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第46話「タイムトラベラーズ(英雄)」

(アイリス)「……勝った……の?」


アイリスは信じられない奇跡に漠然と立ち尽くしていた。


(フィオナ)「……これで他の場所に飛び去ったデーモンもきえたわよね……」

(タイガ)「……ああ!やった……やったぞ!ケイ!フィオナ!」


そんな中ケイはあまり嬉しそうではなかった。その表情は何か不審に思っている表情だった。


(ケイ)「……おかしい。」

(アイリス)「な、何がなの?」

(ケイ)「奴らがここを襲った理由さ。ほかの場所もそうだ。なぜなんだ。」

(アイリス)「た、たまたまじゃないの?!」

(タイガ)「ふ、深く考えすぎじゃねーのか?!」

(ケイ)「……まるで騎士たちを誘き寄せたかのように……っヤバい!!!」


そこでケイは何かに気づく。それは一番考えたくないことだった。


(アイリス)「な、何がまずいのよ?」

(ケイ)「馬鹿か!!おまえらサンセットホープズは城から騒ぎのある場所へ援護にいった!!つまり城は防御が手薄なんだよ!!これが何を意味するかわかるか?!」


ようやくアイリスも気づく。ケイが言いたかったことが。


(アイリス)「……最初から城の守りを手薄にするのが目的だったの?まさか?!」

(ケイ)「そうだ!!」

(タイガ)「だ、だか!城にはゼファーがいるだろ?!」


その発言にフィオナは青ざめる。アイリス同様フィオナも理解したのだった。


(フィオナ)「……裏切り者はZのイニシャル……『ゼファー』だったのね。」

(ケイ)「……ああ。」

(タイガ)「な、なんだと?!」

(ケイ)「それ以外考えられない。ゼファーなら立場上アスカがどこにいるかわかるし近づきやすいからな。そして『時の因子』はおそらくアスカだけじゃない。」

(アイリス)「ど、どういうことなの?」

(ケイ)「ゼファーはアスカがこっちの世界にくる前からサンセットホープズだった。つまり城内に他の『時の因子』がいたってことだ。」

(フィオナ)「監視ってことね!」

(ケイ)「……時がくるまで奴は監視してたんだ。そのターゲットを。そして2つの因子がそろったこのタイミングで仕掛けてきたんだ。」

(タイガ)「そ、そのもう1人の『時の因子』ってだれなんだ?!」

(ケイ)「俺の勘が正しければ最悪だな。それはな……シルファだよ。」

(フィオナ、タイガ、アイリス)「!!!」



一方城内ではゼファーとシルファ、アスカがシルファの自室で対面していた。シルファは目に涙が浮かべて尋ねる。


(シルファ)「……嘘ですよね?ゼファー。」

(ゼファー)「いや。これが現実だ。城の警備をしていた私の部下はすべて殺した。」

(アスカ)「ど、どうして……」

(ゼファー)「……世界を変えるためだ。このどうしようもない世界をな。ずっとこのタイミングを待っていた……。おまえら2人は来てもらう。タイムマシーンを動かすためにな。」


そうゼファーは言い残し、睡眠作用のあるスプレーを2人に吹きかける。そして2人の意識がなくなったことを確認して空間伝送装置を使い、城内から3人とも消え去るのだった……


時刻は18時半。すっかり日が沈み夜になった頃ケイ、フィオナ、タイガ、アイリスは意識を失ったロイを連れて、トラモント城へ急いで戻る。その途中アイリスはアクアとジョーカーに電話し早急に全騎士を城へ帰還させるよう連絡したのだった。


(アイリス)「な、なんなのこれは?!」


ケイ達は城の門に着く。そこで見た光景は悪夢そのものだった。すべての騎士が殺され、地面に横たわっていたのだ。その頃には他の対タイムトラベラーズ特別部隊、そして一般の騎士のすべてが集合していたため悲鳴をあげパニックになっていた。アクアとジョーカーも城の門の前で立ち尽くして言葉を失っている中、アクアはアイリスが戻ってきたのに気づく。


(アクア)「アイリス!!これはどういうことなの?それにロイもどうしたのよ!?」

(アイリス)「ロイは無事よ。それより裏切り者はゼファーだったのよ。」

(ジョーカー)「アイツがタイムトラベラーズだと?!バカなっ!!」

(アイリス)「そしてアスカとシルファが危ないのよ!!」

(アクア)「えっ?シルファもですって?!どういうことなの?!」

(ジョーカー)「……『時の因子』は2人だった、そういうことだろ?だからゼファーはずっとサンセットホープズだったんだな。納得だぜ……。」


そして城外にいるある騎士の1人が月夜の空を見上げて叫ぶ。あれはなんだ?と。その場にいる全員がその騎士が指を差した方向に注目する。


(ケイ)「な、なんだ?!あの空飛ぶ巨大な船は!!」

(アイリス)「そ、それより見て!ゼファーが乗ってるわ!!」

(ジョーカー)「やはりあいつが!!くっそぉぉーー!」

(フィオナ)「シルファとアスカもいるわ!!」

(タイガ)「すべてあいつの手のひらの上だったのか!ちくしょーー!!」


ゼファーはタイムマシーンに乗り、空から地上を見下ろしながら、喜びの笑みを浮かべていた。


(ゼファー)「ついに……ついにこの時がきた。長かった。これでようやく……くっくっく!!目覚めよ!シルファ!!アスカよ!!」

(シルファ)「……こ、ここは?」

(アスカ)「……な、何が?」

(ゼファー)「ここはタイムマシーンの上だ。さぁ!能力をこのタイムマシーンに注ぎ込め!過去を操るアスカとそのエネルギアを高めるシルファの力が組み合わせれば理論上可能なはずだ!2000年前の過去にいくことが!!もし逆らう場合、トラモント王国の民は街のありとあらゆる場所に仕掛けた時限爆弾が作動し皆殺しだがな。」

(アスカ)「ひ、卑怯です!!」

(シルファ)「ど、どうして?!どうしてなの?!ゼファー!!」



地上では、ほとんどの騎士が成すすべがなくあきらめかけていた。当然である。相手は裏切り者とは言えサンセットホープズ。しかも空の上である。約1300人の騎士は皆無力だった。


(ウル)「ここまでなのか……?」

(アラン)「空の上……どうしろってんだ。」

(ルナ)「私は無力だ!!」

(クルミ)「ひ、姫様ぁぁー!」

(ボルグ)「くそぉぉー!」

(サイ)「このままでは……ジュリー!おまえの遠距離攻撃なら……」

(ジュリー)「ダメよ!!シルファとアスカを盾にされたら大怪我じゃ済まないわ!」

(アロン)「どうする?!どうすればいい?!」


そんな中、希望を捨てていなかった騎士がいた。グレンである。


(グレン)「……僕の力なら飛べる!!」

(ジョーカー)「そうか!!おまえの力は空気を操る力!たしか飛行もできたよな!?」

(グレン)「はい!しかし拉致されているのは2人!僕の力ではおそらく1人を空中で救出するのが精一杯です!」

(アクア)「それにゼファーにそもそも勝たなければ、シルファとアスカは自由にならないわ!!」

(ジョーカー)「ゼファーの能力は簡単に言うと『反射』だ!バリアを作って放出したり、停止している物質に運動量を与えて動かすことができる。しかしやはり一番やっかいなのがバリアだな。ありとあらゆる攻撃は無効化され、倍返しで返ってくる!!」

(アクア)「あとゼファーに直接触れたら終わりよ?体内の血液が反射で逆流してしまうからね!」

(グレン)「くっ!……突破できるのか?自分だけで……。」


ジョーカーとアクアの言葉でグレンの心が折れかけた時だった。


(ケイ)「……俺がゼファーを倒す。」

(アクア)「……えっ?!」

(ジョーカー)「お、おまえの能力は肉体強化のはずだ!たとえ足を強化して大ジャンプしても、あの距離は届かない!」

(ウル)「何か策はあるのかい?!ケイ!」

(ケイ)「……1つだけ方法があるんだ。」

(ルナ)「な、なんだと?!」

(サイ)「何をするつもりだ?!」


月が夜を照らす中この場にいる誰もがケイの言っていることが理解できなかった。普通に考えればそんなこと不可能だと思うだろう。当然だ。しかしそんな中ケイなら可能だと信じた騎士がいた。フィオナ、タイガ、アイリスである。


(アイリス)「……できるわ。ケイなら。」

(アクア)「アイリスまで!?どうしてなの?!」

(ジョーカー)「意味がわからない!!」

(タイガ)「……あれ使うんだろ?!ケイ!!」

(クルミ)「ほ、本当に可能だというのですか?!」

(フィオナ)「……ケイ!!お願い!姫様とアスカを!!」

(ケイ)「もちろんだ!必ず救う!……グレン!!」

(グレン)「な、なんだい?!」

(ケイ)「俺がゼファーを倒す!!そして万が一あの船が制御を失い、姫様とアスカが危ない状況になったら迷わずアスカを救ってくれないか!?俺は姫様を救う!!」

(グレン)「わ、わかった!!君を信じるよ!!」

(アイリス)「行きなさい!!ケイ!!今こそ真の切り札を解放する時よ!!」


アイリスの合図でケイは目をつぶり集中する。徐々にエネルギアが高まっていくのを周囲は感じていた。


(ケイ)「……月よ。……俺に力を。」


その瞬間、ケイの全身が輝き始めた。その光は青白い輝きを放つ。まるでムーンアイランドに咲くヒマワリのように。そして背中には同じ青白い輝きをもつ4枚の大きな三日月の形をした羽を発現させるのだった。黒髪をそよ風になびかせ、青白く光輝くオーラをまとうその神秘的な姿にその場にいる誰もが言葉を失い圧倒されていた。


(ケイ)「……行ってくる。」


そしてこの世のものとは思えない美しさを持つを羽をはばたかせ上空へと飛翔する。そのスピードは桁違いだった。




(ゼファー)「ん?……何だ?!……あれは!!まさか!!」


ケイはゼファーと対面する。どうやらシルファもアスカも無事のようだ。


(アスカ)「ケイさん!!その羽はあの時の!!」

(シルファ)「ケ、ケイなの……?そ、その姿はいったい……!?」

(ケイ)「……シルファ、アスカ。助けにきたぞ。」

(ゼファー)「バ、バカな……そんなはずはない。それはミカヅキの羽!ミコト=ミカヅキは始末したはずだ!!な、なぜ貴様がその羽を持つ!?」

(ケイ)「……その人は母だからさ。俺のな。」


切ない表情でゼファーに答える。その姿にシルファとアスカは目が離せなかった。


(ジョーカー)「ふ、ふざけるなぁぁー!!!グロリアスリフレクタぁぁーー!!!」


ゼファーはケイにエネルギアでできた無数のバリアを展開し、放出する。しかしケイはその場から動かず静止していた。その結果全身に無数のバリアが被弾するのだった。


(ゼファー)「くっくっく!!まともに直撃!!これでやつは!!」

(シルファ)「いやぁぁーー!ケイ!!」

(アスカ)「ケ、ケイさん!!」


その後、直撃による爆発の煙がなくなり、ケイの姿が現れる。その姿は全くダメージがないようだった。ゼファーはその信じられない光景に絶望していた。


(ゼファー)「う、嘘だ……こんなことが!!」

(シルファ)「む、無傷?!」

(アスカ)「す、すごい!」

(ケイ)「……ゼファー。無駄だ。おまえは知ってるはずだ。エネルギアをすべて無効化にするこの力を。そして……」


ケイはゼファーの背後へ瞬間移動する。そして右手をゼファーの肩にふれるのだった。


(ケイ)「……これでおまえはもう月がある間エネルギアを発動できない。」

(ゼファー)「そ、そんな!!バカなぁぁー!」


ケイはゼファーをつかみ、船の外へ放り投げる。ゼファーはエネルギアを発動できず、無力だった。さらに空中で落下するゼファーの目の前にケイは瞬間移動しケイは右拳の青白いオーラをより一層高める。


(ケイ)「……罪を永遠に牢獄の中で償うんだな。ゼファー。」

(ゼファー)「や、やめろぉぉー!!」

(ケイ)「月の力にひれ伏せ!!オルゴンフィストぉぉー!!」

(ゼファー)「ぐはっ……!!」


渾身の一撃がゼファーの腹部に直撃。ゼファーは重力に従って落下する力も加わり、すさまじい勢いで地面に衝突する。もう意識はなく気絶していた。


(ケイ)「……これで……っ何?!」


タイムマシーンはゼファーがいなくなったことで制御不能となっていた。徐々に地上へ落下していくのが明らかだった。そんな中やってきたグレンがケイに叫ぶ。もうグレンは船のすぐ近くにいた。


(グレン)「ケイぃぃー!!アスカは任せろぉぉー!」

(ケイ)「ナイスタイミングだ!頼む!グレン!」


ケイも船上へいるシルファのもとへ急いで向かう。もうすでにグレンはアスカを救出したようだ。そしてケイも何とかシルファと合流するのだった。


(ケイ)「シルファぁぁー!!」

(シルファ)「ケイぃぃー!!」


ケイはシルファをお姫様だっこをしてミカヅキの羽をはばたかせる。なんとか無事シルファも救出できたのである。


(ケイ)「もう大丈夫だ!シルファが無事で良かった……本当に!」


ケイはシルファの顔をみて微笑む。安心したのかシルファは涙が止まらなかった。


(シルファ)「あなたを……あなたをずっと信じていました!!ケイ……。」

(ケイ)「はは。泣くなよ。俺はずっとシルファの側にいるから安心しろ。」


月明かりが美しい夜空を飛翔しながら優しい言葉をかけるケイ。2人だけの世界にシルファはもう我慢できなかった。そしてケイの唇にキスをするのだった。


(ケイ)「シ、シルファ?!」

(シルファ)「あなたが好き……好きで好きでどうにかなりそうです……ケイのすべてが欲しい!!」


シルファの情熱的な告白にケイはまるで時が止まったかのように感じたのだった……

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