弟子入り再挑戦!
すいませんまん、5日ぶりの更新です。
実は新幹線でiPadで書いていたのですが、新幹線のWi-Fiが突然切れて、そのままに。
半分以上書いていた下書きが全部消えてなくなりました。
あまりのショックで、立ち直れずに呆然としていたら、こんなに日にちが空いてしまいました。
これからは、新幹線で書くときは、ネットがつながるスマホで書こうと思います。
俺はそば吉のお気楽な挨拶を背中で無視して皿を洗い続ける。
「おい、聞こえてるのかよ」
そば吉が少し怒って聞いて来た。
するとガゼットさんが、すかさず
「ずーーと忙しくて休む暇もないんだ。ポテトンの仕事終わるまで待ってくれよ。何飲むんだい?」
「ああ、焼酎ロックで」
すでに飲んで来たのか顔が赤い。頭の輪っかも桃色吐息。
10時近くになるとお客さんも居なくなる。
「イグルちゃん、上がって良いよ」
ガゼットさんが声をかけると
「お疲れ様でした!」
エプロンを外したイグルさんがすぐに白い羽根を広げて帰り支度をする。
「ポテトン、のれん仕舞っとけよ」
俺に命令して店を出ていく。
イグル姉さん、それ位やってくれても良いんじゃないですか?俺、まだ皿洗ってるんだし。
最後の皿を洗い終え、シンクを流してカウンターから出て、のれんを仕舞う。
そのままカウンターに座っている、そば吉の隣に座る。
ガゼットさんはカウンターの中で立ったままビールを飲んでいた。
「そば吉さん、なんで教えてくなかったんですか?」
キョトンとした顔で俺を見る。
「何をだい?」
「落語ギルドで弟子入りする前に魔力計らないといけない事ですよ」
「え、お前知らなかったの?」
「当たり前じゃ無いですか。赤鬼師匠に『弟子入りする資格があるのか?』って言われましたよ」
「いや、俺はポテトンが『村の図書館で落語の本沢山読んでいる』って言うからてっきり知ってると思ってさ」
「知りませんよ。そんな事」
「そりゃ悪かったな」
「サブマスターのエリックさんが『そば吉は、君が困っているところ、想像して今頃笑っているんだろうなぁ』って言ってましたよ」
それを聞いて、そば吉がニヤっと笑った。
「俺はそんな底意地悪くねーよ」
はい、いつかこいつの頭上の輪っか、真二つ決定!
「それで感知玉で測ったんだろ?どうだった?」
何もなかったように、さらっと聞いてきやがった。
「おかげさまで光りました。そば吉さんと同じ位魔力がありましたよ」
「まじかよ」
見直したように俺を見る。おいおい、ずいぶん上から目線だな。
「それで教えて欲しいんです」
「何を?」
「赤鬼師匠ってどこに住んでいるんですか?」
今、1番の問題はそこだ。寄席と言うのは、10日間興行だから、普通なら同じ時間に行けば、赤鬼師匠に会える。
しかし、俺は平日のあの日だけ赤鬼師匠に会えた。日曜日に行った時には、赤鬼師匠はビルド亭に出ていなかった。
という事は、普段出ている師匠が、たまたま休みで、代わりにその日だけ寄席に出ていた事になる。
前世の俺の世界では、これを「代演」と言う。
その事を知っていた俺は、落語ギルドを出るときに、エリックさんに
「赤鬼師匠はどこに住んでらっしゃるんですか?」
と、聞いたが
「そんな事教えられないよ」
と、笑って拒否された。
インターネットもない異世界じゃ、自分で調べる事も出来ない。
なので、そば吉に聞いたわけだ。
「なんでそんな事教えなきゃいけねえんだよ」
酔って赤くなった目で、俺を恨む。
「だって、そば吉さん優しい天使なんでしょう?底意地悪くないし」
「ちぇ、揚げ足取るんじゃねーよ」
そう言うと、持っていた小さな黒いカバンから手帳を取り出すと
「昔、赤鬼師匠の稽古お願いして、家に行った事があるんだよ」
稽古とは落語を習う事だ。
手帳をペラペラめくると
「あった、師匠の家はトーテム街のバステラ寺の真裏だよ。小さくて古い家だから、行けばわかるよ」
やっぱり何か後ろめたいのか、すぐに教えてくれた。
「ありがとうございます、そば吉兄さん。兄さんはやっぱり優しいなぁ」
「よせよ、兄さんなんて。そりゃ、お前が弟子入り出来てからそう呼んでくれよ」
まんざらでもなさそうに照れるそば吉。意地は悪いけど、そんなに人間、いや、天使は悪くないのね。
トーテム街は満腹亭のあるコリン街より少し北にある町だ。ガゼットさんが言うには
「古い寺がたくさんある、昔ながらの良い街だな」
次の日、俺は朝早くに満腹亭を出ると歩いてトーテム街を目指した。
バステラ寺とは有名で、花を売っていた兎人族のおばさんに聞くと
「ほら、あそこに大きな屋根が見えるだろう、あそこがパステラ寺だよ」
と、教えてくれた。
早速行ってみると、入り口に大きな石の柱が2本立ち、その間を苔生した石畳が続いている。両脇には太い木がずらりと並んでいる。
俺はそのまま進むと、パステラ寺の正面に出た。
前世のお寺は木造建築だが、こちらのお寺は石造り。切り出した岩の表面を荒く削って、そのまま積み上げた無骨な建物。昔のローマの神殿みたい。
裏に回ると、高い木の壁がぐるりと囲んであるじゃありませんか?
これじゃあ、そのまま突っ切る事は出来ない。
仕方なくもう一度表に出ると、俺もぐるりとパステラ寺の後ろに回り込む。
そこには石で出来た家が何軒か立っていたが、ちょうど真ん中に木で出来た小さな家が立っている。
近づいてみると、木で出来た格子戸の横に「赤鬼」と、どうにか読める表札がぶら下がっていた。
「ごめんください」
ためらいもなく声をかけた。
「すいません、こちら赤鬼師匠のお宅でしょうか?」
何の反応もない。留守なのかなぁ?
「誰だい?」
奥から声がした。
「あのーー昨日ビルド亭で弟子入りお願いしたものです」
「弟子入りだとーー」
しばしの沈黙。そして足音が近づいてきた。格子戸が横に開く。
「なんだい、昨日の兄ちゃんか?」
「師匠、昨日は何も知らずにすいませんでした。あの後すぐに落語ギルドに行って、魔力を測って貰いました」
「ふーん、それでここにいるって事は合格したのかい?」
「はい、だから改めて弟子入りお願いします」
「悪いけど、俺はもう歳だから弟子取らねぇんだよ。他当たりな」
よく見ると、赤鬼師匠の赤ら顔にはたくさんのシワが刻まれていた。
「僕、師匠の弟子になりたいんです。お願いします」
「あのさぁ、俺より売れている落語家はごまんといるんだ。何もこんな、うだつの上がらねぇ俺に弟子入りする事はねーよ」
師匠もなかなか強情だね。前世にもいたよ。絶対に弟子を取らねぇって言う師匠が。
でも、この世の中に絶対なんてないのさ。
「僕、どうしても師匠に弟子入りしたいんです」
そう言うと、俺は深々と頭を下げた。
「しょうがねぇなぁ。話だけは聞いてやる。中に入りな」
そう言うと、赤鬼師匠は、背を向けて家の中に入った。
「ありがとうございます」
俺はそう言うと、師匠の後に続いて家に入る。
さぁ、ここからが勝負だ。果たして、この人が異世界で俺の師匠にふさわしい人なのか?赤鬼さん、あんたが決めるんじゃない。俺が決める。
前世で創作落語の鬼才と言われた鬼笑亭鬼切が、あんたがどれほどのものか見せてもらおうじゃないの。
今仕事が立て込んでいて、やっと終わると、つい酒を飲んでしまいます。
小説家になろうに、書き始めた時は「毎日書くぞ」と意欲に燃えていましたが、それを持続するのは本当に大変なことだと思います。だって、仕事じゃないものね。
だから、小説家になろうで読んだ名作の数々の作者は本当にすげえなぁと思います。
俺も仕事じゃないからこそ、楽しんで、自分のペースで書き続けたいと思うよ。
目指すは100 話。今何と300人の人が読んでくれているからこそ、継続こそ力なり。
まだまだ俺の書きたい内容から程遠いからね。
これからものんびり読んでください。