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前世で感じた事とは?

昨日書いていた部分があったので投稿したよ

明日はさすがに投稿できないなぁ。

前世で感じた事とは?

その前に言っておかなきゃいけない事は、落語は客を笑わせればいいと言うもんじゃない。

そこが漫才やコントと違う。

例えば、人情話や怪談話。客を泣かせたり、怖がらせたりする。感動させると言うのもある。

昔の落語家がよく言うセリフ。

「落語はクスッと一回笑えばいいんだ」

だから寄席で、古典落語をやっている落語家が、客が静まり返っていても

「今日のお客さんはちゃんと話を聞いてるよ」

これで済む。誰も受けなかったと落ち込む奴はいない。


しかし、新作落語は違う。

まず「笑い」ありきだ。 

だから俺も、若い頃は、客を笑わせるために何でもやった。

高座の座布団をこねくり回す。床に叩きつける。

座布団を使って、ロメオスペシャル釣り天井固めをやった事もある。

高座の上をゴロゴロ転がる。ぬいぐるみを出したり、緋毛氈(ひもうせん)で体をぐるぐる巻きにした事もある。

まさしく邪道。


客に認めてもらうには、とにかく笑いしかない。

ストーリーの流れを断ち切っても、要らないギャグをこれでもかとぶち込んだ。

聞こえる笑い声が小さいか大きいか、これが全てだった。


しかし、年が経つに従って、笑い声が全てじゃないとわかった。


霞ヶ関のイイノホールで落語会があり、500人満席。

若手人気落語家3人の落語会。若手といっても、歳は皆45歳前後。

俺と月見亭団子、海ノ家魚々(トトスケ)の3人。

特に魚々輔は、古典落語も新作落語もやり、抜擢で真打に選ばれ、俺を追い越していった後輩だ。

だからこいつだけは負けないと力が入る。


まず、団子が上がって「茗荷宿」と言う日本マンガ昔話みたいな古典落語をやった。

団子はその白くてむっちりした体型に似合わず毒舌だ。

落語の合間に、毒舌をぶち込み、確実に笑いを取る。

また、キャラクター造形が人と違い、独特のものがあるので人気がある。

しっかりと受けて高座を降りた。


その次に上がった俺は、その当時、必殺で受けていた「トキ蕎麦」をぶちかました。

俺のトキは時間の時ではなく、佐渡島の朱鷺。

江戸に出てきた、越後生まれの田舎蕎麦屋が佐渡ヶ島の朱鷺絶滅を心配して、自然保護のリサイクル蕎麦屋をやっている。

そこに江戸っ子がやってきて、丼を褒めると、実はその丼がリサイクルされたヘルメットだった、なんて言うばかばかしい話だ。

その中に

「それじゃあ、お客さん、これからそばを打ちますから」

「おいおい、屋台じゃねーか。外でそばを打ったらゴミが入るだろ

「知らないんですか?昔から二八そばと言うのは、そば粉が8割ゴミが2割」

「そんなわけねーだろ」

「それでは始めますよ。It's Show TIME!」

そう言うと、下に引いていた座布団を持ち上げて、床に叩きつけ、そばの団子のようにこねくり回すのだ。

これは当時衝撃的な芸で、結構話題になった。

落語評論家から「神聖な座布団への冒涜」

なんて書かれていたなー。


その「トキ蕎麦」をイイノホールでぶちかましたのだ。

客は、ワンワン受けて、俺は今日の落語会すべて俺がもらったぜ

得意満面だった。

(魚々輔に勝った)


そして、トリに上がった魚々輔が「牡丹灯籠」と言う怪談話を始めた。

客席は、シーンと静まりかえる。

笑い声どころか、しわぶき1つ聞こえない。

延々と45分語り降りてきた。


俺は、昔から「怪談話なんか聞いてどこが面白いんだよ」と常々思っていた。

魚々輔が降りてすぐに俺は出口に急ぐ。

イイノホールは、お客さんと芸人の出口が一緒。楽屋口は無い。。

私服に着替えて、ベースボールキャップを被った俺を、鬼切だと気がつくものは誰もいない。

長い下りのエスカレーターに乗った時だ。

すぐ前に乗っていた。35歳位のお姉さんが2人、今日の落語会の感想をしゃべっている。

「魚々輔さんの怪談話素敵だったわね」

「お露ちゃんの恋心わかるわ」

「聞き終えて、あまりに感動しちゃったから、しばらくぼーっとしちゃった」

「魚々輔さん、本当に名人ね」

そこに鬼切の名前は出てこない。


あんなに笑わせたのに、なんで俺を評価しないんだ。

すると、髪の長い俺好みのお姉さんが

「鬼切師匠の落語って笑い欲しすぎるわよね」

「何かあざとくて、見てて疲れる」


俺はショックで、思わず下を向き、ベースボールキャップで顔を隠した。

俺の落語はあざといーあざといーー。


笑いが全てじゃないんだ。全身から血の気が引いた。

今まで客の笑い声が全てだと思っていたのに。

俺は今まで何をしていたんだ。


それから俺は、お客さんの雰囲気を感じるように努力した。

笑いじゃない、どれだけ客が話に引き込まれるか?


俺は視力が両目とも0.1しか無いからお客さんの顔は見えない。

若手の落語家で「お客さんの顔が見えないと不安だ」

と言って高座にコンタクトレンズをはめて上がる奴もいる。

眼鏡をかけて上がる落語家もいるがそれは少数。

何故なら古典落語で眼鏡をかけたらお殿様も侍も花魁も皆んな眼鏡をかける事になる。

以前、俺が「パンダの恩返し」と言う新作落語をやった時にパンダのお面を被った。

(これは斬新だぞ)と得意満面だったが、途中で一番前に、座っていた男の子が

「お父さん、おじいちゃんもパンダだよ」


この意味わかるかい?

落語は一人で何役もやる。

パンダも狐も狸もおじいちゃんも花魁も一人で演じ分ける。

これが落語の一番素晴らしい所だ。

世界に無い唯一無二の芸能。


だから俺自身がパンダのお面を被れば、何人も演じ分けても、全部パンダのお面を被る事になる。

パンダのお面を被ったおじいちゃん。

パンダのお面を被った侍。

パンダのお面を被った狸。


まあ眼鏡も同じイメージを客に植え付けるので、高座に上がる時は眼鏡を外す。そしてコンタクトレンズを入れるのだ。


俺は反対。客の顔が見えると恥ずかしい。

2つ目になってから邪道新作落語ばかりやっていた。

客がムッとしてたらどうしよう?

客が呆れてたらどうしよう?

客が寝てたらどうしよう?


まだ気の小さかった俺はそんな客の表情が見えたら気になってしょうがない。

だから0.1の視力でぼんやり見える客席が合っている。

そしてぼんやり見える客席の不思議な感じ?圧力?空気?見たいな物が真打ちに上がって45歳位から段々とわかって来た。


上がった時の

「誰だ、こいつ?」

冷たい空気が客席に流れる。

受けない落語家はこの空気を変えないまま、落語に入り、冷え冷えとしたまま終了。

でも漫才でもコントでも無い。

笑いが基準じゃ無い古典落語家の爺さん達はお決まりの

「良く聞いてるよ」

もしくは「今日の客は馬鹿だ」

で終了。


まずは固まっている客を崩す。

柔道の技を仕掛ける前と一緒。相手を崩して動かす。

しかし客は敵じゃない。

味方に付ける。そのためには安心感。

客が思っている事に、答えてあげる


初めての寄席で初めて見る落語家。

殆どのお客さんが思うよね。

「誰だ、こいつ?」

それならば、まずは最初に自己紹介。

「皆さん、俺は新潟の生まれです。新潟に86のおふくろが一人住んでるますが、元気です」

ああ、この人は新潟生まれで、そんな年のお母さん要るならいい年だな


「皆さんと違って田舎のおばさんなので寄席に来た事も無い、何にも知らない女です」

あらあら、そりゃ私達は、田舎者じゃないわよ


「落語家になるには親の許可がいるんです。なので東京の大学にいましたが、わざわざ新潟の田舎に帰って

『母ちゃん、俺、落語家になりたい」

耳が遠い仕草しながら

「なんだって?治?」

「だから、落語家になりたい」(大きな声で)

「え、なんだって?」

「だから、落語家になりたい」(さらに大きな声で)

「お前、バカなんじゃないかい?何で東京の大学行ってるのに酪農家になるんだ」

「酪農家じゃなくて落語家だよ」

ここでお客さんがわーーーと笑う。


安心したから崩れてくれた。

そうなると客席の温度が上がる。

冬から春。そして空気も緩む。

最初の凍った空気が溶けたのだ。


実はこんな風に崩せる落語家は少ない。

普通、寄席の持ち時間は15分。

それが番組が延びていたら、時間調整で8分位で降りなきゃいけない。

詰まっていたら20分やる。

アドリブで時間を調整出来なきゃ寄席に上がる資格は無い。


テレビの漫才や、コントは長くても6分位。短けりゃ3分。

それに比べれば、落語は長いと思うかもしれないが、きちんとストーリーを話すと思えば、15分は必要なのだ。

だから、古典落語は前座話と言われるものも、10分はある。

テレビのお笑い番組で、落語が不利と言われる理由の1つに挙げられる。


その15分の間で、凍った空気を溶かし、温め、笑う雰囲気を作らなくてはいけない。

だから、客の熱をサーモグラフィーのように感じ取る感覚が必要だ。

そして、客席の纒う空気の柔らかさ。

客が笑ってもいいんだと期待する熱気。

その全てが、高座に座る俺に圧力として感じる事が出来るようになった。


その経験が、異世界でも、オーラの見え方にすごく似ている。

だから、もしかして、オーラが黒く昇ったり、1つにまとまったり、赤や黄色に見えたりするのは、俺だけなのかもしれない。

これは一度確認しないといけないなぁ。


こんな実験と検証を重ねながら、俺のブロンズクラスのお披露目が終わった。


さぁ、やっと色々な仕込みが終わりました。

これから、異世界落語バトル開始いたします。

ダラダラ付き合っていただきありがとうございます。

まだこの先、落語ダンジョンに潜ったりするので、お楽しみに。

でも、今仕事が忙しいので、投稿はしばらくお待ちくださいね。


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