第1章「ボーイミーツガール」
はじめて書いた作品です。よろしくお願いします。
2000年前、このオルトマーレ大陸に巨大な隕石が直撃した。この出来事は人類に大きな影響をあたえた。人類は「エネルギア」と呼ばれる特別な能力を持ってうまれるようになったのだ。これはその2000年経って人口の100%がエネルギアをもつ世界、「エネルギアワールド」に生きる少年少女の物語である。
ここはオルトマーレ大陸西部都市、トラモント王国。「水の都」と呼ばれる都市である。海に囲まれ、運河が発達していることもあり、水上バスやゴンドラが人々に頻繁に利用されている。また世界一夕陽が美しいとも言われている。そしてまさに今、太陽がジリジリと照らす真夏の真っ昼間にそんなオシャレな風景をぶち壊すかのようにとある少年がひときわ全力で走っていた。正確にはチンピラ2人組から逃げていた。
「あぁぁ!もう!なにやってるんだ!俺!せっかく日曜日で学校休みなのに!」
この少年の名前はケイ=リュウセイ。16歳。高校生。色白で、この国には珍しい黒髪、中性的な綺麗な顔立ち、男性平均くらいの身長。特に黒い髪を除けばどこにでもいる少年である。そんなことよりなぜこんなことになったか。ことの発端はある麦わら帽子をかぶって運河沿いを歩いていた同い年くらいの少女がチンピラ二人組に絡まれていたところを助けようと思ったことが原因である。
「おぉ!お姉さんめっちゃ可愛いね!」
「ねね!俺逹とカフェでもいかない?」
あの女の子が誰かはわからないがが嫌がってるのだけは誰でもわかる。そういうわけでケイは嫌がってるからやめたほうがいいよと優しく説得して済ますつもりだった。
「お兄さん方…あ、うわ、まずい!」
彼らの近くまで向かう中つまづいてしまい、持っていたアイスをチンピラの1人の頭に盛大にぶちまけてしまったのである。当然のことながらその後、今の現状からわかるようにチンピラとの鬼ごっこになってしまったわけである。
「待てやぁぁ!コラ!」
「逃げんじゃねぇよ!」
チンピラ達が追いかける一方、ケイは逃げながら大声で尋ねる。
「逃げなきゃ平和的な解決になるんですかーー?!」
「なるわけねーだろっ!!ぶっ殺す!!」
捕まったら面倒くさいことになる、そう思いながら表通りから裏路地に入っていく。トラモント王国の路地裏はまるで迷路のようにいりくんでいる。生まれ育った場所とはいえ、完璧には道を覚えてなかった。
「げっ!行き止まり?!」
「もうにげられねーけど覚悟できてるんだろうな?!あぁ?!」
「俺らに恥かかせたこと後悔させてやんよ!!」
チンピラ達が怒鳴り散らす一方、ケイは反論する。
「アイスぶっかけたのは悪かったけど、あの子嫌がってたじゃねーか!」
「うるせー!あのままナンパしてれば成功していたのに邪魔すんじゃねーよ!」
「そうだ!てめえのせいだ!」
「いやそのビジュアルじゃノーチャンだろ……」
「こ、殺す!!」
そんな会話が終わり、彼らの片方が獰猛なライオンに、もう一方は狂暴なゴリラに変身する。
「おまえらのエネルギアは獣化か!ここは動物園かよ!」
完全にキレた2匹の獣はケイに向かってくる。このまま襲われたら軽いケガでは済まないだろう。ケイはしょうがないという顔で静かに呟く。
「……正当防衛だからな!」
ライオン化したチンピラが噛みつく直前、ケイはおちついていた。そして右拳に黄金の光が集まっていく。相手の噛みつきをうまく回避、黄金のオーラをまとった右拳でとんでもないアッパーを繰り出す。鈍い音とともに、獣は壁に頭から衝突し、ピクりとも動かない。一発KOである。その光景にゴリラ化したチンピラは悲鳴をあげた。
「っテメー!!!なんだその能力は!!ふざけんじゃねーぞ!オラぁぁ!」
「ケンカのやり方教えてやるよ!」
拳と拳の衝突。獣化しているぶん体格は明らかに向こうが大きい。が、しかしその黄金の拳は、紙切れを破るかのように相手の拳を打ち砕いていく。
「ぎゃぁぁあああ!!!骨がぁ!!!」
あまりの痛さにゴリラ化したチンピラも気絶した。
気絶したチンピラを見てケイはやれやれといった表情をする。
「やりすぎたか……まぁ誰もみてないよな。」
これでしばらくはおとなしいだろう。そう思いながら表通りに戻っていく。
「エネルギアか…」
「ルーチェ」彼の能力は一時的な肉体強化の力である。強化した部位には黄金の光をまとうようになる。先ほどの戦いでは右拳を強化したわけである。
「こんな力ケンカでしか役にたたないけどな…さてもう夕方か!いつもの場所で夕陽をみて、その後スーパーで晩御飯の材料買いにいくか。」
カーラ橋。ここは世界一美しい夕陽が見ることができる橋である。ロマンチックな雰囲気でカップルが沢山いる中、ケイはこの場所が好きで何もなければ必ず週末1人で来ていた。
「休日だっていうのに本当つかれたなぁ…まぁこの綺麗な夕陽を見ることができたから、明日の学校頑張れるかな。」
そう呟きながら、橋のうえから夕陽が海に沈むのをみていると、誰かが後ろから優しげな声で話しかけてきた。
「ここから見る夕陽は好きですか?」
儚げな声に振り返ると、そこにいたのは見覚えのある麦わら帽子をかぶって微笑む多分同い年くらいの少女だった。白いワンピースに、長めの金髪ポニーテール、透明感のある色白な肌、優しげなクリっとした目、少し小柄で優しげな雰囲気をもつこの少女はさっきは慌ててたため、気にしていなかったが、絶世の美少女である。夕陽の光が金髪に降り注ぎ、そよ風で少しなびいているその姿に思わずみとれてしまっていた。少しの間のあとケイは答える。
「さっきの…!カッコ悪ところみせちゃったな、あはは…」
「いえ助けようとして下さったお気持ちだけでも本当に嬉しかったですよ!そういえばあの後大丈夫でしたか?」
「まぁ2時間近く鬼ごっこしたけど…」
「ふふふ…さっきのアイスもそうでしたけど面白い人ですね。あ、そういえば自己紹介まだでしたね。私はシルファ=トラモントと申します。私のことはシルファで構いません。あなたをなんとお呼びしたらいいでしょうか?」
「ああ、俺はケイ=リュウセイ。ケイって呼んでくれ!ん??ちょっと待てトラモント?え??ま、まさか姫様ー??!」
嘘をついているようにはみえなかった。ここはトラモント王国である。トラモントを名字にもつということは王族であることで間違いない。そういえば同い歳くらいのお姫様がいるって噂になってたっけ。
「あの、そんな緊張しなくて大丈夫ですよ?」
「いやいやいや緊張しますって!今までのご無礼な発言お許し下さい!!」
ケイは土下座しようとしたが、姫様はそれを止めるかのように話しかけてきた。
「私本当に城の中で育ったので、外にあまり知り合いがいなくて…歳も近そうですし気を遣わないで気軽に話せると嬉しいです。そうですね!今からあなたは敬語なしで私に話して下さい!」
「まぁ…姫様がそういうのであれば…」
「ケイ、姫様じゃなくシルファです!」
「わかったよ、シ、シルファ。それより今日はどうして1人でいたんだ?」
「カーラ橋からの夕陽が見たくてお昼頃お城から抜け出してきました。夕方まで散歩して時間をつぶすつもりで…」
「意外と度胸あるというかお転婆さんなんだな。俺も今日は学校休みでゆっくりのはずだったんだがなぁ、まさかあんなことになるとは…」
「ふふふ。人生そういう日もありますよ!」
「まぁそれでシルファが無事だったんだからよかったかな…」
「え?」
突然の不意打ちだった。そして優しげに微笑んできた少年の目になぜか惹き付けられた。
シルファは今まで誰にも心配されたことがなかった。母はうまれてすぐに他界し、父は王様ということもあり、あまり一緒に過ごす時間はなかったのだ。シルファは頬が少し赤くなるのを感じ、目をそらしてつぶやいた。
「ケ、ケイ!か、からかわないでください!でも心配していただきありがとうございます!」
彼が鈍感だったこともあり、彼女がドキドキしていた雰囲気には幸いなことに気づかなかったようである。そんな中、ケイは彼女のこの笑顔をみて、ふと将来の夢が心に浮かんだ。
「その笑顔……俺たった今夢みつけた!将来この国を守る騎士になるよ!シルファの喜ぶ顔もっとみたいから!」
「え、な、なにをいってるんですか?た、たしかに実力さえあれば身分関係なくなれる可能性がありますけど…む、難しいですよ!無理ですよ!私なんかのために…」
「知ってるよ。でももうなりたいと思っちまった。だから頑張るよ!あ。そうだ、シルファ、これをみてくれ!」
彼は自分の右拳にルーチェをまとった。黄金に輝くその拳は美しかった。
「綺麗…」
「このエネルギアの力は今までケンカでしか役に立たなかったから嫌いだったけど、その存在意味がようやくわかったよ。」
「ほ、本気なのですね…」
「ああ!俺は騎士になるよ!」
「ケイ…ありがとうございます、ずっと、ずっと待ってますね!」
「おう!」
そんな会話がつづき、少し経ったころ彼はそろそろスーパーにいかなきゃならないと言って、またなと言って歩いていった。寂しいというか切ないというか不思議な気持ちに彼女は駆られていた。そんな中帰り際に、あっ!と思い出したようにケイはこう言った。
「あ、そうだ!!好きだよ!」
「え、そ、それって、ど、どういう…」
「最初の質問!ここから見る夕陽!!」
ニ回目のまたなという言葉とともに彼は帰っていった。気づけば彼が帰っていく後ろ姿から目が離せなかった。笑顔が頭に焼き付いていて忘れられない。またなという言葉が何より嬉しかった。一緒にいたのは1時間ほどだったが、シルファはこの時うまれてはじめて恋をしたのだと気づいたのだった。まさに一目惚れである……
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