第5章「シルファとアイリス」
「ケイ…」
ここはトラモント城内、シルファは少し緊張した様子でロイを待っていた。ロイはサンセットホープズの中で唯一城内で暮らしている。そして今日ロイはアマネセル学校のケイのクラスで初授業をする予定だと聞いている。ケイがどうだったか知りたい、その気持ちで一杯だった。そして17時頃、いよいよロイが戻ってきた。
「姫様ただいま戻りました。」
「ロイ、おかえりなさい。今日はいかがでしたか?」
「そうですね。名門校だけあって悪くはないですよ。なんというか自分の夢を持った顔つきの学生が多かった印象です。そういえば姫様がおっしゃっていた例の少年に学生証お返し致しましたよ。」
「そ、その彼は…?」
「あの少年、ケイ=リュウセイには強い意志を感じました。それから騎士になると姫様と約束したとおっしゃっていました。」
シルファはトマトのように顔が赤くなっていた。自分のために本気で騎士を目指すというケイの気持ちを改めて知って嬉しかったのである。幸いにも鈍感なロイは気づいてはいなかった。その後彼は食事までまだ時間があるため明日の授業の準備を自室でしてきます、失礼しますと言ってシルファの前から去っていった。
「ロ、ロイには自分の気持ちバレてないですよね…」
そんな独り言を呟きながらシルファは自室に戻る。そして窓の外のベランダに、幼なじみのある美少女がいることに気づいた。
「ヤッホー!シルファー!!元気~??」
「ア、アイリス!またベランダから!」
「まぁまぁ!そこは気にしない!それと二人しかいないし、敬語なしでいいわよね?」
彼女の名前はアイリス= セレナータ。黒髪のツインテールに色白な肌、凛々しい整った顔、スラッとした手足に無駄のないスタイルの外見である。また17歳という最年少でサンセットホープズの1人に到達した騎士の少女であり、シルファとは幼い頃から付き合いがあるため数少ない友人でもある。そのアイリスは爽やかな笑顔でシルファに今日きた理由を話す。
「王様に今日話があると言われてきたの!だから今日夕食にお邪魔するわよ。多分サンセットホープズ全員くるはずよ。」
「そうでしたか。久しぶりですし是非ゆっくりしていって下さい。」
「それはそうとなんかシルファ嬉しそうね?どうしかしたの?」
「い、いえ!!いつも通りですよ?!」
「にしては顔もなんか赤いわよ?」
シルファが真っ赤な顔で動揺してる姿をみて、そんなわけはないかと思いながらもアイリスはさらっと冗談を言ってみた。
「ん?恋でもしてるの?」
「な、な、なっ!!何言ってるんですかー?!そんなわけないですよ!」
シルファにしては大きな声を出して否定したのだったが、表情や仕草などでアイリスにとってはバレバレである。
「ま、マジ…?あんたってわかりやすいわね。バレバレよ…」
「えっ?!?!」
「気づかないのはロイくらいでしょうね…肝心のそのハッピーミラクルな相手は誰なのよ?」
「それは……アマネセル学園の生徒で騎士を目指している方です」
「な、何よ?学生??まだ騎士ですらないじゃない!?シルファ!絶対ダメよ!釣り合ってなさすぎるわ!」
「ケイとはカーラ橋で会った時、約束しましたから!!今ロイが彼の学校の臨時ですが教師をしてもらっています!必ずケイはそこでロイから沢山のものを吸収して強くなって騎士になるはずです!だからこの初恋をあきらめるなんて絶対嫌です!」
シルファにしては強気だった。これだけは譲らない、そういった強い意志をアイリスは感じた。
「ふーん…そんなにシルファに想ってもらえるなんてね!まぁでもわかったわ、そんなに言うならシルファを応援するわよ!」
「ありがとうございます!でもこの事は私のトップシークレットなことなので他の方には言わないで下さいね!」
「私からもかわりといっちゃなんだけどお願いがあるの。もしそのケイって子が奇跡的に騎士になれたら私の部隊にいれてもいいかしら。彼に興味あるわ。」
「わかりました!でも好きになっちゃダメですからね!?」
「はいはい…」
そんな話をしているうちに食事の時間となったのであった。シルファは普段は広いダイニングルームに自分1人かロイと一緒だが今日はサンセットホープズ全員と父が来るため賑やかに感じた。全員が揃ったことを確認し、王は話す。
「集まってくれたことにまず礼を言おう。今日集まってもらった理由は2つあるがまずは騎士の今後の育成方針についてだ。サンセットホープズは王国最大戦力であると同時に各部隊をまとめ育成することも求められているな。そして今までは何でもある程度できるような騎士の育成を目指してきた。しかし時代は大きく変わりつつある。あらゆることに対処するためには何か突き抜けた力をもった人材が必要であるのだと最近私は感じる。そこでサンセットホープズのメンバーには各部隊ごとに個性伸ばすような指導をしてほしい。いかがだろうか。」
この考えにロイとアイリスは反応する。
「自分は特に問題ありません。賛成です。」
「問題ないですわ。そちらの方がよいかと私も思います。」
残りのサンセットホープズの3人も同じく賛成だった。
「理解の方感謝する。では次の議題に入らせてもらおう。簡単にいうと騎士のスカウトの件についてである。ロイには今アマネセル学園という高校で臨時だが教師を勤めさせてもらっている。この学校は優秀な騎士を沢山排出している。通常騎士になるには騎士科を卒業しなければならないのだが、優秀な場合、特例で卒業なしでもスカウトしたいと思うのだがいかがだろうか。」
「!!!」
その言葉に一番反応したのはシルファである。もしかしたらという期待が膨らむ。王はそんな驚くシルファを少し見てから続きを話す。
「ロイの話によると9月の下旬に校内で騎士科によるエネルギアチャンピオンシップという大会が開催されるそうでな、サンセットホープズの諸君らには審査員をお願いしたい。そこでもし目にとまる学生がいたら1年生でもスカウトしても構わない。いかがだろうか。」
「是非お引き受けさせていただきますわ。面白くなりそうですしね。」
シルファにウインクをしながら答えたアイリスに続いて、ロイ、他の3人のサンセットホープズのメンバーも賛成したのだった。
その後食事会が終わり、みんなが帰っていったあともシルファは胸の鼓動が止まらなかった。




