第34章「ムーンアイランド(トライアングラーの始まり)」
ここはヘリオス広場。現時刻14時。アイリスは本来は17時にここに来る予定だったが、フィオナから連絡があったため3時間早く到着していた。
(アイリス)「もうそろそろのはず……来た!」
(フィオナ)「アイリスーー!!」
フィオナが手を振りながら向かってくるのにアイリスは気づき、無事合流する。そして3人が見つけた情報をアイリスに伝えたのだった。
(アイリス)「……間違いないわ!この青白いヒマワリ!!これよ!!」
(タイガ)「やったぜ!!やっぱりそうだったんだな!」
(フィオナ)「ケイ!!お手柄ね!!」
(ケイ)「だが、肝心の何処にあるかはのっていない。この広いトラモント王国の中から1枚を探すのは不可能に近いぞ?」
(アイリス)「……この写真さえあればなんとかなるかもしれないわ。」
(フィオナ)「ど、どういうことなの??」
(アイリス)「そういうの探すの得意な人知ってるの!ロア=グランドっていう情報屋やってる人なんだけど。そこにいきましょ!」
こうして4人はその情報屋の人がいるという場所へ向かう。裏通りへ入り、複雑にいりくんだ迷路のような通りを抜けると小さな店が見えてきたのだった。店の前の看板に何か書いてある。
(ケイ)「占いの館?」
(アイリス)「そう!表面上はね!ただ裏で情報屋やってるの。中に入りましょ。」
中は薄暗く、骨董品などが棚に並んでいた。そして奥の椅子にある老婆が座っているのだった。
(アイリス)「来たわよ。ロア。」
(ロア)「……おやおや。アイリスかい。久しぶりだね。そこの3人も騎士なのかい?」
(アイリス)「そうよ!今日はロアにお願いがあってきたの。ある絵画がどこにあるか知りたいの。写真ならあるわ。」
(ロア)「なるほどねぇーどんなものだい?みせておくれ。」
そうしてアイリスはロアに写真をみせるとロアはしばらく目をつぶり、何かに集中するのだった。
(ロア)「……その絵画はここにあるよ。」
ロアが指を指した場所。それは意外な場所だった。
(ケイ)「ここは……何年か前につぶれたはずの映画館??」
(フィオナ)「知ってるの?ケイ?」
(ケイ)「ああ!オリオン座だろ?今は廃墟で誰も近づかないがな。」
(タイガ)「とりあえずそこ行ってみようぜ!」
(アイリス)「そうね!ここからそんなに遠くないしね!行ってみましょ!ロアありがと!」
そうして4人はオリオン座という映画館へ向かうのだった。20分ほど歩き、目的地についたが外装はぼろぼろでとても人が立ち入るような所ではなかった。そんな中4人は映画館へ入っていく。
(アイリス)「こんな裏路地に映画館があったなんてね……ケホっ!ほこりすごいわね!!」
(ケイ)「俺も中には初めて入ったぜ。しかし本当きったねーな。」
(フィオナ)「本当にこんなところにあるのかしら?」
(タイガ)「おい!なんか奥に怪しい扉があるぞ!!」
タイガが指を指したのは、おそらく前の経営者が使っていたであろう部屋の扉だった。
(アイリス)「あっ!鍵はかかってないわね!」
そう言って4人は部屋へ入ると奥にほこりまみれの絵画が壁に飾られていることに気づく。
(フィオナ)「あった!!あれじゃないかしら?!」
(タイガ)「間違いない!や、やったぜ!」
(ケイ)「まさか本当にこんなところにあるとはな!」
(フィオナ)「みんな本当にありがとう!!お手柄よ!回収して城に持ち帰りましょ!」
無事盗まれていた絵画を回収し、4人はトラモント城へ戻る。今日はもう夜遅いため、ムーンアイランドへは明日の朝行くことになった。今日は夕食を城で食べて解散となるそうだ。
(タイガ)「うめぇぇー!今日は働いたぜ。」
(フィオナ)「今日は1日中歩いたものね!ご飯が本当に美味しく感じるわ!」
(ケイ)「しかしあの絵画は一体何に使うんだろうな?」
(タイガ)「たしかにな!まぁ明日になればわかるだろ。今日は一杯食べてゆっくり休もうぜ。」
(フィオナ)「そうね!食べたら一緒に帰りましょ!」
そうフィオナが言うがケイは申し訳なさそうに、フィオナとタイガに伝える。
(ケイ)「わりー。俺は途中までだ。用事があるから先に帰っててくれ!」
(タイガ)「用事?こんな時間にか?」
(ケイ)「ま、まぁな。気にしないでくれ。」
(フィオナ)「な、何よ。用事って!」
(ケイ)「な、内緒だ。何だっていいだろ?」
こうして3人は夕食を食べ終えて、その後寮へむかうが着く直前で別れることなった。その理由は実はシルファから連絡があったからである。多分先日のシルファが寝惚けてた電話の件だろうとケイは思っていた。
(ケイ)「今日は綺麗な月だし、夜カーラ橋にいくのもいいかもな。」
ケイはシルファとカーラ橋で待ち合わせる予定になっている。いつもは夕方に夕陽を見に行くのだが、珍しく今日は夜ということで新鮮な気分で向かうケイだった。
(ケイ)「この辺りが待ち合わせ場所だが……」
ケイは近くの自販機で買った缶ジュースを飲みながらそんなことを1人で呟いていると、自分の名前を呼ぶ声がした。優しく美しい聞き馴染みのある声だった。
(シルファ)「ケ、ケイ……?!」
(ケイ)「シ、シルファ!」
(シルファ)「つ、疲れている中、来ていただいてありがとうこざいます。あの……」
お互い何の話のことかわかっていたため気まずい空気がしばらく流れる。それからシルファは目を反らし、顔を真っ赤にしてケイに言いたいことを伝える。
(シルファ)「お、お話というのはですね!き、昨日の電話のことで!!あ、あれは違うんです!!ほ、本当に!!」
(ケイ)「な、何のことか……お、俺も途中からうとうとしてて!あ、あんまり覚えてないんだよな!あ、あははは……」
(シルファ)「ぜ、絶対嘘です!!今朝のメ、メール残ってるじゃないですか!」
(ケイ)「お、俺メールなんて送ってたのか!あ、朝二度寝したからあんまり思い出せないないんだ。あ、あはは……」
苦しい言い訳をしてもう忘れたというケイだったが、明らかにそんな表情ではなかった。
(シルファ)「ひ、引きました??」
(ケイ)「い、いや?し、思春期だし、そういう欲は誰にでもあるんじゃないか?……あっ!!」
(シルファ)「や、やっぱり覚えてるじゃないですかぁー!!」
(ケイ)「ま、まぁ別に嫌いになったわけじゃ……」
(シルファ)「……じゃあ、責任とって下さい!!」
(ケイ)「はっ?!」
シルファは訳のわからないことを言い始めた。何を?!と思うケイだったが、シルファには関係なかった。シルファはケイに近づく。そして彼の胸に頭をうずめ、下を向きながらあるお願いをする。
(シルファ)「……い、今ここでキスしてください……。ケイから。じゃないと安心できないです……。」
(ケイ)「シ、シルファ?じょ、冗談だよな?!」
(シルファ)「冗談じゃないです!!し、してくれないと城に帰りませんから!」
シルファは顔を上げ、目をつぶる。密着してる分、顔と顔の距離が近かった。お互いの心臓の鼓動が一気にはやくなる。月明かりが水面を照らし、ロマンチックな雰囲気に流されそうになった瞬間だった。
「ダ、ダメぇぇーーー!!!」
その叫び声がする方向を二人はみた。そこにいたのはさっき寮に戻ったはずのフィオナだった。
(ケイ)「フィ、フィオナーー?!」
(シルファ)「えっ?!」
その時のフィオナは何か信じられないものをみたような表情をしていた。そして震えていた。
(ケイ)「い、いつから見てた?!」
(フィオナ)「合流した時からずっとよ!明らかにあんたが不自然だったからついていったのよ!」
(ケイ)「なっ?!お、おまえ!!」
(フィオナ)「そ、それより……!今何を……何をしようとしてたのよ!!今シルファがケイに迫るように見えたけど……」
(ケイ)「そ、それは……」
(フィオナ)「まさかそんなわけないわよね?だって姫様とただの騎士よ?!そんなの許されるはずないじゃない!!見間違えよね!?」
フィオナは今にも泣きそうな顔で絶対そんなの認めないと二人にはっきり宣言するかのように叫ぶ。そしてケイがフィオナの反応に困っていた時だった。
(シルファ)「……フィオナ。見間違えじゃないですよ……。こういうことです……。」
(フィオナ)「……えっ?」
月明かりが水面を照らす中シルファはケイの両肩に両手を置き、少し背伸びをする。その瞬間ケイの唇とシルファの唇が優しく触れ合うのだった。
(シルファ)「ケイはもう私のものですから……フィオナ。……誰にも渡しませんから。」
ケイとフィオナは目を見開き、シルファを見る。二人は何も言葉がでなかった。それは闇夜の中、月光が金色の髪に降り注ぎ、誰もが魅力されるであろう妖艶な顔をしていたシルファがあまりにも美しかったからだ……




