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村の生活

家の中に入ると、板の敷き詰められた10畳ほどのリビング。

部屋の中央に厚い木の板でできたテーブルがドンと置かれ、左右にこれも木でできた椅子が2脚ずつ置かれている。

部屋の右側はキッチンだろうか?ガスコンロみたいなものが2つ口あり、その隣は大きなシンク、その上に水道の蛇口が付けられている。

異世界ファンタジーだと、竈門に水瓶と言うイメージだが、それよりも文化レベルが上なのかしら?

見渡すと、さすがにテレビは無いようだ。

1番奥の壁には扉があり、その向こうは寝室なのかな?

思ったよりも、部屋の中が明るいのは、左右の窓が大きく、透明なガラスを通して、陽の光が充分差し込むからだろう。

そうか、ガラス作れるんだ。

「さぁ、お座り」

おばあちゃんが椅子の1つを進めてくれた。

遠慮なく座らせてもらう。

テーブルの上には野の花だろうか、ピンク色の小さな花が花瓶にこんもり盛られている。

何とも言えず良い香り。

おばあちゃんはキッチンの棚に乗っていたやかんに水を入れると湯を沸かした。

そして、コバルトブルーのティーポットの中に干からびた香草のような草をどばっと、放り込む。

そこに沸騰したお湯をどばどば注ぎ込み、しばらく放置。

そのお茶を白い陶器で出来たカップに注いで、俺の前に出してくれた。

「体があったまるからお飲み」

カップを手に持って香りを嗅ぐとちょっと薬臭いような匂い。現世で言えばルイボスティーか?

フーフー冷まして1口すする。

「はあーーー」

思わずため息が出ちゃったよ。

転生してから知らず知らずのうちに体が緊張していたんだろうなぁ。

その緊張が、このお茶でじんわりと溶け出していく。

「おいしいです」

すると、おばあちゃんがにこっと笑って

「それはよかった。ところで兄さん名前なんて言うんだい?」

名前?全く考えてないよ。

「えーと、名前は あーーだめだ!思い出せない」

両肘をテーブルにつくと両手で頭の髪の毛をつかみ、いやいやしながら苦悶の表情。

「ごめんごめん。無理に思い出さなくたっていいよ。ゆっくりでいいからね」

おばあちゃんが心配そうに俺を見る。

「私はキャロットって言うんだ」

キャロットばあちゃん?にんじん娘?

「俺は確かーー(便乗しちゃえ)ーー丸い野菜のような名前でー」

キャロットばあちゃんの目がぱっと見開く。何かひらめいたのか?

「もしかして兄さんの名前はーーポテトかい?」

俺は、じゃがいも君?さすがにそのまま受け入れるのはちょっと嫌。

「いや、ポテトじゃなくて、ポテト、ポテト、ポテトン。思い出した、俺の名前はポテトンと言うんです」

やっちまったのか、俺。異世界の名がポテトン。テポドンと似てないか?怖がって誰も近づいて来なかったりして。

「ポテトン、いい名前じゃないか、おめでたい名前だよ」

異世界の名前の基準が分かりません。ポテトン=寿限無?


「ほかに何か思い出す事は無いかい?なんて村にいたんだい?」

「すいません、これ以上何も思い出せないんです。ーーそれでここはどこですか?」

「ここはガルシア村だよ。エポック州の北の端っこさ」

全くわからないのでここはとぼける

「ごめんなさい、山奥に住んでいたんでよくわからないんです。この村で働く場所はありますか?」

「小さな村だからね。人手は足りているんだよ」

その時、玄関の木の扉がばっと開く

「今帰ったぞー」

ずんぐりとしたヒゲモジャのおじいちゃんが立っていた。 ブルドッグ顔で 体はまんまる。野良仕事で 体を鍛えているのか、固太りで硬そう。緑色のツナギがはち切れそう。お尻から丸まった、小さなしっぽがちょこん。

もしかして、この人の名前は?

「何?帰らずの森で頭を打って記憶なくした?それは難儀だったなぁ。ワシはキャロットの亭主でバンプキンって言うんじゃ」

正解でした。かぼちゃおじいちゃん。

「しかし、働くといっても、身元がはっきりとしないとなぁ。よし、それじゃあ、これから役場に行って、ギルドカートを作ってもらおうじゃないか」

「あのーギルドカードってなんですか?」

「山奥で家族だけで住んでいたから知らんのか?まぁ身分証明みたいだもんじゃ。普通は5歳の誕生日に役場に届けるんだがな」

いやいや、こんな記憶喪失で事情もわからないやつの身分証明カードなんて無理でしょう

「何、悪いことをしてなければ大丈夫じゃよ」

確かにこの異世界に来たばかりだから、悪い事はしてないけど、そんなの他人がどうわかるんだろう?

「ぐずぐずしとらんと、さっさと役場に行こう。早くしないと閉まっちまう」

パンプキンじいさんに急かされて、俺たちは役場に向かった。


ガルシア村の役場はレンガ造りの立派な建物だった。立派といっても地方の図書館位の大きさだが。

石の階段を上って中に入る。驚いたことに天井に蛍光灯のような白い光を放つランプがいくつも吊るされている。

パンプキンじいさんは、迷いもせずに、1番右端のカウンターに行くと座っていたお姉さんに

「ピーチさん、ギルドガードを作ってもらいたいんだが」

ビーチさんが顔を上げる。柔らかそうな茶色い髪が肩までかかり、ほっそりとした顔立ち、釣り上がった目。そして、突出た細長い耳。美人エルフ発見。

「パンプキンさん、ギルドカードってその人のですか?」

チラリと俺を見る。なんて色っぽい流し目なんだろう。

「帰らずの森で頭を打って、記憶をなくしたそうだ。たまたま家に訪ねてきてな。そこで、おせっかい婆さんが面倒見たってわけだ。それで働きたいと言うのだが、ギルドカードを持ってない。まぁそれで作ってもらおうと思ってな」

パンプキンじいさんが説明してくれた。

ビーチさんが、俺の目を見つめたまま

「なんでギルドカード持ってないんですか?」

そりゃそうだよなぁ。日本で生まれて戸籍持ってないって言うのと同じだもんね。

すると、パンプキンじいさんが、得意げに喋り出した。

「ワシは若い頃いろんな場所を旅して歩いてな。その時、ペラリン州の山奥で鉱山採掘で暮らしている一族がいると聞いたことがある。貴重な鉱石があるから、他の者たちには教えない、家族だけで暮らしているものもたくさんいるそうだ。きっとこのお兄さんも、そんな家族の1人だったんだろう。それなら急いでギルドカードを作らなくても事足りる。が伸ばし伸ばしているうちに、両親が病気で亡くなってしまった。大方そんなことじゃないのかね」

「なるほど、、わかりました」

ビーチさん、わかっちゃったよ。それにパンプキンじいさん、あんた俺以上の創作落語家だよ。俺の数少ない話から、そこまでストーリー作り上げるなんて、あなたは三遊亭圓朝師匠ですか?


すると、ピーチさんがカウンターの奥から平べったい黒くてツルツルした石の板を持ってくると

「この上に右手を乗せてください」

言われるまま、右手を石にぴたっとくっつける。

すると、石が青白く光だし、しばらくすると、光が収まる。

「犯罪歴はありませんね。それではギルトカードに登録します」

しばらくしてピーチさんが銀色の1枚のカードを差し出してくれた。

そこには

名前 ポテトン

年齢 17歳

職業 無職

国籍 ジャパック王国


国籍 ジャパック王国?ジャパン、日本って事か。神様、異世界設定、手抜いてるんじゃないの?

後から何度も編集できるのっていいよね。

勢いで書いて、誤字脱字、間違った設定なんか訂正できるからね

小説家になろう作品読んでると後書きに「ご指摘された通り、スキルの設定修正しました」

なんて書かれているのはこのことだったんだね。

読者に指摘され、編集すればするほど作品が成長する。

お客さんの前で実際にやって受けなければ磨き直す。新新作落語みたいだね。


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