第14章「1回戦第3試合ケイvsルナ」
「いよいよケイと2年最強のルナ=セレスティアの試合か。これは見物だな。」
「あれが姫様の…!」
「ケイ…頑張って下さい…」
審査員席に座るロイ、アイリス、シルファでそんな会話があることを知らずケイはフィオナの一戦を見て燃えていた。チームを必ず勝たせるという想いが伝わったからだ。ケイも自分も絶対この試合に勝つ、そういう気持ちで闘技フィールドに立ったのだった。
「ルナ=セレスティアだ。先ほどの戦い見事であった。まさかチームプレシャスが一敗するとは夢にも思わなかったぞ。ここまでよく戦った。最後に戦う前に名をきいておこう!」
「ケイ=リュウセイだ。…御託はいい!最後に勝つのは俺たちチームネクサスだ!」
両者の挨拶が終わり、司会は試合開始のアナウンスをする。
「両者準備ができたみたいですね!泣いても笑ってもこれが最後の一戦です!お互い悔いの残らない試合にしてください!それでは1回戦第3試合スタート!」
「いくぞ!ケイ!」
「ルナ!俺は負けない!」
試合の合図と共に、両者高速移動術で走りだす。そしてルナはエネルギアを右腕に集中して、銀色のオーラをまとった鋼のガントレットを生み出した。一方ケイもまた右腕にルーチェを使い、黄金のオーラをまとっている。
「私の能力は鋼を操る力だ!小細工などない!メタルブローぉぉ!!」
「俺も好きだぜ!そういうの!真っ向勝負ってやつは!黄金に輝けぇぇ!!ルミナスフィストぉぉ!!」
拳と拳の衝突。凄まじい衝撃音と悲鳴が会場に響き渡る。ベンチのフィオナとタイガはケイの一撃を見て盛り上がっていた。
「くっ……相変わらず凄い威力ね!」
「相手もすげーけど、威力だけなら負けてねーぜ!」
審査員席に座っていたロイとアイリスも感心した表情でこの光景の感想を言う。
「まさに肉弾戦!最後に立ってたほうが勝ちってやつか!」
「そうみたい!わかりやすいわね!それにしてもなんてパワーなの?!」
アイリスがそんなことを思う中、ジョーカー、アクア、ゼファーもケイとルナを見て言葉を口にする。
「暑苦しくなりそうだな!」
「いいじゃない!!私こういうの好きよ!ゼファーはあまり好きじゃなさそうね!!」
「戦術も駆け引きもない……戦い方が若いな。」
その後何発もルミナスフィストとメタルブローがぶつかるがお互い威力は互角だった。決定打が入らずお互い少し距離をとる。
「やるではないか!ケイ!」
「はっ!そっちこそ見た目はクールそうなのに心は熱いじゃねーか!それよりこの距離は大丈夫か?」
「…どういうことだ?」
お互い攻撃が届かないはず、そうルナは考えていた。そんな中ケイは足元の沢山の小石を拾い、左の手のひらに乗せたのだった。シルファは不思議に思い呟く。
「えっ?アイリス!ケイは一体何を……」
「わ、わからないわ!」
シルファとアイリスが混乱している一方アクアは楽しそうだった。
「ふふ!面白いじゃない!私の想像を超えてくるわね!」
そしてフィールドに立つルナも疑問に思う。ルナはケイに尋ねる。
「何をしている?神聖な決闘を汚すつもりか?」
「……そうじゃない!俺の能力は肉体強化だ!だからこんなこともできるんだ!!即興必殺技ストーンバレットぉぉ!!!」
ケイは右手の親指と中指にエネルギアを集中し輪っかをつくり、左の手のひらの上にのせた小石を弾いたのだ。つまりでこぴんである。弾いた小石はとんでもない威力でルナを襲う。ケイは小石を淡々と弾いていく。そして審査員席でもまさかの攻撃に大盛り上がりだった。シルファはケイの発想力に感心して感想を言う。
「ケイ……!凄い!!」
それに続きサンセットホープズのメンバーも驚きの声をあげる。ロイはまさかと言った表情で言葉を口にする。
「あんなふざけた手段で遠距離攻撃を可能にしただとっ!?」
「親指と中指だけにエネルギアをコントロールすることで、無駄な消費なく効率的に攻撃してるな。そうだろ?ジョーカー。」
「ああ、ゼファーの言う通りだ!それにフィールドを活かしたよい戦術じゃねーか。」
それから同じ接近戦を得意とするアイリスは独り言を呟く。
「へぇ…面白いじゃない!!」
アクアもケイに興味津々だった。別の意味で。
「かわいいじゃない!あのこ!」
審査員席で盛り上がりを見せる一方、チームネクサスのベンチでもまさかといった表情をしていた。
「……あ、あんな戦い方ができるなんて!!」
「さ、さすがケイだせ!いけるぞー!!!」
そしてその攻撃を受けるルナはエネルギアで発動した両腕の鋼のガントレットで防ぐが、全てはさばききれなかった。
「きゃゃゃー!!」
ルナはまともに技をくらい倒れるが、なんとか立ち上がる。
「これで終わりとはさすがにいかなかったか。」
「…あなたを甘く見てたようね!本気でいかせてもらう!フルアーマーモード解放!!」
ルナは全身にエネルギアでできた鋼の鎧をまとったのだった。その姿まるで騎士そのままである。そしてケイに向かって高速移動術で接近する。
「っ!!速い!!」
「この鋼の鎧はどんな攻撃も弾きかえす!もうあなたの攻撃はきかない!メタルブローぉぉ!」
ケイはストーンバレットで反撃したが、効果がなかった。そんな中ルナはメタルブローを何発もケイの腹部にうちこむ。たまらずケイは倒れる。
「がはぁぁ!!」
苦しむケイをみて、ベンチのフィオナとタイガは立ち上がり声援を必死に送る。
「ケ、ケイ!あんた勝つんでしょ!!」
「な、なんとかしろー!ケイ!」
ケイは意識朦朧とするなかなんとか立ち上がる。そんなケイをシルファは遠くから心配した様子で見つめる。
「ケ、ケイ……」
ルナの本気を見てロイとアイリスはさすがだといった表情で呟く。
「さすが2年最強の実力ってだけあるな。さぁどうする?ケイ!」
「肉体強化で腹筋を強化して耐えたみたいだけど今のはかなり効いたわね!」
ケイはそんな中どうしたらいいか考えていた。
「さ、さすがに強いな!!今のはきいた!」
「負け惜しみかしら!でもみたところ私の勝ちのようですね!」
「さぁそれはどうかな?切り札は最後まで取っておくものさ。」
そういうとケイは残っていた全てのエネルギアを使い、全身にルーチェをまとった。その姿は神秘的だった。全身が黄金のオーラで包まれる中、黒髪がまるで太陽の炎ように輝く赤色に変わりゆらめいている。ルナは目を見開き動揺する。
「な、何っーー!?」
「…いくぞ!最後の勝負だ!!ネクサスのみんな!姫様!俺を…俺を勝たせてくれぇぇー!!!!」
ケイは叫ぶ同時にまるで瞬間移動したのようなスピードでルナの正面に移動し、ルナの腹部に一撃をぶちこむ。
「キングダムっ!!フィストぉぉーー!」
その瞬間ルナは実技実習場の壁にとんでもないスピードで直撃した。言うまでもなく気絶している。
「…俺の勝ちだ…!!」
そういってケイは床へ仰向けで倒れこんだ。意識はあるようだ。チームネクサスやチームプレシャスだけでなく会場すべての人が驚きのあまり一瞬静まりかえる。しばらくした後司会は試合終了のコールをするのだった。
「……き、決まったぁぁ!何が起こったのか全くわかりませんでしたが、まさかの大判狂わせ!!ケイ=リュウセイ選手!2年最強のルナ選手を打ち倒し、2対1でチーム…チームネクサスの勝利ですー!!」
観客席ではどよめきの声で溢れかえっていた。何が起こったのか理解できなかった。
「うぉぉーー!!!すげぇーー!なんだ今の!」
「あのルーキーだれだ?!」
「なんかわかんないけど感動したわ!!凄い!」
観客席が盛り上がってるなか、チームネクサス、チームプレシャス、審査員席では今の試合に色々な反応があった。
「す、す、す、すげーーー!!なんだ今の試合!!!なんかわかんねーけど、俺感動したぜ!ケイもルナ選手もかっこよすぎだろ!!フィオナ!先にケイのもと行ってくるぜ!」
タイガが走ってケイのもとへ向かっていくなか、フィオナは胸に手をあてていた。心臓がドキドキしていた。そしてケイが真剣な顔で戦っていた姿を思い出しこれはただの試合で勝ったことの興奮ではないことを自覚した。そんな中だれにも聞こえない声で呟いた。
「…あんなチームのために一生懸命戦う姿見たら、好きになっちゃうじゃない…ばか。」
一方チームプレシャスはまさかという顔で驚いていた。
「まさか!俺たちが…負けた…??」
「私が勝っていれば…ボルグさん!ご、ごめんなさい!」
「…きにすんな。また一からやり直せばいいだけだ。それよりリーダーのもとへ行こうぜ!」
「はい!」
審査員席ではとんでもない興奮の嵐だった。シルファは嬉しそうにロイに感想を伝える。
「ロイ!ロイ!やりました!!ケイ勝ちました!凄いです!感動しました!!」
「ああ!まさか!本当に2年最強のルナ=セレスティアに勝つとは!やるじゃねーか!」
そんな中ジョーカーは気になったことを呟く。
「最後の瞬間移動のあれ…ゼファー!何かわかるか?」
「あれはエネルギアで肉体強化された足腰と高速移動術を組み合わせたものだな。よほどエネルギアコントロールが緻密でなけなければできない芸当だな。」
そんな解説の中アクアは真っ先に宣言しようとする。
「私!!」
スカウトしようとしたアクアを止めたのはアイリスだった。
「ダメよアクア!もともと姫様と約束してるの!この大会が終わったら、私の部隊にケイ=リュウセイをスカウトするわ!」
「なんだよー。俺も目をつけてたんだがなー。先約ありかよ。」
「ジョーカー!今回はごめんなさい!アイリス!!お願いします!」
「任せて!姫様!!」
それからロイはそういえばといった様子で皆に尋ねる。
「今思ったがこの後の試合どうすんだ?チームネクサス。ケイはもう今日のエネルギアすべて使いきったんじゃねーか?」
最後のロイの発言にみんな黙ったのだった。いずれにしろチームネクサス、優勝候補のチームプレシャスを破り2回戦進出である。




