第76章「二つ名」
「ふふっ!やっぱりケイが勝ちました!ケガもなくてよかったです……!」
「まさに圧倒的な勝利だったわね!ケイ、強くなりすぎよ!でも無事ナンバーズが決まってくれてよかったわ!」
時刻は19時。夜空に月と星の光が輝く中シルファとフィオナが笑顔でそんな感想を言う。それからクルミが何かに気づいたかのように皆に尋ねる。
「そ、そう言えば決まった4人の番号はどうなるのでしょうか……?!何かケイさん言ってましたか?」
「あー!俺も言われて気づいたぜ!たしか強い順に若い番号だよな!どうするんだ?じゃんけんか?」
「そ、それはないわよ……多分。」
タイガとアイリスがそう答え、皆フィールドでハクと握手しているケイを見て思う。おそらくすっかり忘れているだろうと。それから観客の盛り上がりがおさまった頃ミマは司会を続ける。最後の最後まで笑顔で溢れ、明るい声が会場に伝わるのだった。
「まさかのサプライズ試合も最高に盛り上がったわね!この後だけど最後に15分後、閉会式するわよ!!参加した騎士は全員フィールドに集合してね!!」
15分後フィールドに参加した全騎士が集合する。雰囲気は良好だった。大会を通してお互いに認め合ったのだろう。どこか壁を感じていた今までとは違い、騎士達の間で楽しそうに盛り上がっていた。全騎士が集まったことをミマは確認し、閉会式を始める。
「……全員集まったみたいね!さっそく閉会式を始めるわよーー!それじゃ閉会の挨拶!ケイ様お願いします!!」
ケイはゆっくり歩いていき整列している騎士達の元へ向かう。そして到着した頃、再びケイが巨大スクリーンにアップされるのだった。観客の皆が静まり返り、緊張感のある中ケイは口を開く。
「みんな!今日は大会に参加してくれてありがとう!今回の大会でナンバーズが無事決定したが、それ以外のメンバーも一人一人、自分の個性がいかせるような部隊にしていくつもりだ。そしてみんなにも自分のこの部隊での役割が何なのか、何が長所なのか日々考えてほしいと思っている!そうすれば必ずこの部隊が最強になるだろう!是非これからの活躍、期待している!頼んだぞ!みんな!」
『はい!!』
フィールドにいた参加者の全員が明るくそう返事をした後、ミマは司会を続ける。その表情は何かに期待しわくわくした様子だった。
「ケイ様!素晴らしい閉会の挨拶ありがとうございました!それでは最後にお待ちかねの新ナンバーズのメンバーの紹介に移るわよぉぉー!新ナンバーズの皆さんっ!前の方にお越しください!」
ミマがそう言った後、約260名の騎士の前に自信の満ち溢れた表情をした4人のナンバーズが横に整列する。
「さぁこの4人が新たなナンバーズだぁぁーー!そして紹介はつい先ほど閉会式前にケイ様自身がしたいとおっしゃっていましたので是非お願いしたいと思います!それではケイ様!新たなナンバーズのメンバー紹介の方お願いしますっ!」
「紹介の前にまずみんなに俺から言いたいことがある!今俺の部隊にはナンバーズ、ジーニアス、シークレット、そして150人隊長という特別な役職を持つメンバーがいる!そいつらには敬意を表して『二つ名』を俺からつけたいと思う!そして今日はナンバーズのメンバー紹介と二つ名を同時に発表する!」
『うぉぉぉーーーー!!』
ケイのまさかのサプライズに観客席は最高潮に盛り上がる。そしてフィオナ、タイガ、シルファも全く予想外の展開に驚きの声をあげる。
「な、何っ?!えっ?!二つ名って何よっ?!」
「お、俺も全くわからん!そもそも二つ名って何だ?!」
「た、多分ですけどその人のイメージに基づいた別称のようなものだと……」
そしてアイリスとアクアはというとケイの提案した新制度に感心していた。新しいことに積極的に挑戦していくケイを尊敬した眼差しで見ながら呟く。
「へぇ……!二つ名!面白いじゃない!!アクアはどう思う?!」
「考えたことなかったわね!でもたしかにあれば知名度がアップしそうね!」
それからケイだけでなく4人も会場の巨大スクリーンに写し出され、ナンバーズ・セブンの人物からケイにより紹介されていく。
「まずはナンバーズ・セブン!!まさに水のエキスパート、レイラ=アズーロ!!」
「は、はい!」
レイラは自身の名前が呼ばれ、前へ一歩でる。少し緊張した状況の中、ケイの次の言葉を待つ。
「状況に応じて臨機応変に対応できる柔軟性、そして技の模倣は天才的なセンスを誇る騎士だ!二つ名は『テンペスト』だな!嵐という意味だ!!戦いにおいて嵐のような爆発力を発揮してくれ!」
「『テンペスト』……カッコいい……」
レイラは二つ名を気にいったのだろう、嬉しそうな笑顔で静かに呟く。
「次はナンバーズ・シックス!薔薇の貴公子、ラキ=エスペランサ!!」
「おや……?呼ばれたようだ!」
ラキもレイラと同じように一歩前にでる。一輪の薔薇を口に加え、落ち着いた様子でケイの言葉を待っていた。
「植物を使った技のバリエーションは随一だ!そして特に人並み外れた力は動体視力とエネルギアコントロール……これは誰にも真似できないだろう。二つ名はやはりこれしかない……!『トリックスター』!変幻自在の攻撃で無類の強さを発揮してくれ!」
「……『トリックスター』!ふっ!いいね!期待に応えてみせるよ!」
ラキは盛り上がる観客席に手を振り、紳士的な礼をする。続けてケイは発表する。
「……ナンバーズ・ファイブ!これはかなり実は迷った!実力はおそらくほぼ互角だからな!それではその名を発表する。……エミリア=オルコット!前へ!」
「……私がナンバーズ・ファイブ!」
エミリアは隣のハクをチラッとみた後、前へ一歩でる。ハクをライバル視しているかのような雰囲気だった。
「元サンセットホープズ候補の力、見せてもらった!一対一でも強いが特に集団戦においては異次元の力を発揮するだろう。それから能力の汎用性は間違いなくナンバーズのメンバーで一番だな!そして二つ名はそうだな……『ファントムミスト』!幻の霧という意味だ!」
「『ファントムミスト』!へぇ……さすがケイ!ネーミングセンス抜群ね!私のイメージ通りだわ!」
満足そうな笑みを浮かべ、盛大に盛り上がる観客席に投げキッスをする。エミリアらしいファンサービスといったところだ。
「最後のナンバーズ・フォーは今大会最速で優勝した女騎士、ハク=ヴァールハイト!」
「ほいなっ!!」
ハクは天真爛漫な表情で一歩前へでる。私がナンバーズ・フォーで当然と思っている中、ケイの紹介が始まる。
「実はハクとは孤児院で7歳の頃からの知り合いなんだ!そして俺やアイリスと同じく月系統のエネルギアを持っている。ポテンシャルと実力はみての通りだ!幻獣種ヴァンパイアの力、見せてもらった!夜にはまさに無敵の力だな!それから二つ名だが……」
ケイはしばらく考える。それから孤児院時代のハクを思い浮かべてしまい、つい口に出してしまう。
「……『いもうと』?」
「なんでやねんっ?!?!」
ハクは盛大にツッコミを入れ叫ぶ。その瞬間、会場は爆笑と失笑の渦に飲み込まれるのだった。ハクは先ほどの自信に満ちた表情から絶望した表情に変わりケイに涙と鼻水をたらしながら必死に懇願する。
「ぜ、絶対いやや!!ふ、ふざけとるん?!ウチの二つ名だけおかしいやろ!?はよー弁明しーや!!」
「わ、わりー!つい昔のイメージが頭に浮かんでな!!」
「ほ、ほんまアホなん?!わ、わざとやろ!もしウチが街中で、あー!いもうと!……とか言われたら、どないすんねんっ?!」
「だ、だから悪かったって……ちょっと待て!別の二つ名を考えてるから!うーん、そうだな……」
それから少し考え。ケイはいい二つ名が浮かび、それを口にする。
「……『ナイトメア』。悪夢と言う意味だ!ハクの絶対的な強さは相手からしたら悪夢そのものだ!おまえの圧倒的な力を見せてやれ!」
「『ナイトメア』……!ま、まぁーそれなら悪ないな!ハ、ハナからそれを言うたれや!ドアホ!」
この二つ名はどうやら気にいったようだ。なんだかんだハクも満足そうな表情をする。その後ハクは観客に笑顔で手を振った後、ミマは最後の司会の仕事として明るい笑顔で会場中に宣言する。
「ケイ様本当に素晴らしいメンバー紹介と二つ名、ありがとうございました!みんなぁぁーーー!寂しいけどこれで新人戦は終わりよ!本当に私も楽しかったよぉぉーー!短い間だったけどありがとぉぉーー!!」
ミマの宣言と共に今日1日の中で会場は最高潮に盛り上がり新人戦はフィナーレを飾るのだった。




