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首都トーキン編 やっと到着!

やっと、首都トーキン編突入!


 ガルシア村から徒歩と馬車で乗り継いで首都トーキンに到着したのは3日後だった。

 トーキンに近づくと、道は石畳で舗装され、バスみたいな四角い乗り物が走っていた。でもよく見るとタイヤがない。なんと道路から20センチ浮かんで走っている?飛んでいる?

 陸上ホバークラフト?これも魔力の力だろうか?


 どうやって乗っていいのかわからないので、俺はただ馬車の窓から見つめるだけ。

 近未来の中、1人中世ヨーロッパ。ルネッサンス!

 到着したトーキンの街並みは、昭和の終わりの頃の雰囲気だ。

 石造りのビルみたいな建物があるが、せいぜい5階建て。いろいろな商店があるが、チェーン店と言うより個人営業。

 石畳の歩道を人達も、人達と言っても、頭に角が生えていたり、モフモフの耳だったりするわけだが、服装もちょっとレトロな感じがする。俺に取っちゃ懐かしいんだけどね。


 まずはシナモン先生に紹介された満腹亭に行ってみよう。

 街の案内図を見ると、このまま大通りをまっすぐ行って、噴水のある広場に出たら左に曲がる。そのまま、ずっと歩いていけば、ガルピン大学だ。

 俺は、キョロキョロ街をを見物しながら歩いて行く。エルフ、ドワーフ、背中に小さな白い羽根が生えている若い女性は、鳥人族?それとも天使さん?


 でも、全然違和感がない。まぁ俺も頭に角がある鬼だからね。

 やがて、道の突き当たりに、大きな建物が見えてきた。その周りを緑の生い茂った太い木がグルリと取り囲んでいる。

 きっとあれがガルピン大学に違いない。


 近づくと、道の突き当たりが大きな門になっていて、その前に青い制服を着たマッチョなおじさんが立っていた。頭にかぶった制帽の横から、牛のような角が生えている。牛人族だな。

「あのー田舎から出てきて、この辺よくわからないんで、教えて欲しいんですけどーー」

 俺は、いかにも田舎の純朴な青年になりきって、オドオドとしながら聞いてみた。

「田舎ってどこだね?」

「エポック州のガルシア村です」

 守衛さんはちょっとびっくり。

「あんな田舎から1人で出てきたのかい? ご苦労さんだね。それでなんだね?」

「満腹亭ってどこにあるか知ってますか?」

「ほお、満腹亭に行きたいのかい?あそこは安くてうまいからね。でも、昼飯よりも1杯飲みに行く方が多いかな?」

 なるほど、昼はランチで、夜は居酒屋になるのか。

「この並木道に沿ってまっすぐ行って4本目の十字路を左に曲がる。小さな路地の3本目の角にあるのが満腹亭だよ」

 なんだ、結構遠いんだな。

「ありがとうございます」


 俺はペコリと頭を下げて言われたまま道をたどっていく。

 1つ目の十字路まで、50メートルというところか?4本目の十字路曲がると、学生相手の食堂や居酒屋がごちゃごちゃ現れた。

 現世の学生時代を思い出す。金もないのに、なんで毎日飲み歩いていたんだろう?


 狭い路地を通り過ぎて、3本目。満腹亭と書かれた大きな木の看板を発見。

 側まで行くと、大きなガラス戸が2枚。そこにも満腹亭と書かれていた。

 覗こうと思っても、ガラスが曇っていて中が見えない。

 まぁ、こんなところで、モジモジしても始まらない。


 俺はガラガラとガラス戸を開けた。

「ごめんください」

「もうランチは終わりだ。明日来な」

 ひび割れたハスキーボイスが飛んできた。

 目を凝らすと、白木のカウンターの中に、痩せたおじさんが俺を睨んでいた。

 頭には立派な鹿の角。そしてTシャツから覗く細い両腕には、青い鱗がびっしり。

 青い鱗?もしかしてこのおじさん、鹿じゃなくて竜?ファンタジーの定番、ドラゴンさんですか?

「兄ちゃん、昼はもう終わったって言っただろ。帰りな」

 吊り上がった鋭い目で俺を睨む。レベル1の冒険者だったら、逃げ帰るところだ。

 でも、俺はへっちゃら。楽屋でうるさい爺さん落語家にどれだけ睨まれた事か。

「あのーーー飯を食べに来たんじゃないんです。シナモン先生の紹介で来たんです」


 するとドラゴンさんの目がカッとひらく。

「あんた、シナモンの知り合いか?」

「はい、ガルシア村からやってきました」

「おいおい、それを早く言えよ。ここに座りな」

 そう言うと、カウンターの前の席を指差した。

 言われた通り、その席に座ると

「はじめまして。僕、ポテトンっていいます」

「そうか、俺がガゼットだ」


 そう言うと、カウンターの上から青い鱗に覆われた、右手を差し出した。

 俺は思わず両手でその手をぎゅっと握る。ひんやりしていると思ったが、暖かい。

「ガルシア村からだと遠かったろう。ところでシナモンは元気かい?」

「はい、元気に役場で働いてます」

「そうか、あのシナモンが役場で働いているのか?」

 ガゼットさんの目がちょっと悲しげ。

「それでなんでトーキンにきたんだい?」

 ここでズバリ直球を投げ込んだ。

「僕、ーー落語家になりたいんです」

「落語家に?」

 ガゼットさんがマジマジと俺の顔を見つめた。


「お前さん、落語家ってどういう仕事か知ってるのか?」

 はい、37年間やってましたから知ってます。

「あんまり勧められる商売じゃねーぞ」

 ガゼットさん、不安そうに言うじゃありませんか?

 まぁ昔から落語家なんてのはヤクザな商売って言われてたわけだけど、もしかしてこの世界では本当にヤクザだったりして。破門されたら、小指詰めたりするとか。これはちょっと様子を聞いたほうがいいぞ。


「ごめんなさい、僕よく知らないんです。田舎の図書館で落語の本を読んで、落語家さんになりたいなぁって思ったんです」

 よくこんなセリフを抜け抜け言えるよな。北千住のスナックでおばさんが「私?女子大生」と酒枯れた声で言ったことを思い出す。


 でも村の図書館で落語の本を読んだのは本当だ。

 まずは、落語評論家ヒローネ先生が書いた名著「伝統の古典落語の歴史」

 この本によれば古典落語と言うのは、この異世界でも300年位前、ロマノフ王朝と呼ばれた時代にできた落語の事を言うそうだ。

「その落語が長年、大勢の落語家によって磨かれ完成されたのが、現代の古典落語である。その伝統を継承する古典落語は芸術である」

 はいはい、俺がいた頃も同じような事をじじい落語評論家がほざいていたなぁ。


 そして、次に読んだのが「古典落語全集」12巻。

 驚いた事に、俺がいた現世の古典落語とほぼ一緒。出てくる登場人物の名前が違う位。

 例えば、横丁のご隠居さんが「はち公いるかい?」と言うセリフが「ギル公いるかい?」と言う具合だ。

 まぁ、俺が知っている。この世界の落語の知識はこれくらい。あんまり先入観を持たない方が良いだろうと思って、シナモン先生に落語に関しては何一つ聞かなかった。


「やっぱりな。落語の世界っていうのは本で読んだだけじゃわからねえ。この店にも時々落語家が来るけど、みんな大変そうだぜ」

 おい、おい、この店に落語家が来る?それじゃあ、ここに定置網張っていたら、楽語家が引っかかるってわけだ。

 シナモン先生いい店紹介してくれました。

さぁ、ここからギアを上げて異世界落語家入門まで突っ走るぞ!

と思いましたが、明日から仕事やキャンプが立て込んで1週間位お休みします。

必ず再開しますので、首を長くしてお待ちください。

やっと、俺の書きたい話に指が引っかかったからね。

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