてよ!」

「ま、まぁ少しだけ見直したわよ!少しだけよ!」

「引き分けか。どっちが強いかは来月の大会で決着をつけるさ。それより今何時だ?」

「もう16時すぎの放課後よ。6限は実技実習場の破損修理で教室で自習になったわ。あんたたちどんだけのパワーなのよ!」

「そうか。それはみんなに悪いことしたな…すまん。」

「謝ることねーぜ!おまえらは全力を出しただけだ!むしろ男だぜ!」

「そうか!元気でたよ。タイガ。それはそうと時間も時間だ。俺はもう大丈夫だ。教室で着替えとか帰る準備してくるよ。先生への報告もあるし結構時間かかりそうだから、おまえらは先に帰ってて大丈夫だ。本当に介抱助かった!サンキューな!」

「わかったわ!無事で何よりよ!じゃここで今日は解散ね!明日の実技実習も頑張りましょ!」

『おう!』


ケイは1人で校門を出たあと、ふと悔しさを感じていた。一対一のケンカで負けたことがなかったからだ。


「男のプライドってやつか…かっこ悪いな俺。こんな悔しさを感じる日はカーラ橋から綺麗な夕陽でもみて気持ちよく帰るか。」


そうしてケイはゆっくり歩いていき、カーラ橋に到着した。気のせいかもしれないが今日は一段と夕陽の光が海の上できらめいて綺麗だ、ケイはそう感じながらボーっと橋の手すりから海を眺めていると、聞き覚えのある優しげな声で自分の名前が呼ばれた

のが聞こえた。


「ケイなの…??」


振り返ると麦わら帽子に白いワンピース、金髪のポニーテールが印象的だった少女がそこに立っていた。


「シルファ…?」

「はい!!シルファです!ケイ!」

「まさかまた姫様に会えるなんて俺は今日運がいいのかもな。今日も城を抜け出してきたのか?」

「はい!ここからの夕陽が好きなんです。もう一度、いえ、何度でもここから眺めていたいです!」

「相変わらずだな。でも元気そうでよかったよ!」

「逆にケイは少し落ち込んでるように見えました。どうかなされたんですか?」


そしてケイは今日の授業でウルと戦いで勝てなかったことついて話した。しかしケイの予想に反してシルファの反応は嬉しそうで優しげな表情だった。


「私嬉しいです。ケイが私なんかのために必死に戦って、勝てなかったことに本気で悔しがってくれて…それだけで…」


その表情をみてケイは今までここから眺めていた夕陽の輝きみたいに尊く美しい、そう感じて無意識に思ったことをつい口に出してしまった。


「シルファ…おまえ夕陽みたいに綺麗だな。」

「え……?」


二人は一瞬、時間がまるで止まったかのような感覚になった。シルファはこれ以上ないくらいに顔が真っ赤だった。そしてケイは、はっ!と気づき慌てた様子でシルファに話しかけた。


「わ、悪い!つ、つい見とれちまって口にでてたな…ははは!」

「い、いえ!!」

「…」

「…」


二人の間で再び沈黙が続いた。この気まずい空気をなんとかしようとケイはこういった。


「と、とりあえずシルファのおかげで俺は元気になったってことだ!心配すんな!俺は騎士になるまで、これからはずっと勝ち続けるさ!だから待っててくれ!」

「は、はい!はい!ずっと待ってますから!」


よかった…とケイが安心した一方でシルファは緊張していた。この間からずっと聞きたいことがあったのだ。今度はシルファの方から勇気を出して想いを言葉にした。


「…あ、あの!!ケイにお願いがあるのですが!」

「ん?どした?シルファの頼みならなんでもオッケーだぜ!」

「け、携帯の電話番号を交換しませんか!!」

「え…?いいのか?俺は庶民だけど?」

「いいんです!いいに決まってます!」

「まぁシルファが大丈夫ならいいか。…じゃ交換しようぜ!」


そして携帯の電話番号をお互い交換したのだった。姫様と携帯の番号を交換とか凄いことしてないか?俺、とケイは感じていた。その後はお互いの日常生活の雑談をしながら時は過ぎていき、ケイは帰る時間となった。


「そろそろ時間だな!俺は帰るよ!シルファも暗くならないうちにまっすぐ帰れよな!またなー!」


ケイがいなくなったあと、シルファは緊張がとれたのか、嬉しさで叫びたい衝動に襲われていた。


「私のこと夕陽みたいに綺麗だ、見とれたって言ってましたよね?!あと携帯の電話番号も交換しちゃいました!!どうしましょう?!」


そんな1人ごとを呟きながら、シルファは顔を恥ずかしさで真っ赤にしながらお城に向かって歩きだしたのだった。

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