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異世界芸名決定!

連続投稿!

これから仕事に行きます。

って土曜日のこれからって何の仕事だよ?

わかった、コンビニのアルバイトさんだ。

 それから3日後の朝、赤鬼師匠の家に行く。

「おはようございます」

 大きな声で挨拶をすると、格子戸をガラガラと開ける。

 そのまま、家の中に入ると、小さな庭に面した廊下を進み、この前、通された4畳半の和室の前まで行く。

 既に障子戸は開かれて、ちゃぶ台の前に座った赤鬼師匠が、お茶を飲みながら何やらノートに書き付けている。

 俺は、廊下に正座すると

「師匠おはようございます」

 頭を下げた。

「ああ、おはよう。なんだ、きちっと挨拶出来るじゃねーか。誰かに教わったのか?」

 しまった、前世の記憶があったので、つい、正座して挨拶しちまった。

「えーと、そば吉兄さんに習ったんです。師匠の前では、ちゃんと正座して挨拶するようにって」

 困ったときのそば吉頼み。

「そうだったのか。まずはそこから教えなきゃと思っていたんだがな」

 ちょっと肩透かしを食ってがっかりする赤鬼。


「まぁいいや、中に入りな」

 ちゃぶ台の前に正座した。

「お前の芸名を考えていたんだが、まだアイアンクラスだから(ノートを見る)「ヘヴン亭小鬼(こおに)って言うのはどうだ」


 鬼人族だから、小鬼?安易と言えばその通りだが、悪い名前じゃない。アイアンクラス、いわば前座なら覚え易い名前の方が良い。

「ありがとうございます」

 俺はペコリと頭をさげた。

「そうか、小鬼でいいんだな」

 赤鬼師匠もうれしそう。もうこれからは、俺の師匠なんだから、ただ「師匠」と呼ぼう。

「はい、師匠。うれしいです」


「さあ、お前の着物だ」

 紺色の風呂敷包を差し出す。

 そうか、落語家になったんだから、異世界でも着物いるよな。すっかり忘れていた。

「ありがとうございます」

 俺はその風呂敷包を開いた。

 中には焦げ茶色の一重(ひとえ)の着物。ナス紺色の帯。肌色の長襦袢に腰紐 白足袋と扇子と手ぬぐいが入っていた。

「俺が昔使っていたものだが、洗濯してある。肌襦袢(はだじゅばん)位は、自分で揃えな」

 肌襦袢と言うのは、1番下に着る下着の事だ。ステテコとVネックの薄いTシャツで応用が効く。

「ありがとうございます」

 前座見習いは余計な事は言わない。「ありがとうございます」「分りました」「失礼します」この3つで事足りる。


「それで落語ギルドに連絡したら『今アイアンクラスが少ないから、早めに楽屋に入ってもらいたい』って言われてな。普通は半年位見習いをやってもらうんだが、3月位で楽屋に入ってもらう事になる」

 前座が少ないって言う事か?確か、落語ギルドのエリックさんが『ここ2年、魔力検査で合格するものがいない』って言ってたもんなぁ。

 すると、俺が久しぶりの前座って言う事か?


「それでお前、落語出来るのか?」

 そりゃあ、前世で37年間落語家やってましたので出来ますよ。

「出来ません」

 でもまあ、こう言うのが正解だな。

「だろうなぁ。それじゃ教えてやるから、着物に着替えろ……お前、着物着れるのか?」

「あ、はい。満腹亭の大将から教えてもらいました」

 ガゼットさん、すいません。名前使わせて。

「そうか、それじゃあ廊下で着替えな」

 普通ならいきなり着物着る事は出来ないよね。まぁ俺は前世で落語家だったから、そりゃ着る事が出来るんだけど、その事を言うわけにはいかないし。

 だから、面倒な事は今まで会った事のある人のせいにしちゃおう。


 廊下で着物に着替える。

「師匠、お待たせしました」

 俺の着物姿をまじまじ見る。

「ふーん、様になってるじゃねーか?」

 そりゃありがとうございます。

「よし、そこの座布団に座りな」

 いつの間にか、ちゃぶ台が片付けられている。

 師匠も、座布団の上に、正座すると、扇子と手ぬぐいを畳に置いた。

「それじゃあ「子ほめ」でいいか」

 お、ビルド亭でアイアンクラスの肉丸君がやっていたオウム返しのお話だ。


「ご隠居さんいますか?」

「誰かと思ったらギル公じゃないか、どうしたい?」

「実はね、友達のところに赤ん坊が生まれましてね。それで誕生祝いに祝儀取られて悔しくて。取り返す良い方法はありませんかね?」

「取り返すなんて言うんじゃないよ。そういう時は赤ん坊を褒めてあげなさい」

「赤ん坊を褒める?どうやって褒めるんですか?」

「たいそう福々しい良いお顔で。鼻筋の通ったところはおじいちゃんに、目元の可愛いところはおばあちゃんにそっくりでございますね。こう言えば、友達も気分が良くなって、お酒の1杯もご馳走してくれるだろう」


 うーん、やっぱり前世の「子ほめ」とそっくり。

「今のは、子ほめと言う落語だ。覚えて出来るようになったらな上げにきな」

「師匠、上げってなんですか?」

「上げって言うのは、俺の前で今の落語をやるんだ。それを見て俺がやってもいいと言ったら、高座にかける事が出来る。まだダメだって俺が言ったら上がるまで何度も俺の前でやる事になる。わかったか?」

「はい、わかりました」

 知っていたけど、とりあえず聞いてみました。


 それで気になった事を聞いてみる。

「師匠、上下(かみしも)はどうするんですか?」

「なんだい?上下って?」

 え、まさかこの異世界、上下が無いの?


 上下とは落語の登場人物が右左どっちを向くかの決まりだ。

 前世の落語は江戸時代に発達したと言われている。だから同じ江戸時代で大衆の1番の娯楽が歌舞伎を見に行く事だった。

 だから、落語にも歌舞伎の話が出てくるし、歌舞伎の決まり事が落語の決まり事になる。

 例えば、歌舞伎の上手、下手が短くなって上下だ。

 上手とは客席から舞台に向かって、右手。

 歌舞伎では、登場人物の身分の高いもの、将軍や大旦那、ご隠居さんは大体、上手に位置する。だから右側にいる事になる。

 そうなると、身分の低いもの、長屋の人、奉公人なんかは右側を見る。

 落語家の顔が、客席から見て、右を見たら(長屋のハチ公だな)と思うわけだ。

 反対に、落語家の顔が左を見たら(ご隠居さん)(大家さん)(お殿様)になる。


 まぁ、クドクド説明したが、実は俺は前世では「上下の出来ない落語家」で有名だった。

 元々、落語なんか興味もなかったし、偶然落語家になった俺は、落語の知識は全くなし。大学のオチ研でもないしね。


 歌舞伎は1度だけ先輩に

「落語家だったらちゃんと見とかなきゃだめだ」

 と小言を言われたので見たのだが、何が面白いのかさっぱりわからなかった。

 歌舞伎を好きな方ごめんなさい。

 でも俺だってよく言われたよ

「鬼切の落語、どこが面白いんだ、さっぱりわからない」

 まぁ、人それぞれって言う事で。


 そして師匠だった鬼勝も何故か俺に上下は教えなかった。教えてくれたのは「もっと魂を震わせろ」「死んだおっかさんに聞こえるように、声を出せ」(その時、お袋はまだ死んでないんだけど)

 そんなシュールな教えばかり。


 それに変な新作ばかりやっている俺は周りから浮いていた。

 俺の落語を聞いていた周りの兄弟子は

「また鬼切、上下がめちゃくちゃだよ。まぁ新作だから関係ねぇのか」

 と、鼻で笑っていた。

 だから、芸歴37年あっても、上下はわからない。だから異世界に来たら教えてもらおうと思ったのに。


「だから、上下ってなんだ、小鬼?」

「いや、ご隠居さんはどっち向いたらいいのかなぁって?右ですか?左ですか?」

「なんだ、そんな事気にしてるのか?それは自分で決めるんだ」

 え、決まりがないの?

「いいか、そんな細かい事を気にするより、お客さんに伝わる事を気にしろ。

 どれだけ落語に言霊を込められるかそれが1番大事だ」


 うわー、異世界の落語、なんて俺好み。

そうなんだよ、上下がどうのこうのよりお客さんに伝わるって事が大事なんだ。

でも、前世の落語界は、やれ上下がどうとか、目線がどうの、仕草が違う、そんな細かい事ばかり気にしやがって、お客さんに全く伝わらない。

 笑い1つ起きない。落語家がどれだけいた事か。

 それに今思ったんだけど、異世界に歌舞伎ないみたいだよね。それじゃあ、歌舞伎を元にした上下があるわけないか。


「いいか、小鬼。高座は言霊が全てだ。いずれ客席のオーラが見えるようになる。そのオーラが揺れればお前も一人前だ」

 ちょっと異世界ファンタジーっぽくなりました。客席のオーラってどうやって見えるんだ?

ああ、早く高座に上がりたい。


まだ書き足りないところがあるので、書き足すか、これからおいおい書いていくか

考えます。

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