第61章「想いが力に」
生徒達が屋上に避難する一方、ケイは学校からすぐ近くの砂浜を歩いていた。そして水平線の向こうに見えるのは全てを飲み込むであろう巨大な津波だった。
(ケイ)「あれか……!あんなのが上陸したら学校の屋上に避難した生徒も……!!」
そうケイが海岸で津波を見つめ、独り言を言う中、電話が鳴る。アイリスからであった。
(ケイ)「アイリスか?!」
(アイリス)「ケイ!よかった……つながった!」
(ケイ)「今どこにいる?!」
(アイリス)「あと10分でアーベント学園につくわ!そっちの状況は?!」
(ケイ)「間に合わないか……あと3分くらいといったところか!!バカでかい津波が海岸に迫っている!!」
(アイリス)「な、なんですって?!大丈夫なの?」
(ケイ)「……津波を拳で止めてみせる。……みんな生き残るにはやるしかないしな。」
(アイリス)「……わかった。私はケイを信じてる。約束して!必ず……必ず生き残ると!!」
(ケイ)「ああ!約束する!」
そんな電話の一方、学校の屋上ではパニック状態だった。
(男子生徒1)「な、なんだ!!あの津波!!」
(男子生徒2)「こ、ここもヤバくないか?!」
(女子生徒1)か「私ここで死ぬの……?!嫌っ!!」
(女子生徒2)か「だ、誰か助けてぇー!!」
そんな状況の中、校長は音声拡張機を片手に、生徒に呼び掛ける。
(校長)「皆さん!落ち着いて下さい!砂浜を見て下さい!!」
その声に生徒達は砂浜にいるたった1人の男に注目が集まる。
(校長)「あれはミカヅキ先生です!そして実は彼の正体はあの伝説の騎士、サンセットホープズのケイ=リュウセイ様です!必ず……必ずこの津波をなんとかしてくれます!だから皆さん!!落ち着いて下さい!!」
その呼び掛けに生徒達は驚き、まるで時が止まったかのような空気となる。そしてこの場にいる誰もがこのタイミングで伝説の騎士が現れたことで一筋の光が見えた気がした。
(校長)「皆さん!!彼をここから応援して下さい!!我々が今できること!!それは応援しかありません!!お願いします!!」
校長は生徒達に向かって叫ぶ。その真剣な想いは生徒に通じたのだった。
(コウ)「ミカヅキ先生!!がんばれぇぇーー!!」
(ラナ)「あんな津波なんかに負けないで下さい!!先生ぇぇーー!!」
(ガイ)「あんたは英雄なんだろぉぉーー!!まけんなぁーー!!」
(1年2組男子生徒1)「先生ぇぇーー!勝てぇぇー!!」
(1年2組女子生徒1)「ミカヅキ先生ぇぇーー!!先生なら絶対勝てますぅぅーー!!」
(ヴァイス)「ミカヅキ先生ーー!あんたはスゲーよ!本物だったよ!!だから最後まで憧れでいてくれぇぇーー!!」
1年2組の生徒だけでなかった。全ての生徒がケイに学校の屋上から大声援を送る。その声は砂浜にいるケイに届いたのだった。ケイは学校の屋上を見上げ呟く。
(ケイ)「……あいつら!!……はは!これは絶対に津波なんかに負けられないな!!」
そしてケイは全身をルーチェをまとう。全身が黄金のオーラで包まれる中、黒髪がまるで夕焼けの太陽の炎ように輝く赤色に変わりゆらめいている。その輝きはいつも以上だった。
(ケイ)「想いが力に変わるか……」
自身に大きな津波が目の前に迫る。だがケイは落ち着いていた。今の自分ならやれると確信していたからだ。ケイは肉体強化により砂浜から津波の中心へと大ジャンプ。そして右の拳を極限まで輝かせ叫ぶ。
(ケイ)「みんなの想いを力に!!もっと輝けぇぇーー!キングダムっ!!フィストぉぉーー!!」
拳と巨大な津波が激突。それはすさまじい衝撃だった。周囲には風圧が生じ、空気が震える。そんな中ケイは叫ぶ。
(ケイ)「貫けぇぇぇーー!!!!」
一瞬、まばゆい光に包まれる。その光は優しい輝きだった。それからその光がおさまり、屋上にいる生徒達や教員は津波が一体どうなったのか、その光景を目にする。
(コウ)「……あのバカでかい津波が消えた?!打ち消した?!」
(ラナ)「や、やった!!先生がやったんだわ!!」
(ガイ)「うおぉぉーー!!先生ぇぇー!!やっぱりあんたは英雄だぜ!!」
(ヴァイス)「ミカヅキ先生……やっぱりあんたかっこいいよ。」
(校長)「やりましたね……ミカヅキ先生……。」
学校の屋上では喜びの声とケイの称賛の声であふれていた。一方津波がおさまった後ケイは莫大な力の気配を感じた。
(ケイ)「この気配……」
次の瞬間、海から勢いよく飛び出し、空中にその姿を現す。空中に浮かぶその海の魔物はまさしくリヴァイアサンだった。巨大なクジラに近い外見だが明らかに違う特徴がいくつかある。龍のような長い尾、4枚の白い翼、腹は陶器の破片を並べたようで、背中には盾の列のような鱗が密に並んでいる。口には恐ろしい歯が生えており、目は血のように真っ赤だった。
(ケイ)「いよいよリヴァイアサンのお出ましか!」
そうケイは言い、いよいよリヴァイアサンと戦うことになるのだった。




