第24章「真偽」
「なぁ!聞いたか?!ケイの噂!」
「聞いた!聞いた!姫様とデートしたって!」
「え!ヤバーい!!何その面白そうな話!」
情報の広まりというのは早いものだ。それが恋愛に関するものであればなおさらである。月曜日の朝、ケイがまだ登校していないにも関わらず、クラスメイト達の会話はその話でもちきりだった。そうとは知らずケイは教室に入る。
「ん?な、なんだよ。みんな?」
一瞬時が止まったかのように教室が静まり、フィオナ、タイガだけでなく他の沢山のクラスメイトもケイに視線を一気に集めた。そんな中、とあるクラスメイトの女子が気になっていた例の話の真偽を確認しようと試みた。
「あ、あの!ケイ君に聞きたいことあるんだけど……」
「おはよう!俺がどうかしたか?」
「昨日ひ、姫様とランチしたって話、本当なの?!」
ケイはド直球な質問に内心激しく動揺した。フィオナはにらみつけながらこっちを見ている。まさかこんなに早く情報が伝わるとは思っていなかった。ケイはどう話すべきか一瞬考え、下手に誤魔化したら変な誤解されると思い堂々と答えた。
「……ああ。行ったよ。それがどうかしたか?」
その瞬間教室に色々な感情が籠った悲鳴が響き渡る。
「きゃあああ!なにそのシチュエーション!!」
「うぉぉぉ!!何でケイはがりぃぃぃー!!!ずるすぎるだろぉぉー!」
「でもいいなー!ちょっと姫様羨ましいかも!」
「ケイぃぃー!貴様!マイエンジェルをよくもぉぉー!羨ましすぎるぞぉぉー!」
「おのれぇぇー!リア充は死ねぇぇー!」
「フィオナかわいそー!どんまーい!!」
「な、な、何で私なのよ!!」
そんな会話をしていると朝のホームルームの時間となる。担任が教室に入ってきて、すぐに号令がはじまる。なんとか終わった、そう思いながらケイは席につく。そんな中隣のフィオナは不機嫌そうにケイにぼそっと話しかける。
「今日の昼休み、屋上で詳しく話聞かせなさいよね!タイガもつれていくわ!」
「は、はい……」
こうして騒がしい朝から1日が始まり、4限まで授業が進んでいく。ケイはフィオナに怯え、またフィオナもケイを意識しすぎたあまり、二人とも全く授業の話が頭に入ってこなかった。そして時間はゆっくりと過ぎ、ついに昼休みがやってきたのだった。フィオナはケイを睨みながら尋ねる。
「……で、どういうわけ?姫様とランチって?」
「そうだぞ!詳しく聞かせろー!ケイ!」
タイガも羨ましいといった顔で涙ぐみながらも、フィオナに便乗し尋ねる。
「い、いや、そんな深い理由はないが……騎士に就職が決まっただろ?それを祝うって誘われたんだよ。」
「それなら何で2人なのよ!そんなのデートじゃない!アホなの?!なんで気づかないのよ!」
「さ、誘われた時その発想はなかったんだよ……」
ケイがフィオナの厳しい指摘にしり込みする一方、タイガはそのデートが実際どうだったのか、ケイに興奮した様子で尋ねる。
「そ、そ、それで?!ど、どうだったんだよ?!なぁ!なぁ!」
「あ、ああ!うん……ふ、普通だったぞ。」
「あ、あのランチの後どうしたのよ?まさか何か言えないようなことしたんじゃないでしょうね!」
「はは!それはさすがにないだろう!フィオナ!だよな!ケイ!」
「す、す、するわけないだろ!相手は姫様だぞ!タイガー!は、はは!それよりそろそろ5限がはじまるぜ!俺トイレ行きたいから教室に先に戻ってるな!」
「あ、あやしい……そして逃げんなー!」
フィオナに最後怪しまれたが、まさかキスされましたなんて言える状況ではなかった。しかしこれだけは絶対バレるわけにはいかない、そう思いながらケイは急いで教室に戻るのだった。




