第60章「ミカヅキ先生の正体」
ミカヅキ先生の正体とは……
シルファから連絡があった次の日の朝、ケイは1年2組の朝のホームルームを他の先生に任せ、校長室にいた。リヴァイアサンについて報告していたのだ。
(校長)「な、なんと……!それは本当かね?!ケイ殿!」
(ケイ)「はい!昨日、姫様より連絡がありました。……それからここではミカヅキでお願いします。」
(校長)「おっと!そうだったね!ミカヅキ先生!それでそのリヴァイアサンはいつ現れるか分かるのかね?」
(ケイ)「それがどうやら大きな地震が起こったときのようです。もし地震が起こったら生徒を先に避難させて下さい。俺が戦います。」
(校長)「……それは大丈夫なのかね?たった1人で!」
(ケイ)「地震が起こったら、他の騎士達もくるようです。だからそれまでは1人で食い止めます!」
(校長)「う、うむっ!わかった!!こちらは生徒の避難に専念させていただこう。」
ケイは校長との話が終わり校長室をでる。1限の教室へと歩きながら真剣な表情で呟く。
(ケイ)「誰も死なせない……絶対に。」
1限から4限まで無事に終わり今は昼休みである。天気は快晴。アーベント学園の屋上でコウ、ラナ、ガイは昼食を食べていた。
(コウ)「何か今日、ミカヅキ先生変じゃなかったか?」
(ガイ)「ああ!なんていうかピリついていたな。」
(ラナ)「わかるわ。別に機嫌が悪いわけではなさそうだったけど。どうかしたのかしら?」
(コウ)「なんていうか必死だったな。」
そんな昼食の時間が終わり、5限の実技実習の準備のため教室へ戻ろうとした時だった。突如大きな揺れを感じたのだった。地震である。
(コウ)「な、なんだこの揺れ!!」
(ラナ)「地震?!」
(ガイ)「にしてはなんか普通じゃないぜ!!」
そして校内に緊急の放送がなる。その声は校長だった。
(校長)「皆さん!!今すぐ自分の教室に戻って下さい!!緊急事態発生です!!これは避難訓練ではありません!!」
それから10分もしない内に、全生徒は自分の教室へ戻る。コウ、ラナ、ガイも1年2組の教室に戻ったがすでにケイは教壇の前に立っていた。その表情はいつもと違い真剣だった。全員が着席するのを確認してケイは話す。
(ケイ)「みんなに話がある!緊急事態だ!」
(男子生徒1)「先生!ただの地震ではないんですか?」
(ケイ)「地震以上だ!ここから見える海にリヴァイアサンが現れた!」
(女子生徒1)「リヴァイアサン?!」
(コウ)「リヴァイアサンってあの伝説の海の怪物?!」
(ラナ)「そ、そんな……!!」
(ケイ)「先ほど姫様から連絡があった!全騎士がこちらに向かっている!!お前らにはこれから集団で避難してもらう!!」
(ガイ)「先生は……先生はどうするんですか?!」
(ケイ)「……俺は戦う!!お前らが生き残れるように!!」
その言葉に生徒達は心が揺さぶられた。自分を犠牲にしてまで生徒を救おうとする姿に感動したからだ。そしてある生徒が口を開く。
(ヴァイス)「先生!!俺も戦うぜ!!」
(ガイ)「なっ?!ヴァイス?!」
(ラナ)「ヴァイス!!無茶よ!!相手は伝説の怪物よ?!」
(ヴァイス)「わかっている!だがな……俺はミカヅキ先生を尊敬している!だから死なせたくないんだ!!」
(ケイ)「ヴァイス……おまえ。」
(コウ)「……俺も戦う!」
(ラナ)「コウまで?!どうしてなのよ!?」
(コウ)「他人のために命をかけるその男気に感動したんだ!!」
(ガイ)「……コウ!わかったぜ!俺も戦う!」
(ケイ)「……コウ!ガイ!」
(ガイ)「お前らはどうなんだ!?ミカヅキ先生だけ置き去りにして逃げるのか?それでも胸張って騎士を目指してるって言えるのか?ああっ?!」
(ラナ)「……ガイ!」
ガイはクラスメイトに呼び掛ける。それから決意するのだった。ケイと一緒に戦うと。
(女子生徒2)「先生だけ置き去りなんかしないんだから!!」
(男子生徒2)「何かできることあったら言ってくれ!先生!」
そんな生徒達の声にケイは答える。その表情は優しかった。
(ケイ)「……お前ら成長したな。」
ケイのその一言に1年2組の生徒達は静かに耳を傾ける。そしてケイは話を続ける。
(ケイ)「……騎士として一番大切なことは気持ちだ。誰か大切な人を守るために勇気を出すこと……。その気持ちをいつまでも忘れないでほしい……。」
ケイはエネルギアのこもった隠密用の眼鏡に手を置き、ゆっくり外す。そして伝える。大切な生徒に……
(ケイ)「勇気あるお前らはもう立派な騎士だよ。」
眼鏡を外したケイを見て、1年2組の多くの生徒達は驚きのあまり目を見開き一瞬言葉を失う。感動のあまり涙を流す女子生徒もいた。そしてこれが夢ではなく現実だとわかり、コウは声を震わせながら尋ねる。
(コウ)「……あ、あ、あなた様はもしかして……も、もしかしてケイ=リュウセイ様ですか?!?!」
(ラナ)「……で、伝説のサンセットホープズの?!あの?!」
(ガイ)「タ、タイムトラベラーズ事件でゼファーを、そして無敵のアイリスを倒して史上最年少で騎士の頂点に上り詰めたトラモント王国の英雄!?……ほ、本物?!」
(ヴァイス)「……まじか……先生が……」
名もない騎士の正体が伝説の騎士と知り、教室内はパニックになる。そしてケイが少し目を反らしながら生徒達に言う。自分の正体を。
(ケイ)「……ああ。そうだ。まぁリュウセイってのは実は嘘なんだ。色々事情があってな。本当はケイ=ミカヅキって言うんだ。」
(コウ)「そ、それより何で……何でこの学校に……!!」
(ケイ)「それは俺の部隊にスカウトに……」
ケイがそう言いかけた時だった。再び大きな地震が起こったのだ。そして放送が再び鳴る。
(校長)「皆さん!!緊急事態です!今の地震で大きな津波がこちらに向かってきてます!!すぐに屋上に避難してください!!この学校は広いので全生徒が収まるはずです!!」
そんな放送を聞き、ケイは1年2組の生徒達に話す。
(ケイ)「津波か。今回はお前らのその気持ちだけもらっておくよ。まだ一応生徒だからな。生徒を守るのは先生の仕事だ。お前らは屋上に避難しろ!俺は砂浜に向かう。」
(コウ)「先生!!俺たちも……」
(ラナ)「ダメよ!!先生の足を引っ張るだけ……」
(ガイ)「……津波を前にできることは俺たちにはない。」
こうして1年2組の生徒を屋上へ避難させ、ケイは砂浜へ向かったのだった。
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