ブロンズクラス勉強会開演!
何か頑張って連日投稿。
明日は糖尿病の検診だから、ちょっと無理かな?
若いからって、飲み過ぎ食べ過ぎは年取ってから後悔するよ
開場を告げる1番太鼓が鳴り響く。
お客さんが次から次へと入ってくる。
ロマノフ亭は100人満席。補助椅子を出せば、120人。
開演5分前。ほぼ満席。80人は座っている。
これがブロンズクラスしか出ない勉強会なら大入りだろう。
「ヤング兄さんのお客ばかりじゃないですか?」
デビ助がもみ手しながらヨイショする。
「今日俺が出る事、「ギガース」で宣伝しといたからな」
ギガースとは前世のTwitter。フォロワーが多ければ宣伝効果抜群だ。
へえーこのイヤミ悪魔、結構人気があるんだな。
まあ、前世でもそうだった。お客なんていうのは、その落語家の本当の姿を知らない。
客前では、いつもニコニコ頑張り屋さん。でも裏では人気芸人に媚びて、下のものを怒鳴り散らす、胸くそ悪い嘘つき野郎。
でも、客は、そんな姿を知らない。その落語家の言う事しか信用しない。
でもね、落語仲間はわかっている。だからそいつがトリを取っても側に誰も寄って来ない。
そんな仲間うちの評判の悪い奴はほっといたって潰れていく。
開演のベルが鳴る。
ロマノフ亭は高座の下手に一畳程のお囃子部屋があり、お囃子の姉さんが一人座布団に座っている。
目の前が素通しの格子戸になっており高座と客席がよく見える。
お囃子さんの横に持ち運べる大太鼓と締め太鼓が置かれ、シルバークラスがいないから出演者が順番に叩く。
高座返しも自分たちで座布団をひっくり返し、めくりも返す。
一番下っ端の俺は、自分の出番以外、ここで先輩たちの出囃子を叩く。
でも今はそれがありがたい。
高座のすぐ横で、みんなの落語を見る事が出来る。
さあ、デビ助の出囃子「悪魔のワルツ」が軽快に流れ、俺は、楽隊で太鼓合わせる。
「ドンタタどんたたどんたった」
デビ助が高座に座り、喋り始める。
「サタン様を祀ったお堂のそばに、小さな雑貨屋がございました。しかし、さっぱりお客さんが来ません」
「婆さん、もうワシらも歳だからそろそろ店を辞めるとするか」
「そうですね、でも、私たちがいなくなったら、誰がサタン様のお堂を掃除するんですか?」
「そうじゃな、サタン様がいたから、今まで商売が出来た。元気な限り店を続けるか」
そう言うと、おじいさんとおばあさん、外に出て、サタン様のお堂に向かって
「エコエコアザラクエコエコアザラク」
と、手を合わせる。
すると、にわかに雨が降り出しまして、道がぬかるむ。
「こりゃ困った、じいさん、草鞋を一足売ってくれ」
通りすがりの旅人が草鞋を買ってくれまして
すると、次から次へとお客さんがやってきて
「俺にも、草鞋を売ってくれ」
「私にも、草鞋を」
店にあった草鞋が全部売れてしまいます。
そこにまた、1人の旅人が
「すまねぇが、俺にも草鞋を売ってくれ」
「すいません、今全部売れちまったんですよ」
「何言ってんだい、じいさん。天井から、まだ草鞋が一足ぶら下がってるじゃねーか」
「おや、気がつきませんで」
そう言って、おじいさんが、天井からぶら下がっている紐から草鞋を1足取ると、新しい草鞋がぞろぞろと紐から生えてくる。
おお、懐かしい。「ぞろぞろ」と言う古典落語だ。
信心ものは色々あるが、この草鞋が「ぞろぞろ」と出てくる音感が面白い。
マンガ日本昔みたいな世界にお客さんを引っ張り込まなきゃ笑は起きない。
へえーデビ助、こんな渋い話やるようになったんだ。
格子窓から見ると、客席から黒いオーラが数本、立ち上がり揺れている。
「草鞋が、次から、次へと、ぞろぞろ生えるのが評判となりまして、ずいぶん繁盛いたします。この店の隣が床屋さん。全くお客さんが来ない。そこでーー」
「爺さん、なんでお前さんの店の草鞋は、ぞろぞろ生えてくるんだい?」
「ギルさん、誰にも言っちゃいけないよ。実は、毎日サタン様のお堂を掃除して信心しているんだ。きっとサタン様のおかげだよ」
それを聞いたギルさん、早速
「サタン様、お願いします。うちも同じように商売繁盛するようにしてください」
そう言って、毎日毎日お堂にお参りをする。
すると、ちょうど100日目
「おう、親方、ヒゲ当たってくれねぇか」
「久しぶりの客だ。これもサタン様のおかげだ」
喜んでギルさんがお客さんのヒゲを自慢のカミソリで剃ると
その後からヒゲが
「ぞろぞろ」
ドッとお客さんが笑う。
客席のオーラが太くなり大きく揺れる。
しかし、立ち上った。オーラは、天井近くで細くなり消えてゆく。
まぁ、普通に受けたと言う事だ。
始まったばかりだから、客の熱量もそれほど高くない。
その中で、最後のオチで笑わせたんだから、デビ助も落語魔力が増えたんだろう。
でも、サタン様のお堂って、やっぱり悪魔族だからかな?
デビ助が座布団をひっくり返し、めくりをめくる。
「アニマル亭おこん」と名前が出ると、数人のおじさんが拍手する。
へー、人気があるんだ。
座布団に座るとデビ助よりも大きな拍手。
「おこんちゃん、待ってました」
おじさん連中から声がかかる。
「ありがとうございます」
黒髪を揺らして、にっこり笑う。
「かわいいよ、おこんちゃん」
この姉さんも、親父転がしだな。
「昔から、人の恋路を邪魔するやつは『チーズの角で頭をぶつけて死んじまえ』
なんて言われておりますが」
「おとっあん、開けてくださいな、ハン吉ですよ」
「おっかさん、開けてくださいな、フラワーでございます」
「おとっあん、開けてくださいな、ハン吉ですよ。遅くなってすいません」
「おっかさん、開けてくださいな、フラワーでございます。ごめんなさい、遅くなって」
お、この入りは「宮戸川」と言う古典落語。
お花半七の恋のお話だが、最後は怖い展開になる。だから、皆、前半で
「この後は本が破れて読めませんでした」
なんて、お茶を濁して降りてくる。
おこん姉さんのお花ちゃん、いや「フラワーちゃん」は女流落語家らしく、リアルに可愛い。
だから、このネタを選んだんだろう。
「ハン吉さん、これからどうするの?」
「しょうがありません、アーミー町のおじさんのところに泊めてもらおうかと」
「だったら、フラワーも連れてって」
そう言うと、小首をかしげて下から見つめるおこん姉さん
姉さん追っかけのおじさんたちはもう、うっとり。
でも、3分の1ほどいる女性客はなぜかしらけた雰囲気。
黒いオーラも、おじさんたちしか立ち昇っていない。
おこん姉さんには、客席のオーラが見えているのであろうか?
それでもぐいぐい行く。
「だめですよ、フラワーちゃん。アーミー町のおじさんは、すぐに勘違いするんですから」
「何を勘違いするの?」
「こんな夜遅くに、若い女の子を連れて行ったら、2人は出来てるって、すぐに勘違いするんです」
「2人が出来てるって?何が出来てるの?」
「だから、2人が恋仲だって思い込んじゃうんです」
「まぁ嫌だ、ハン吉さん、フラワーの事好きだったの?」
そう言って、ハン吉の手を両手でそっと握る仕草。
そのままハン吉の肩にもたれるように体を預けるおこん姉さん、いや、フラワーちゃん。
「おこんちゃん、俺も一緒に連れてって」
我慢出来なくなったおじさんが、声を上げた。
それを聞いた、お客さんがドッと笑う。
黒いオーラがうねるように何本も立ち昇る。
デビ助よりも客席の温度が上がる。
今の客の声をきっかけに、おこん姉さんがギア遠上げた。
アーミー町のおじさんの家に行くと、すぐに勘違いして、2人を2階にあげる。
そして、婆さんと、おじさんが、若い時に出会った頃の恋バナをはじめて、年甲斐もなくイチャイチャする。
ここで客席のオーラが太くなり、重なり合って、渦を巻く。
さっきまでしらけていた女性客も、そのオーラの渦に巻き込まれ、笑い声を上げる。
そして、最後のオチに向かって突撃。
「フラワーちゃん、そんなにくっついちゃ眠れませんよ」
「だって1人で寝るの怖いんだもの」
「大丈夫ですよ、何もありませんよ」
すると、遠くで鳴っていた雷が近くにズドーーンと落ちる
「キャー怖い」
「思わず、フラワーちゃんがハン吉に抱きつく。
「すると、フラワーちゃんの着物の裾が乱れて、真っ白な足が暗闇の中で怪しく光る。そしてフラワーちゃんの髪の匂いが、ハン吉の男の本能を刺激します。思わず抱きしめるとーー」
「ああ、フラワーちゃん!」
「ああ、ハンちゃん嬉しい」
ここで抱き合う2人を仕草で表現して、動かないまま、高座で固まる。
「ーーーーこの後は、本が破れて読めませんでした」
にこっと微笑んで、頭を下げるおこん姉さん
湧き上がる黒いオーラ。
その中に赤い筋が1本煌めいたのを俺ははっきりと見た。
落語バトル、前哨戦といったところかな?
まだ、具体的に落語バトルのやり方決めてないので、手探り状態。
小説って書けば書くほど難しくなるね




