第64章「夕陽に輝く君へ」
(ケイ)「……シルファ?アクア?」
(シルファ)「ケイ!!」
(アクア)「無事だったみたいね!」
ケイは目を覚ます。目に最初に入ったのは椅子から立ち上がったシルファとアクアだった。そして自分がベッドの上で寝ていたこと気づく。
(ケイ)「……ここは?」
(アクア)「アーベント学園の保健室よ!生徒は全員避難して誰も校内にいないから使わせてもらったの!3時間くらい寝てたのよ!」
(シルファ)「あのリヴァイアサンを倒したあと、ケイは気絶したんです……ロイとジョーカーにここまで運んでいただきました!」
(ケイ)「……そうか。そのあとは二人がずっと看病してくれたのか。ありがとう。」
ケイは起き上がり保健室の時計をみる。もう16時を過ぎていた。保健室の窓からも夕陽の光が差し込んでいる。
(ケイ)「……タイガやフィオナ達は?」
(シルファ)「ほ、他の騎士たちと、この辺りの壊れた建物の修理や瓦礫の撤去など復旧作業をしていただいてます。」
(ケイ)「なるほど……シルファはともかくアクアは行かなくて大丈夫なのか?」
(アクア)「それがね!シルファがケイを看病すると言ったらフィオナとアイリスが私に見張るよう頼んできたのよ!」
(ケイ)「あ、あいつら……まぁフィオナ達も元気そうでよかったよ!」
そんな会話の中、アクアの携帯に電話が鳴る。どうやらロイから復旧作業の手伝いにくるよう頼まれたようだ。
(アクア)「ごめーん!少しだけぬけるわね!また戻ってくるわ!!」
そう言ってアクアは保健室を飛び出したのだった。
そして保健室にはケイとシルファだけとなる。
(シルファ)「アクアも大変ですね!忙しそうです!」
(ケイ)「たしかにな!俺だけ休ませてもらって申し訳ない……」
(シルファ)「そんな!ケ、ケイは本当に頑張ったじゃないですか!」
(ケイ)「はは。シルファ。ありがとう。……それにしても今日は一段と夕陽の光がまぶしいな。」
(シルファ)「たしかにそうですね!時間も時間ですし!」
(ケイ)「そうだな。実はこの学校の屋上から見る夕陽は絶景なんだ。俺も十分回復したし気分転換に屋上に見に行かないか?」
(シルファ)「えっ?!か、体大丈夫なんですか?」
(ケイ)「ああ!特にケガしたわけじゃないしな!」
(シルファ)「ふふ!わかりました!アクアには悪いですが行かせていただきます!」
ケイとシルファは保健室を出て、すぐ近くの階段をゆっくり上がっていく。そしてドアを開くと、正面には絶景の夕陽とそのオレンジ色の光でキラキラと輝く海、反対方向には町並みが広がっていた。ケイとシルファは奥まで歩いていき、フェンス越しにその美しい夕陽を眺める。
(シルファ)「わぁ……!凄いですね!!ここ!!」
シルファの表情は今日一嬉しそうだった。満面の笑顔で溢れかえっていた。美しい金髪が夕陽の光に輝き、そよ風でなびく。そんなシルファを見てケイは微笑み、思ったことを言う。
(ケイ)「ここに来てよかったよ。」
(シルファ)「そうですね……!ここからの夕陽、本当綺麗です……!」
(ケイ)「……そうじゃないさ。夕陽に照らされたシルファがあんまりにも綺麗だったからさ。よかったなって。」
(シルファ)「……ケ、ケイっ?!」
笑顔でそんな言葉を言うケイに、シルファの心臓はドキドキする。顔を真っ赤にし、目をそらしながら口にする。
(シルファ)「きゅ、急な不意打ちズルいです……い、いつも私ばかりドキドキしちゃいます……」
(ケイ)「いや本当のことを言ったまでさ!……そういえばはじめて話した日にもこんな夕陽だったな!」
(シルファ)「……カ、カーラ橋でですよね!」
(ケイ)「ああ!あの時の約束から少しは俺、シルファを守るにふさわしい騎士になれたか?」
(シルファ)「……!!」
その質問にシルファは一瞬下を向く。そしてケイに少し寂しいような、切ない微笑みを浮かべこう答える。
(シルファ)「……私なんかじゃ釣り合わないくらい、ケイはまぶしいですよ……沢山の人に好かれていて、あなたの周りには人が常に集まる……誰よりも輝いてますよ……それに対して私には何も……」
(ケイ)「……」
そんな思いがけない回答に空気は一瞬静まり返る。そんな中ケイは再び下を向いたシルファに自分の想いを伝える。
(ケイ)「……あのさ。」
(シルファ)「……」
(ケイ)「俺、シルファが好きだ。」
(シルファ)「……えっ?」
シルファは目を見開き顔を上げ、ケイの顔を見る。ケイはシルファに優しい眼差しを向けていた。
(ケイ)「シルファの全部が好き。ひかえめで優しいところ。自分より他人を大切にするところ。笑った顔。ヤキモチをやいてくれるところ。全部全部好きだ……他の人がどう思おうが俺だけはシルファの魅力を沢山知ってるから。そしてずっとその夕陽に輝く笑顔を守ってやるさ。」
ケイは夕陽に照らされながら爽やかな笑顔でシルファを真っ直ぐみつめる。そしてその一言にシルファは号泣するのだった。
あまりの嬉しさに涙が止まらなかった。そしてケイに思いっきり抱きつくのだった。そんなシルファをケイは両腕で優しく包みこむ。
(シルファ)「うわぁぁん!ケイ!!ケイ!!ケイ!!」
(ケイ)「泣くなよ。俺はずっとシルファの側にいるから。どこにもいかないから。」
(シルファ)「だって……だって!ずっと……ずっと待ってた!!やっと好きだって言ってもらえた!!ケイに好きだって!!」
(ケイ)「ああ!俺は誰よりもシルファが好きだ!!」
シルファは涙を流しながら顔を上げ、ケイの照れた表情をみる。シルファはケイの想いを知り、夢じゃないかと思う。だが夢ではなかった。ケイは右手でシルファの顎を優しく少し上げる。そして夕陽が二人を照らす中、ケイの方からシルファにキスをする。お互いの唇と唇が優しく重なり合う。
(ケイ)「……俺はシルファが欲しい!」
(シルファ)「……は、はい!私も同じ気持ちです!」
シルファは顔を真っ赤にし、笑顔でそう返事をする。そこからは言葉はなかった。しかしお互いに考えることは同じだった。愛し合う二人は夕陽の光に照らされながら本能に従ってお互いの唇を何度も何度も求め合うのだった……




