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6話「ストーカー」

 2人がテニスを終えバス停へ戻ると既にバスは出た後で莉奈どころか並んでいる生徒の姿はなかった。

 ……誰もいないって事は、潤先輩と2人きり! ? 莉奈気を利かせてくれたんだ。

 詩織は莉奈に対して嬉しいような恨めしいような感情を抱いたのも束の間、潤が口を開く。


「詩織ってさ、彼氏いるの? 」

「ふえっ……」


 ……いきなりその質問? どどどどうしよう、潤先輩ですなんて答えられないし。

 莉奈への感情は何処へやら、詩織の頭の中はこの問いに何と答えるべきかでいっぱいになった。


「い、いません」

「え、そうなんだ。意外だな、詩織可愛いから絶対いると思っていたよ」

「え? え? 」


 ……か、可愛い?

 ようやくの返答をあっさりと流されたばかりか意外な誉め言葉にどぎまぎする。


「そ、そんなことありませんよ」

「そっか、クラスの男子は何してるんだろうな全く……そうだ、家まで送って行こうか? 最近物騒(ぶっそう)だし」

「良いんですか? 」

「勿論さ」

「それじゃあ、お願いします」

「決まりだな、ほら、バスが来たぞ」


 2人の話し合いがまとまるのを見計(みはか)らったかのようにバスがゆっくりと到着したので乗り込むと乗客は他におらずプシュウッと扉が閉まりバスが動き出した。

 車内で潤は詩織にテニスの事や地震の武勇伝を話した、詩織はそれを相槌を打って聞いているうちに目的の駅へと辿り着く。


「詩織の家ってどっち」

「あっちです」


 そう言って詩織は家のある東の方角を指差す。


「ああ、俺の家とは反対なのか」

「そうだったんですか」


 ……道理で今まで通学路で会わなかった訳だ。

 ため息をつく詩織とは裏腹に潤は詩織の手を引く。


「それじゃあ、行くか」

「待ってください、正反対ならご迷惑なんじゃ」

「そんなことないさ、行こう」

「ありがとうございます」


 ……そう言えば、今ワタシ潤先輩と2人きり、こんな所を見られたら、つつつ付き合っているなんて噂が……

 礼を述べると今更ながら周囲の視線が気になりだした詩織は途端に気恥ずかしくなり早歩きで家への道を急いだ。


 ~~

 バス停から大通りを抜け小道を歩くと民家の並びの中に住み慣れた木造建築の家が現れる。その家こそが詩織の家だった。

 ……ああ、忘れてた。私の家、余り豪華じゃないどころか周りと比べても浮いている木造なのに。どうせならもっとお洒落な家だったら……潤先輩がいる間だけでも変わってくれないかな。

 家に対して無理難題な要望を抱きながらも一歩一歩近づく迫る塀で囲まれている家を見つめる。一歩、二歩、徐々に距離がつまり遂に家が真横になってしまった。

 ……いっそこのまま通り過ぎちゃおうかな。でも、それだと潤先輩に失礼だし。ええい。

 意を決して立ち止まると方向を変え家を正面から見つめる。


「潤先輩、ここです。ここが私の家です」

「そっか」

「とりあえずお礼にお茶でも飲んでいってください」


 詩織はポケットから鍵を取り出すと扉を開き言う。


「今、家に誰もいないのか」

「はい、共働きなので」

「それじゃあ邪魔しようかな」


 潤が詩織の後に続き中に入ろうとした時だった。詩織は彼の後ろの小道の電柱に1人の男性が立っている姿が見えた。


「せ、潤先輩! 」

「ん? 」

「後ろ、あの電柱の所に誰か」


 詩織の声に反応して潤が背後を振り向く、しかしそこには電柱がポツンと立っているだけで人の姿はなかった。


「誰もいないぞ」

「そう……みたいですね、すみません。どうぞ」


 詩織は申し訳なさを感じながら改めて潤を招き入れようとしたその時だった。


 ブオオオオオオオ


 目の前を白い車が通り過ぎたかと思うと玄関横の駐車スペース目掛けて塀をすり抜けバックし停車する。康子の車だった。


「お母さん、どうして」

「あら、お帰り早かったわねえ……今日はたまたま早く帰れてね」


 窓から挨拶をすると彼女は潤に視線を移す。


「え、嘘もしかして詩織そう言う……あ、やだ、お邪魔だったかしら」


 ……何を慌てているんだろうお母さん、潤先輩にお礼にちょっとお茶でも飲んでもらおうと思っただけなのに。2人きりの家で……え?

 詩織は慌てる康子の姿を見て改めて自らの行動を振り返り赤面する。


「そそそういうのじゃないから! 潤先輩が物騒だからって送ってくれて! それで! 」

「そういうことですよお母さん」

「「お母さん!? 」」

「それでは俺はこれで」


 突然のお母さん呼びに戸惑うワタシ達を残して彼は帰って行った。


「凄い子だけど、誰なの? 」


 潤を見送るべく歩道まで出て小さくなる彼を眺めながら康子が尋ねる。


「潤潤先輩だよ」

「潤ってあの全国大会常連っていう? 」

「そうだよ」

「嘘、ちょっと詩織凄い人捕まえたじゃない」

「い、いや、まだそういうのじゃないから……」

「ふーん、まだ……ねえ」


 康子は意地悪く笑うと踵を返して家へと歩き出す。


「ちょっと待ってよお母さん」


 と詩織が追いかけようとしたその時だった。康子が移動した事により今までは死角となっていた電柱が視界に入る。

 そこには電柱だけでなく、今朝彼女に告白をしてきた大輝の姿があった。

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