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第72章「新人戦開幕!レイラ=アズーロの力」

「やっと試験監督終わったぜー!!もう12時か!実技実習場の観客席で飯でも食おうぜ!クルミ!フィオナ!」

「いいわね!そうしましょ!13時からは実技実習場で新人戦だものね!!今のうち食べましょ!!」

「は、はい!新人戦楽しみですね!!」


試験監督が終わり、解答用紙をグレンとボルグに渡した後、タイガ、フィオナ、クルミは実技実習場へ向かった。観客席はまだ12時だというのに、3人の予想以上に溢れかえっていた。


「あ、見て!あそこ!3席空いてるわ!」

「い、急いで確保しましょ!!」


フィオナが3人が座れる場所を見つけ、その場所へ向かうと近くの席に見覚えのある顔ぶれが揃っていた。タイガは思わず声をあげる。


「うぉぉー!!姫様!?それにアイリスとアクアも?!」


シルファ、アイリス、アクアはタイガの声に振り返る。そしてフィオナ、タイガ、クルミがいることに気付き、皆偶然といった顔をした後、シルファが笑顔で手を振りながら挨拶するのだった。


「こんにちは!皆さん!」

「シルファ!どうして観客席に?審査員席じゃないの?!」


まさかの出会いにフィオナはシルファに尋ねる。シルファはニコニコしながらその質問に答える。


「ふふ!!前の大会の時、観客席の方が盛り上がってて楽しそうだったので今回はこちらで観ようと話になりました!」

「そ、そうだったんですね!!わ、私姫様と話してる?!」


クルミがシルファと初めて会話し緊張している中、アイリスはいつものフレンドリーな雰囲気で提案する。


「よかったらあなた達も一緒に試合観戦しない?みんなで観た方が楽しいわよ!!」

「アイリス!それいいわね!!そうよ!そっちの方がいいわ!お酒も一杯あるわよ!」


アクアも大賛成といった様子で、酒を飲みながら誘うのだった。フィオナ、タイガ、クルミの3人はお互いの顔を一瞬見て答える。


「じゃーそうさせてもらうわ!それにちょうどそこの3席しか空いてなさそうだし!」

「美人に誘われて断る奴は男じゃねーぜ!」

「よ、よろしくお願いします……」


3人が座った後、シルファはあたかも自然を装いながらそういえばと少しフィオナから目を反らしながら尋ねる。それは隣に座るアイリスも気になっていたことだ。


「……そ、そういえばケイは?」

「そ、そうよ!いつも一緒じゃない?」

「あ、あいつはこの後のオープニングセレモニーで何かしゃべるみたいで、必死に今カンペを暗記してるわよ!」


フィオナは2人の恋のライバルに絶対負けないと思いながらそう答える。


「ふふ!そうですか!ケイらしいです!」

「ぷっ!……たしかに!人前で何かするの得意じゃないって前に言ってたわ!きっと本当に必死よ!」


シルファとアイリスはケイらしいと顔を赤めながら、そう答える。そんなドギマギした雰囲気を察し天然なクルミはもしかしてと思い、シルファに尋ねる。


「あ、あのぅ……ひ、姫様、気になることがあるのですが……」

「はい!なんでしょうか?」

「……ひ、姫様はケイさんが好きなんですか?」

「ふぇ?!」


その急な遠慮のない質問にシルファは顔を真っ赤にする。他のメンバーはクルミの大胆な発言に目を見開き、シルファの言葉を待つ。そしてシルファは少しの沈黙の後、照れながらも今日一番の笑顔で嘘偽りなくクルミに答える。


「……はい!異性として好きです!」

『えぇぇーー?!』


そのシルファの答えにタイガとクルミは悲鳴をあげる。アイリスとフィオナはふてくされた顔で静かなままだった。アクアは修羅場だと静かに呟きながらニヤニヤと悪い表情をしていた。そんなシルファのストレートな気持ちに対して、タイガはふと気になっていたことを聞く。


「えっ?!お、俺はてっきりケイはアイリスと付き合ってるのかと思ってたんだが……」

『それだけはない(です)!!』


同時に否定したのはシルファとフィオナだった。アイリスだけは絶対にない、そんな声のトーンで否定されアイリスは動揺した様子でツッコミを入れる。


「なぁっ!な、なんでなのよ?!それにフィオナにだけは言われたくないわ!!」

「な、なんですって!?ア、アイリスどういうことよ?!」


まさかの名指しにフィオナはアイリスにその理由を尋ねる。フィオナにケイはふさわしくない、そういった目をしながらアイリスは指を指しながら答える。


「フィオナは気にくわないことがあると、ケイにすぐ暴力振るうじゃない?!花火大会の時だってあんな電撃の矢を何発も!あんなの毎回くらってたらいつかケイが死ぬわよ!」

「うっ……!」


何も言い返せないフィオナにアイリスは追い討ちをかける。それはアイリス以外だれも知らない秘密だった。


「それにあなたがふさわしくない理由だけど……私知ってるのよ!フィオナの秘密!」

「な、なによ!秘密って!!」

「あの日記……普段はツンツンなのに……」

「……へっ?!ま、ま、まさか、まさかあれを読んだの?!?!えっ?!いつ?!どうして?!」


フィオナは急に顔をトマトのように赤面させ、アイリスに必死な顔で尋ねる。どうやらかなり恥ずかしい内容が書かれた日記のようだ。そんなフィオナを見て、アクアは尋ねる。


「アイリス!な、なんなのよ?!その秘密の日記って!」

「それはね……妄想日記よ!!」

「も、妄想日記?!なんだそりゃ?!」


タイガもいつもはみられないフィオナの動揺に興味津々だった。それに対して意地悪な顔でアイリスは答えようとする。


「フィオナはねー……」

「やめて!やめなさいよ!!お、お願いだから!!」

「な、何か必死です……逆に気になっちゃいますよ!」

「そ、そうよ!」


シルファとアクアは気になってしょうがなかったが、ここで13時のチャイムの鐘がなり、フィオナはほっとするのだった。会場が静まりかえる中、司会のアナウンスが始まる。その声の主はまさかの人物だった。


「みんなお待たせぇぇーー!待ちに待った新人戦のオープニングセレモニーをはじめるわよーー!!司会は私、居酒屋夕陽処の看板娘!!ミマ=キャロルがお送りいたしまーーす!!よろしくぅぅーー!」

『えぇぇぇーーーー?!?!』


意外な人物の登場に会場中盛り上がる。実はミマは騎士の間でも有名だった。夕陽処は騎士御用達の居酒屋である。そこの看板娘となると人気が出るのは必然だった。そして観客席にいたクルミは驚きの声をあげる。


「あ、あの!ミマさんってあの夕陽処の?!」

「おぉぉー!まさかのミマちゃん!やっぱり可愛いぜー!!ぐふふふふ!」

「タ、タイガ、まじでキモいわ!やめなさいよ!」


クルミに続き、タイガ、フィオナも驚きの声をあげていた。そしてミマは会場が盛り上がった後、司会を続ける。


「みんな驚いたかなー?!予想以上の反応に私もテンション上がってきたわーー!!みんなで今以上に盛り上がっていくわよーー!!それではオープニングセレモニーはまずこの方に挨拶して頂きましょう!!騎士の頂!サンセットホープズ最強の男!!ケイ=ミカヅキ様!お願いしまーーす!!」


ミマのアナウンスで会場の巨大スクリーンにケイが映し出される。その瞬間の盛り上がりは今日一番と言ってもよいくらいだった。ケイは緊張など全く感じさせない雰囲気で挨拶をする。


「みんなーー!!俺の部隊に入ってくれてありがとう!!まさかこんなに沢山入ってくれるとは思わなかったぜ!!これからは俺たちは仲間でありライバルだ!!騎士としての誇りを忘れず、切磋琢磨して一緒に最強のチームにしていこうぜ!!よろしく頼む!!」


そうケイは爽やかな笑顔を振りかざしながら、挨拶を締めくくる。その瞬間黄色い声援で溢れかえる。


「きゃあああーー!ケイ様ーー!!」

「あの笑顔、超かわいい!!」

「本当に美形ねーー!きゃあああーー!ケイ様こっちみてぇぇーー!!」

「あっ!今こっちみて手を振ったわよーー!!絶対私によぉぉーー!!」


そんな会場の女子の沢山の悲鳴に周りを見渡しながらシルファ、アイリス、フィオナは反応する。


「ケ、ケイってこんなに人気なんですね……アイリス知ってました?」

「い、いや知らなかったわ……へ、へぇ……ケイってモテるのね!!ま、まぁあれくらい私もモテるけどねっ!!」

「サ、サンセットホープズになれば誰だってこれくらいはちやほやされるわよっ!あいつっ!!爽やかに手なんか振っちゃって!!ムカつくわー!!」


黄色い声援がおさまらない中、ミマは試合のルール説明を行う。それはシンプルなものだった。


「さぁそれじゃルール説明をするわねーー!!ルールは簡単、4つのブロックA、B、C、Dに約60人ずつ割り振ってあるのだけどブロックごとのサバイバル戦よ!そして各ブロック優勝者4名は……な、なんとケイ部隊最強の精鋭チーム、ナンバーズのメンバーとなります!!」


まさかのサプライズに観客席にいたケイ部隊の騎士達は大盛りだった。そもそもケイ部隊では最近ナンバーズの噂でもちきりだった。それもそのはずで現メンバーのウル、ルナ、アランは任務達成率はサンセットホープズを除けばトップクラスの超エリート騎士であり、みんなの憧れの的だった。そんな騎士達と肩を並べることができるとなればナンバーズに憧れるのは必然だった。ミマは騎士の盛り上がりに圧倒されながらも司会を続ける。


「す、すごい盛り上がり!!これからの戦いがますます楽しみになってきたわね!!それじゃ早速だけどAブロックから試合していくわよ!!Aブロックのメンバーはじゃーん!このメンバーよ!!名前がある騎士はフィールドに集合してね!」


会場の巨大スクリーンに約60名の名前が次々と映し出される。観客席にいたシルファはある名前を見て、アクアに尋ねる。


「あ、あの!!レイラ=アズーロって……!?」

「えっ!?」


そうシルファがアクアに尋ねた時、背後からアクアと似た声で会話を遮られた。


「お姉ちゃん!!」


シルファ、フィオナ、アイリス、タイガ、クルミ、そしてアクアは背後を見る。そこにいたのは水色の外ハネショートヘア、小柄ながら出るところは出ているといった抜群のスタイル、アクアにそっくりだが少し幼くした容姿が特徴の少女だった。アクア目を見開きその名前を呼ぶ。


「レ、レ、レ、レイラぁー!?」

「ふふーん!びっくりした?!」

「な、な、なんでレイラが?!!」

「一昨日入隊したの!!ケイ様にスカウトされてね!!」

「えぇぇーー?!なんですってぇ?!」


まさかの展開にアクアは混乱している中、タイガがアクアに尋ねる。


「な、なぁアクア!その子って……!」

「わ、私の妹よ!!」

「皆さん初めまして!レイラ=アズーロです!!よろしくお願いします!」


レイラが貴族のような上品な挨拶をした後、アクアは再び尋ねる。今でも信じられないと言った様子である。


「ほ、本当にケイの部隊に入ったの?!?!」

「うん!!さいっこうの部隊よ!!なんたって私の推しの部隊なんだから!」


推しなど意味のわからない言葉にフィオナとクルミは反応する。


「お、推しってなによ!」

「そ、そんな言葉はじめて聞きました……」

「推しっていうのはですね!ファンみたいなものです!!私の推しはケイ様です!きゃあああーー!言っちゃったぁぁー!」


レイラはさっきの上品な振る舞いとは対象的に両手で自分の火照った顔を隠しながら、バタバタと足踏みしながら説明する。そんなレイラを見て、アクアは一言。


「そ、そんなふざけた理由で騎士にならないでよ!!」

「ふざけてないですぅー!!お姉ちゃんの方こそ騎士はイケメンが多いからとなってみたとか言ってたじゃん!!」

「うっ!」


何も言い返せないアクアを見て、レイラはトドメをさす。


「あとお姉ちゃんってあたかも自分が恋愛経験豊富であるかのように振る舞うけど、20になっても彼氏いたことないじゃない!本当子供なんだから!」

「なっ?!なっ?!レイラのバカぁぁー!!な、なんで言うのよぉーー!!」


アクアは自身の恥ずかしい事実を公開されて顔を真っ赤にしながらレイラに言い返す。そんなアクアに対して5人は意外と言った表情をしていた。


「ア、アクアって彼氏いたことなかったのね!い、意外だわ!」

「な、なによ!ア、アイリス!!しょ、しょうがないじゃない!出会いがなかったんだもの!」

「へ、へぇ……」

「ちょ、ちょっとフィオナ、なんでひいてるのよ!や、やめて!わ、私を見て可哀想みたいな顔しないでよ!」

「大丈夫だ!!俺も彼女いたことないぞ!気にすんな!!」

「タイガは何爽やかな笑顔でそんな惨めなこと言ってるのよ!な、慰めになってないわよ!か、完全に私のことバカにしてるわ!!」


アクアが動揺し、パニックになっている中、レイラはとにかくといい第一試合に対して6人に宣言する。


「お姉ちゃんのことはさておき!私の試合観て下さい!!絶対負けませんから!」


そう宣言して、走っていったのだった。そんなレイラの印象をクルミはシルファに話す。


「な、なんていうか嵐みたいな妹さんでしたね……」

「そ、そうですね!あとケイのファンって言ってましたけど、恋愛感情ではないですよね……よかったです。」


一方アクアは涙目になりながら、顔を真っ赤にしたまま怒りを露にしていた。


「レイラ!あとで!!あとでぇぇーー!!」

「ア、アクアがガチギレしてるわ……!よっぽど気にしてたのね……」

「そ、そうみたいね……」


アイリスとフィオナがアクアには聞こえない声のボリュームでそんなことを呟くのだった。



時刻は13時半がすぎた頃、闘技フィールドにはAブロック出場者が全員揃う。今回のフィールドは障害など何もないシンプルなものであった。無論実技実習場は特殊なエネルギアで覆われているため、ダメージにより命を落とすことはないようになっている。つまり気絶しないで最後まで立っていた者が勝者となるのだ。そしてついにミマが試合開始の合図をするのだった。


「みんな揃ったみたいね!それじゃいくわよーー!!Aブロックの試合スタートぉぉー!!」

『うぉぉぉーーー!』


スタートの合図と共に、選手達は雄叫びをあげながら走りだす。そんな様子を審査員席からウル、ルナ、アランは眺めていた。ウルは面白い試合になりそうだと心の中で思いながら呟く。


「あの水色のショートヘアの子がアクア様の身内か

何かみたいだね!」

「多分妹ね!アランはどう思う?」

「なんでもいい!重要なのはナンバーズにふさわしい実力があるかだ!」


アランのその一言にウルとルナは頷くのだった。


一方フィールドではレイラ以外で目立つ女騎士が1人いた。開始5分で凄まじい勢いで敵を蹴散らしていく。


「私の名はリン=クリスタ!!覚えておくんだな!いくぞ!美しく散るがいい!!アイスドバレットぉぉーー!!」

『ぐぁぁーー!!』


空中に浮かぶ、拳の形をした無数の氷の塊が、騎士達を襲い悲鳴で溢れかえるのだった。そしてアクアの妹のレイラもそれに負けないくらい敵を蹴散らしていた。


「私はっ!!推しのために勝つっ!いっくわよー!!その拳は海の輝き!!スプラッシュ!!フィストぉぉーー!」


たった一撃で10人の騎士をノックダウンさせる。その破壊力に初めてみた者は驚愕する。観客席ではアイリスが興奮した様子で声をあげる。


「い、今の技!!ケイに似てない?!」

「ああ!!ケイのフォームにそっくりだ!!スゲーぜ!俺なんか嬉しいぞ!!」

「タ、タイガさん!私も同じ気持ちです!ケイに憧れてるのが伝わってきます!!」


タイガとシルファはレイラが本当にケイに憧れているのだとしみじみ感じながら嬉しそうな顔をする。アクアはというと、あの子いつのまにあんな技をといったことを思いながらじっと静かに試合を眺めていた。そんな中クルミは指を指しながら叫ぶ。レイラの背後から攻撃を仕掛けようとしている騎士がいたのだ。どうやら遠距離攻撃のようだ。


「……ま、まずいです!レイラさんが死角から狙われてます!」

「レイラぁぁー!後ろぉぉー!」


フィオナはレイラ危ないと思いながら必死に叫ぶ。それと同時にエネルギアでできた巨大な炎球がレイラに放たれる。だがレイラは余裕の笑みを見せながら言う。


「後ろから狙ってるの丸分かりなんだから!……海よ!私に力を……ハイドロウイング!!」


次の瞬間、レイラは背中に4枚の水の羽を作り出し上空へ飛翔するのだった。その羽はミカヅキの羽と少し形が似ていた。それを見てアランは思わず声をあげる。


「な、なにっ?!水の翼だと?!あ、あんな使い方が!!」

「あれはケイの……!?すごい……!さすが注目していただけあるね!」

「そ、そうだな!私の想定以上だ!!」


ウルとルナもレイラのポテンシャルに驚いていたが、それ以上に驚いていたのは観客席に座る6人である。アイリスはまさかの技に目を見開き立ち上がる。


「あ、あれはケイのミカヅキの羽?!さ、さすがにエネルギアを打ち消したり封印する力はないみたいだけどそれでもあの機動力は魅力的ね!アクア!あなたの妹、本当に天才だわ!!」

「わ、私も初めてみたわよ……ま、まぁ昔から模倣が上手だったのは知ってたけどまさかここまでとはね……」


そしてケイの瞬間移動ほどではないがそれでも凄まじいスピードで次々と敵の騎士の背後に回り込みスプラッシュフィストを決めていく。試合開始25分。最後に残ったのはレイラとリンである。両者向かい合い挨拶する。


「やっぱり最後に残ったのはあなただったわね!あなたの戦い少し観てたの!強いのね!私はレイラ=アズーロ!サンセットホープズのアクア=アズーロの妹よ!あなたは?」

「やはりそうか!顔が瓜二つだからそうでないかと思ってたよ!私はリン=クリスタだ!悪いが勝たせてもらう!推しのためにな!」

「えっ……?!」


今この人、推しのためとか言った?そんなことをレイラだけでなく観客席や審査員席に座る人も含め、全員が思った。想定外の展開にレイラは尋ねる。


「お、推しのため?今あなた推しのためとか言わなかった?!」

「ああ!私はウル様推しなのだ!!だから絶対負けられないのだ!」

「えぇぇーー?!あなたも推しのためなのね!!私はケイ様推しなの!!前に『ときめき♡シュヴァリエ・パラダイス』って雑誌でイケメン騎士特集のケイ様を見てファンになったの!!」

「な、なんと!?私もその雑誌みたぞ!!それで初めて私はウル様をみてファンになったのだからな!!」

「な、な、なんですって!?」


この人達は一体何を言っているのだろう、そんなことを観客が思う中、レイラはリンにビシッと指を指しながら宣言する。


「私!あなたにだけは絶対負けない!!」

「それはこっちのセリフだ!!ウル様と肩を並べるため勝たせてもらう!」


そしていよいよ最終決戦が始まった。先手をとったのはレイラである。ハイドロウイングの機動力を生かし、リンの背後に素早く回り込む。


「は、速い!」

「スプラッシュ!フィストぉぉーー!!」


レイラは決まったと思う中、リンはニヤリと笑みをこぼしレイラに対して叫ぶ。


「甘い!!はぁぁ!!」

「な、にっ……!?」


拳がリンに直撃する寸前、レイラの身体は全身凍ってしまうのだった。レイラはピクリとも動かない。


「どうやら私の勝ちみたいね!!」


そうリンが勝ちを確信した時だった。なんとレイラの氷がみるみる溶けていくのだった。その様子をみてリンは目を見開く。何が起こっているのか理解できないでいた。


「な、なぜだっ!なぜ氷が溶けていく!!」


動揺するリンに全ての氷が溶けきったレイラは余裕の笑みをこぼし答える。


「私はね、水の温度を調整できるの!だから熱湯を使って溶かしたってわけ!すごいでしょ!これは才能ね!!これでトドメよ!!スプラッシュ!!フィスト・フルバーストぉぉー!」

「ば、バカなぁぁー!がはっ!!」


リンは実技実習場の壁まで吹き飛び衝突する。そしてリンが気絶したことを確認して司会のミマは勝者の名前を呼ぶ。


「け、決着ぅぅーー!!Aブロック勝者!!レイラ=アズーロ選手ぅぅーー!!ナンバーズ入りおめでとうぉぉー!!」

「や、やったぁぁー!!勝ったわぁぁーー!!」


ミマの宣言に観客席はスタンディングオベーションで拍手する。レイラは大喝采を浴び、笑顔で喜びを爆発させるのだった。

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