第33章「ムーンアイランド(幻のヒマワリの絵画)」
『昔むかしとある冒険家の男は偶然にも小さな島へ漂着しました。その島は地図にものっていない不思議な島で、その集落には神秘の力を持つ島人が住んでいました。冒険家の男はそこで運命の出会いをしたのです。その相手は島の姫君でした。彼女も徐々に冒険家に惹かれていき、外の世界に憧れを持つようになりました。しかし彼女は強大な力を持ち、島を守る使命のため、島の外へ出ることが許されませんでした。それでも徐々に膨れ上がる想い。二人はついに我慢ができなくなりました。そして彼女はすべてを捨て、その冒険家の男と夜人知れず島を抜けだしたのでした……』
(フィオナ)「ちょっと切ない昔話ね……」
初任務の日の13時、ケイ、フィオナ、タイガの3人はトラモント王国で一番規模の大きな図書館で本を読みあさっていた。なぜこうなったかそれは5時間前にさかのぼる。
(アイリス)「みんな!いよいよ今日ね!この任務は私も一応ついていくから安心しなさい!あとこの任務は4人しかいないから敬語はなし!アイリスでいいわ!」
(ケイ)「それは助かるな!俺も堅苦しいのは苦手なんだ。」
(タイガ)「そう言えば初任務の内容ってなんなんだ?」
(フィオナ)「あ、それ私も気になってた!」
(アイリス)「言ってなかったわね。あなたたちの任務は『ムーンアイランド』の調査よ。」
(ケイ)「……」
(フィオナ)「え、あの秘島ムーンアイランドですって?!たしか立ち入り禁止の島じゃ……」
(タイガ)「あ、ああ。行ったら戻ってこれなくなる噂もあるしな……」
(アイリス)「大丈夫。安心して。多分島自体は別に危険じゃないと思う。」
(ケイ)「どうしてそんなことがわかるんだ?」
(アイリス)「私の故郷だからよ。まぁぼんやりとしかおぼえてないけれど。」
(ケイ)「何?!」
(フィオナ)「あ、あの島にまだ誰か住んでるの?立ち入り禁止区域だからてっきり……」
(タイガ)「た、たしかにあんな怪しい島怖くていこうと思わないもんな……」
(アイリス)「そういうイメージたしかにあるわよね。でもそれよりもそこにたどり着くのが大変なのよ。」
(フィオナ)「どういうことなの?港から見えるし、船ですぐ行けるんじゃないの?」
(アイリス)「あー、あの港から見えるあの島ね……あれは幻よ。本物は別の場所にあるわ。」
(タイガ)「何ー?!あれが幻だと?!」
(アイリス)「ムーンアイランドはね。月の光が他と比べて100倍近く集まる島なの。その影響もあって不思議なエネルギアの力を持った子が約10年に1人か2人生まれるのよ。おそらく月の光が母体に影響を及ぼしてるのね。その不思議な力を狙う外敵から身を守るためにあのエネルギアの幻でカモフラージュしてるってわけ。」
(フィオナ)「ち、ちなみに船であの幻までいったらどうなるのよ?」
(アイリス)「死ぬわよ。渦潮で沈没ね。これが行ったら戻ってこれないという噂の真相よ。」
(タイガ)「じゃあ……どうやって島にいくんだよ!船でいけないんじゃ……」
(アイリス)「……みんなにはある絵画を探してほしいの。12年前トラモント城から盗まれた幻の絵画なんだけど。」
(フィオナ)「島に行くのになんで絵画なのよ?!」
(アイリス)「説明は探してくれた後でするわ。今言っても信じてもらえないでしょうし。あと私どんな絵かわからないわ。何しろ訳あって私が5歳の頃にトラモント王国にきて、その年に盗まれたみたいだからさすがにはっきりとは覚えてないのよ。その絵画がなくてずっと私も帰れてないから困ってるの。」
(タイガ)「ち、ちなみに作品名はなんなんだよ?」
(アイリス)「それは……」
しばらく何も会話に交わらなかったケイが口を開く。それはアイリスの予想していなかったことだった。
(ケイ)「……その作品『ヒマワリ』に関係するんじゃないか?」
(アイリス)「……えっ?なんで??なんであなたが知っているのよ!!」
(ケイ)「……さぁな。だがどんな絵画なのかはわからないがな。」
フィオナとアイリスはケイの顔をみる。すると今までみたことのない表情だった。影があり儚げに微笑むその顔に2人はなぜか不思議と惹かれたのだった。
(アイリス)「……ま、まぁ話たくないみたいだし無理に話せとは言わないわ!とりあえずみんなは図書館に行ってみたらどうかしら?古い本にどんな絵なのかのってるかもしれないわ。わからないと探しようないでしょ?私は私で情報を集めるわ。17時にヘリオス広場で合流しましょ!」
こうして現在に戻る。図書館に着き5時間経つが、『ひまわり』の絵画の写真は見つからなかった。
(フィオナ)「ムーンアイランドの物語じゃなくて、問題は写真なのよね……」
(タイガ)「フィオナー!そっちはどうだー?」
(フィオナ)「こっちはダメね!絵画の写真はのってないわ!」
そんな中ケイは携帯で何か見つけたようだった。
(ケイ)「なぁ見ろ。携帯で調べてこんなものを見つけたんだが……」
(フィオナ)「……都市伝説?」
(タイガ)「なんかオカルトチックだな。」
(ケイ)「ああ。一番下の花の絵の写真をみてくれ。」
(タイガ)「なんだ?青白い花の絵画じゃねーか。」
(フィオナ)「説明ものせてるわね。なになに……不思議な絵画?」
(タイガ)「とある古びた小屋で発見された絵画だが手にしたものは失踪するという噂である……ただあまりの美しさのため、絵画コレクターが入手しようと後が絶たないようだ……今現在トラモント王国のどこかに眠っているらしい……なんだ?これ……?」
(フィオナ)「ひまわりって黄色よね?」
(タイガ)「ああ。だとしたら違うんじゃねーか?」
(ケイ)「……いや。そうではないかもしれないぜ?」
(フィオナ)「えっ?それはどういう意味よ。」
(ケイ)「2人とも『満月の彼方へ』って映画知ってるか?」
(タイガ)「知ってるぜ。禁断の恋の物語だろ?文化祭のとき、その主題歌をバイオリンで演奏してたよな?」
(ケイ)「ああ。この映画は遠い昔のムーンアイランドを舞台としたものなんだが、そこにこの絵画に描かれた花と似たものがあったんだ。もしかしてムーンアイランドのひまわりは青白いんじゃないか……?」
(フィオナ)「怪しいわね!すぐにアイリスに連絡して合流しましょ!!」
こうして3人は図書館を後にして、アイリスと合流ことになるのだった。




