第7章「ライバル」
ライバル登場です。是非お楽しみに!
エネルギアのコントロール訓練が始まり、10分ほど経過した。それぞれのチームにロイもアドバイスをしているようだが、どこも苦戦しているようだ。
そしてケイ、フィオナ、タイガの3人も、エネルギアのコントロール訓練に精を出していた。フィオナは困ったといった表情で感想を呟く。
「なかなか難しいわね…エネルギアの消費がまだ激しいのがわかるわ。これじゃ数分しかもたなさそう…タイガ、ケイそっちはどう?」
「始めたころよりはできてる気がするけど、まだ実践で活かせるレベルじゃねーな。ケイは?」
「こうか??」
フィオナ、タイガが苦戦する中、ケイは右拳に黄金の輝き、ルーチェをまとわせる。最初は膨大な大きさだった輝きが、濃縮し小さな輝きへと変わった。小さいながらも力強く、エネルギアが効率よく使われているのがわかる。タイガとフィオナは驚きの声をあげる。
「おい!!すげーぜ!ケイできてるじゃねーか!!それだよ!」
「ど、どうしてリーダーである私より、あんたの方が早くできるのよ?!」
「いや、んなもんギュギュギュっとするイメージだよ。なんで逆にできないんだよ?」
「ぎ、擬音語で説明になってないわよ!」
「ケイ!俺にももっと具体的に教えてくれ!」
そんな会話をしていると、3人の背後からパチパチパチと拍手をする音が聞こえた。拍手の主はロイだった。
「おおー!ケイ!いいじゃねーか!それだよ!おまえセンスいいな。さすが姫様が見込んだだけはある。」
「まぁこれくらいなら簡単だよ。」
「簡単か。多分卒業までできねー奴もいるんだぞ。まぁいい。フィオナ、タイガ、おまえらはどうだ。」
「ケイほどは上手くできねー。どうすればいいんだ、先生!教えてくれ!」
「私もケイみたいにはできてないわ!このバカ二人には絶対負けたくないの?お願いします!先生!」
タイガとフィオナの必死の懇願にロイは答える。
「まずおまえらの能力だが、たしかフィオナは物質に雷をまとわせる力、タイガは物質の硬化だったな。おまえらは要するに武器にエネルギアをこめるから難しいんだ。ケイは自分の肉体強化だから感覚的に少しイメージしやすいのかもな。まぁだが本質的には変わらん。イメージしろ。静かに小さく、だが力強い、そんなイメージだ!具体的で身近な物に例えるといいかもな。やってみろ。」
「具体的なイメージ…そうだわ!」
フィオナは矢に込めた、爆発的に暴れていた電撃が濃縮していく。小さく静かにバチバチと音を鳴らしながら、青い電気をまとったいき、力強さを感じる矢に変わった。
「できた!!やった!強い豆電球の光をイメージしたらできたわ!」
「あとは俺だけだな。イメージか。俺にはあれしかねーな!」
タイガは目つぶり集中する。その結果、ハンマー全体に鈍色のオーラを灯していたのが、打撃部分のみオーラを灯すように変化した。オーラは小さくなったが、白銀の色に変化し、無駄のない力強さを感じた。
「ケイ、フィオナ!俺もできたぜ!!やっぱ俺って天才!」
ロイは言われたことをすぐにできたタイガとフィオナをみてそのセンスに感心する。
「二人ともよくできてるな!3人全員できたチームはまだおまえらが初めてだ!これは大会の結果が期待できるかもな!それじゃ引き続き練習にはげめよ!俺はまだ他のチームをみなきゃいけねーからな。がんばれよー。」
そう言ってロイは他のチームに向かっていった。ケイはタイガに気になったことを聞く。
「ところでタイガ、おまえは何をイメージしたんだ?」
「私もそれ気になってた!何なの?」
「ああ!それはだな!張りがあり、なおかつ形のきれいな巨乳だ!」
ケイとフィオナはタイガの回答に呆れた表情をする。そして何も聞かなかったかのように黙るのだった。
『……』
「なんでそこで黙る?!俺は真剣だぞ!」
「アホすぎてあきれたのよ!ある意味天才だわ…」
「ま、まぁできたならいいんじゃねーか?」
「なんだ!二人ともー!俺をゴミをみるような顔しやがってー!」
そんな漫才も終わり、ロイが合図で笛の音を鳴らした。そして、おまえらー!中央にあつまれー!そんな指示が会場に響きわたる。
「よし!全員集まったな!今日できたやつも、できなかったやつも復習わすれんなよ。じゃそうだな。この時間の最後に代表二人に模擬戦闘を見せてもらう。ああ、言い忘れていたがこの実技実習場内は特殊なエネルギアの能力で作られた大気に包まれている。だから直接的なダメージは肉体ではなく精神にくる。まぁ衝撃で体が吹き飛ばされたり、気絶はするかもしれないが、血が出たり怪我をすることはない。安心して戦え。それでは代表者2名を発表する。チームグローリーからウル、チームネクサスからケイ。代表はここに来い。一撃だ。お互いの一撃をぶつけてみせろ。」
タイガとフィオナだけでなく会場にいる生徒がざわめく。ケイって誰?ウル様ー!!などほぼウルの味方ばかりだ。そんな中ケイとウルはロイに指示された場所へ向かう。
「俺はウル=グレイシヤ。よろしく。」
「知ってるよ。有名人だからな。しかしイケメンだなー!」
「一撃…お互い悔いの残らない試合にしよう!」
「ああ。」
そして二人の準備ができるとロイが手をあげる。
「それじゃいいか!試合始め!!」
ロイが手を下ろすと同時に、ケイとウルは走り出す。
「いくぞ!!ケイ!!これが俺の氷の剣の一撃だ!!グラキアリスセイバぁぉー!!!!」
「いくぜエリート!どんな固い氷だろうと俺の一撃で粉々に打ち砕いてやる!!!黄金に輝け俺の自慢の拳!!!ルミナスフィストぉぉー!!!」
お互いの小さく、そして静かに濃縮された一撃がぶつかり合う。凄まじい衝撃で、地面は割れ、空気が震える。周りの悲鳴も二人の耳には届いていない。二人の目は真剣だった。お互い男のプライドがぶつかり合う。学生レベルを越えた一撃にロイは驚きの声をあげる。
「ま、まさか!これほどとは!学生がだせるレベルの威力ではない!!!」
フィオナとタイガもまたケイの本気の一撃に目を見開き、興奮を露にする。
「ほ、本当に…本当にケイなの?!?」
「す、す、すげーぞ!!ケイ!絶対勝てぇー!!」
両者の力が拮抗し合うなか二人は叫ぶ。お互い考えていることは同じだった。この男にだけは負けたくないと。
『うぉぉぉぉ!!!!』
「俺は絶対にだれにも負けるわけにはいかないんだぁぁー!!!」
「うるせぇ…!俺は約束したんだ!姫様を守る騎士になると!!俺は…俺は!サンセットホープズを超える男だぁぁぁーー!!!」
衝撃が限界をこえ、激しい爆発と爆風がおこる。周りの悲鳴がおさまりつつある頃、ケイ、ウルの二人は気絶しながら立っていた。そんな二人を見てロイは判定を下す。
「…両者気絶。引き分けだな。」
判定と同時に生徒たちは、これまでにないほど喝采で盛り上がった。
「す、すげぇぇー!なんだ今の?!」
「ウルもだがケイ=リュウセイ!!何者だ?!?!」
「ケイ見直したぜ~!!」
「あの真剣な目いいよね!?」
「わかる~!!男の戦いってやつ?」
「ウル様はもちろんだけどケイもちょっとよくみたらかっこよくない??」
そんな声が生徒達の間で広がる中、ロイは静かにするように命令する。
(ロイ)「おまえら静かにしろ!誰かこいつらを保健室に運んでやれ。これでこの時間は終了だ!解散!」
こうしてこの授業は終わったのだった。ケイもウルお互いチームメイトに保健室へ運ばれていく。そんな中フィオナが静かに1人ごとを言うかのように呟いた。
「ケイのあんな姿、初めてみた…真剣な顔だった…」
「ケンカ強かったのは知ってたけどさ。それでもいままであいつなりに手を抜いてたのかもな。優しいからなー、ケイは。」
「ケイ、姫様のためって試合中言ってた。姫様のためにあんな真剣な顔するんだって思った…私の知らない一面だった…」
「……たしかにな。姫様のために騎士に本気でなりたいという気持ちがここまで伝わってきたぜ。」
「どうしてかしら…この気持ち…悔しさもあるけど、自分自身が恥ずかしい…!ケイが騎士になるという夢、私甘くみてた!ケイは…ケイは姫様のために自分の全てをかけて騎士を目指してたんだって思った!覚悟がたりなかったのは私だったんだって、そう思ったの。」
「……俺も同じことを考えてた。ケイがだれよりも覚悟があったんだなとそう思わされた。こんな悔しさ初めてだ。だからこそ俺たちも変わらなきゃならない。そうだろ。」
「そうね…私、私変わるわ!」
「ああ!俺もだ!」
フィオナとタイガは新たな決心をし、実技実習場を
後にしたのだった。
第7章いかがでしたでしょうか?第8章もなるべく早く仕上げます。