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第54章「本能と情熱……」

(シルファ)「ケイ!!アイリス!!」


閉会式が終わり、観客が会場の外に出始めた中、シルファは2人を必死に探していた。


……アイリス、嘘ですよね?だって約束してくれたじゃないですか。ケイのことを好きにならないって。応援するって。


頭の中はそればかり……あまりの辛さにシルファは泣きそうになった。そして同じく誰かを必死に探す、見覚えのある後ろ姿を見かける。


(シルファ)「フィオナ?!」


その声がする方向へフィオナは振り返る。その表情は驚きに満ちていた。


(フィオナ)「……シルファ!!」

(シルファ)「ケ、ケイは?!」

(フィオナ)「そ、それが閉会式が終わってすぐ用事があるといってどこかに行ったのよ!この人混みの中はぐれちゃって探してたの!あなたもなの?!」

(シルファ)「……は、はい!あの!一緒に探しませんか?!多分アイリスも一緒のはずです!」

(フィオナ)「……こ、今回限りよ!!」


こうしてシルファとフィオナは協力して探すことになったのだった。



一方ケイとアイリスは夜空に浮かぶ月の光を浴びながら、アマネセル学園から近い海沿いを歩いていた。


(アイリス)「うーん!疲れたぁー!試合終わったわねー!」

(ケイ)「そうだな!やっぱりアイリスは強かったんだな。」

(アイリス)「だ、だから前も言ったじゃない!私はサンセットホープズだって!」

(ケイ)「はは!そうだったな!!身に染みてわかったよ!」

(アイリス)「わ、わかればいいのよ……!」

(ケイ)「あと先輩として尊敬してる……。最後握手したときさ。この人は誰よりも努力して来たんだと思ったんだ。……その手。どれほど剣の素振りしたんだろって思うくらい固かった。」

(アイリス)「え……?……で、でも女の子らしくないでしょ?可愛くないでしょ?」


アイリスはケイのその一言に驚きを隠せなかった。女の子らしくないタコや豆だらけの固い手のひら。ずっとアイリスはコンプレックスだったからだ。それに対してケイはアイリスを優しく見つめ、微笑みながらこう答える。


(ケイ)「そんなわけないだろう?その手は誰かを守るため必死にこれまで努力した手だ。俺は好きだぜ。その手。きれいだと思う。なによりも。」

(アイリス)「なぁ!な、何言ってるのよ!?バカぁー!」


アイリスは顔を真っ赤にしながら、ケイから目を反らす。この手が好き?きれい?そんなこと言われたことがなかった。心臓の鼓動が途端に早くなる。そして今の今まですっかり忘れていたあの試合の時の告白を思い出す。


(ケイ)「そういえば、アイリス!」

(アイリス)「ひゃい!!」

(ケイ)「な、なぜかむ?!」

(アイリス)「き、聞き間違えよ!!そ、それで何なの?!」

(ケイ)「い、いや……この散歩どこに向かってるんだろうと思ったんだが……」

(アイリス)「な、なんだ。びっくりしたわ。カーラ橋よ。ケイ、好きでしょ?」

(ケイ)「……まあな。」


そんな話をしているうちに、カーラ橋につく。誰もいない静寂な雰囲気の中、橋から月の光が輝く海をみていた。


(アイリス)「……きれいね。」

(ケイ)「……ああ。クリスマスイブの時、タイムトラベラーズのせいで一度ダメになったが、シルファ達のおかげで元通りだな。本当によかったよ。」


シルファという言葉にアイリスはドキっとする。この切ない気持ちは嫉妬だった。そんな中アイリスはケイに尋ねる。


(アイリス)「……ねぇ。ここからみる『夕陽』と『月』のどっちが好き?」


そう言いアイリスが真剣なまなざしでケイを見つめた時だった。


「いた!!アイリス!!」

「ケ、ケイ……」


その聞き覚えのある声に2人は振り返る。そこにはシルファとフィオナがいたのだった。


(アイリス)「……」

(ケイ)「シ、シルファ!フィオナ!なんでここに?!」

(フィオナ)「あ、あんたこそ何でこんなところにいるのよ!アイリスと!!」

(ケイ)「いや散歩に誘われて!今後について何か話すのかと……」

(フィオナ)「おバカぁー!そんなわけないでしょ?!あんたアホなの?!なんで行くのよ!?」


そんなフィオナの嫉妬の罵声が飛び交う中、シルファは涙をこらえ下を向きながらアイリスに対して口を開く。それはシルファとフィオナが一番聞きたかったことだった。


(シルファ)「……嘘ですよね?……アイリス。」

(アイリス)「……何が?」


アイリスは目をそらしながら答える。そんなアイリスをみてシルファははっきりと大きな声で尋ねるのだった。


(シルファ)「あなたがケイのこと好きって言ってたことに決まってます!!」

(ケイ、フィオナ)「!!」


そしてアイリスはシルファを少しの間見つめ答える。


(アイリス)「好きよ。世界中の誰よりも……。」


その一言を聞いてシルファは我慢が爆発した。その目には涙が溢れていた。


(シルファ)「アイリスの嘘つき!!私を騙してたんですね!!」


ケイとフィオナは初めてみた。こんなシルファを。驚きのあまり言葉がでなかった。そんな中アイリスは伝える。自分の本心を。


(アイリス)「騙してない!!!私だって最初は応援してたわよ!!!だけど彼に惹かれてしまった!!好きになっちゃったの!どうしようもないじゃない!!」

(シルファ)「どうしようもないじゃないです!!約束したじゃないですか?!」

(アイリス)「私だって約束は守りたいよ?!でも無理なの!!わかっていてもこの想いとまらないの!」

(シルファ)「それでも応援するのが親友でしょ?!」

(アイリス)「あなたに……あなたに私の気持ちの何がわかるの?!親友の好きな人を本気で好きになった気持ちが!どれほど辛いかわからないわ!!」

(シルファ)「!!」


最後のアイリスの一言にシルファは何も言いかえせなかった。そんな中アイリスはケイの方を真っ直ぐみる。その目には涙が溢れていた。


(アイリス)「ねぇ……ケイ……。さっきの質問覚えてる?……ここからみる『夕陽』と『月』どっちが好き?」

(シルファ)「……えっ?」

(ケイ)「な、何言って……」

(アイリス)「じゃあ……『月』って答えてよ。私達は『月』の運命でつながってるんだから……」


そう言ってアイリスはケイの胸に両手をおく。そしてシルファとフィオナの目の前でケイとアイリスはお互いの唇と唇が優しく重なり合うのだった。


(ケイ)「……ア、アイリス!?」

(アイリス)「……ムーンアイランドのヒマワリの花言葉知ってる?『あなただけを見つめてる。死ぬまで永遠に……』。あなたは私にとってそれくらい大切な人なの……。誰にも渡さないから。」


そしてアイリスは強引に再びケイにキスをする。それは本能にしたがったかのような情熱的なキスだった。


シルファとフィオナは頭が真っ白になる。そしてシルファはそんな2人を見て想いが再び爆発する。


(シルファ)「……や、嫌だ、嫌だ、嫌ぁぁぁぁーー!!」


こうしてシルファはいつまでも泣き続けるのだった……

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