神様登場!
第一話短すぎてすいません。初めて「小説家になろう」に投稿したくてやってしまいました。
なかなか自分の描きたいところがまだまだ先なので焦りますが、のんびり楽しんで描きたいと思います。
今まで自分が読んでいた小説家になろう人気作品は本当にすごいなぁと改めて思ったよ。
どのくらい暗闇にいたのかわからない。闇なのか、暗黒なのか、宇宙の果てなのか。
そもそも宇宙ってなんだよ。ビックバンで宇宙が生まれ、今も宇宙が広がっているなんて朧な知識で知ってるけど、広がっているならその外にある空間は一体なんだよ?
そもそも俺がいた地球だって太陽と絶妙な距離でくるくる回っていたから、水があって微生物が生まれ、植物ができ、魚から恐竜、哺乳類に進化して、猿から人間?
その人間が今じゃスマホを使いこなしAIだ自動運転だなんて落語の「あたま山」の方がまっとうに聞こえるぜ。
なんだか目の前が明るくなってきた。薄目を開けると、柔らかな白い光がぼんやりと見えてきた。
「え、目が開くの?」
驚いて顔を上げる。ドライアイスみたいな煙がたなびく床に俺は寝転んでいた。
(どこだよ、ここ?)
「目が覚めたようだな」
思わず上半身を起こすと、目の前に古代ローマ人の着ていたローブをまとった爺さんが立っていた。
ガリガリに痩せて、ハゲ頭。面長な顔につぶらな瞳。顎には白ひげがたっぷり。
(まさか、亀仙人?嘘だろ)
「私は神である」
お約束のセリフを聞いても、俺は信じられなかった。
「すいません。これは夢ですか?」
「夢ではないぞ、師匠」
「え、師匠って俺のこと知ってるんですか?」
「知らない奴を生き返らせたりせんわ。ワシはそれほど暇じゃないしな」
自称神様が、ちょっと威張って白ひげをしごく。
(ちょっと待てよ。師匠って言ったって色々いるからな。三味線とか踊りの師匠とか)
「まぁ疑うのも無理は無い。鬼笑亭鬼切師匠」
俺の芸名知ってた。思わず神様の顔をまじまじと見ちゃったよ。
「なんで知ってるの?」つい神様とため口。
「まぁ神も下界を見て回るからの。その時、寄席でお前の新作落語を聞いて面白くてな。また聞きたいと思ったんじゃよ」
そんな理由で生き返してもらえるもんなの?それじゃあ新作落語の鬼と言われた俺の師匠、鬼笑亭鬼勝だって生き返るんじゃないの?
「お前の師匠は100年後、新しい魂に宿って生き返る」
あの鬼みたいに怖い師匠が蘇る?100年後の落語界、ちょっとしたパニックだよ。
「ほほほ、心配いらん。生き返るといっても、前世の記憶は全て消え新しい人生を送ることになる。また落語家になると言う確率は無いに等しいからな」
なるほど、死んだ後のシステムちょっとわかってきたぞ。でも、そうなると。
「それじゃあ、もし俺が生まれ変わったら、今までの記憶が全部なくなるってことだよね」
「確かにそうなる。しかし、そうなると、ワシが困るでな」
「何が困るの?」
「金目のマリーの続きが聞けないではないか」
金目のマリー?確かに俺が作った創作落語だ。マリーと言うメス猫が離れ離れになった妹キャンディーを探すロードムービーみたいな話で、第5話まで作って自分の勉強会でネタおろしをしていた。
確か第5話は、盛岡を支配する赤鬼と言う凶暴な熊にさらわれた妹を助けるため、マリーと旅の途中で知り合った、さすらいの番犬チロおじさんと赤鬼の屋敷に乗り込む場面で終わっている。
「妹キャンディーちゃんが助かるのかどうか気になって夜も眠れん。師匠早く続きの第6話を聞かせてくれl
「聞かせてくれと言われたって、生まれ変わって記憶がなくなりゃできないよ」
「そこで相談じゃ。同じ世界で生まれ変わると記憶はなくなるが、違う世界で生まれ変われば記憶はそのまま引き継ぐことができるぞ」
違う世界って異世界?異世界転生?スライムになるわけ?
「別にスライムになるわけじゃないが、人間とは違う種族になるな」
「違う種族って、例えば魚になったら落語できないよ」
だって魚は高座で座布団に座れない。座れないどころかエラ呼吸できなくて死んじゃうよ。
「それは心配いらん。ちゃんと落語ができる種族にするからな」
落語ができる種族ってなんだよ?なんかいまいち気乗りしない。
「それで異世界転生断ったらどうなるんですか?」
神様が遠くを見つめて、ポソリといった。
「300年後、ダンゴムシに生まれ変わる」
「異世界転生お願いします!」
神様、にっこりとサムズアップ!
「それじゃあ、鬼切師匠を異世界に転生させるぞ」
俺が座っていた床に、巨大な魔方陣が浮かび上がる。いよいよファンタジーな大冒険が始まるぜ。
「異世界に転生したら、無敵勇者になって巨大帝国を作って、美女集めてウハウハハーレム。グフフフ」
「言い忘れておったが、異世界に行っても落語家一択。そして、前世の知恵で悪さができぬようエッチな事は禁止。早く一人前になって、金目のマリーの続きを作って聞かせるのじゃ」
ちょっと待って、今大事なことさらっと言わなかったか?落語家一択はわかるけど、エッチ禁止って?せっかく若返るんだぞ。それに落語家になろうなんてやつは、心のどこかで女にモテたいって思っている奴らばかりなんだ。
「神様!エッチ禁止ってどこまでならいいんですか?」
「いやらしくないキスまでならオッケーじゃ」
いやらしくないキスって?せめて、お触りぐらいは?
「だめだめ。お触りじゃ止まらんじゃろ。それ以上のことをしようとすれば、天罰が下るぞ」
おい、いきなり神様の威厳出すなよ。
巨大な魔法陣が光輝く。青赤黄色の光の柱が渦を巻く
「神様ーー!そもそも異世界に落語家って商売あるんですか?」
「それは心配いらん。ワシに任せとけ。それじゃあ師匠、アディオス!」
どこの生まれの神様ですか?
そして俺は、光の螺旋に包まれ意識が消えていった。